2014/05/26

寝ている間に、スマートフォンで病気の治療研究に貢献

インターネットが普及してきて、家庭のパソコンがネットにつながり始めた20世紀末、カリフォルニア大学バークレー校が、「SETI@Home」というプロジェクトを開始した。地球外生命体の存在を確認するためにアレシボ天文台で得た観測データを解析するプロジェクトで、家庭にあるパソコンの空き時間とコンピューティングパワーをボランティアに提供してもらい、それを利用して計算するというアイデアだ。ネットに接続したパソコンさえあれば、無料のソフトウェアをインストールすることで誰でもプロジェクトに参加できる。

宇宙からの信号が見つからないまま時は流れて、時代はパソコンからスマートフォンに、インターネットは有線から無線に移り変わった。そしてSETI@Homeのようなボランティア計算プロジェクトも、時代に合わせて利用するデバイスを変えている。サムスン・オーストラリアは、ウィーン大学の生命科学科と共同で、個人が購入したサムスン製スマートフォンのプロセッサーパワーを募って、癌やアルツハイマー病の研究に役立てるプロジェクトを行なっている。

「Power Sleep」というアプリをダウンロードしておくと、利用者が寝ている間にウィーン大学のSIMAP研究所のサーバーからスマートフォンにタンパク質のデータが送られてくる。そして計算が終わると自動的に結果を送り返す。まさに寝ている間に"良い行い"をできるわけだが、Wi-Fi接続時のみ起動するなど、利用者に余計な通信料金がかからない工夫もなされている。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。