2014/05/22

自動車のイノベーション・5つのトレンド

今年のCESにはBMWをはじめとしたクルマメーカーが車内で使える情報システムを出展。今後、OSやアプリ開発は、自動車向けの市場が新たに広がることになりそうだ

CESでのBMWのレーザーヘッドライトの展示

今年に入って自動車を取り巻くイノベーションが一気に加速している。中でも5つの注目すべきトレンドを、デザインやテクノロジーをテーマにしたdesign milkが紹介している。

1. BMW i8の液晶ディスプレイ付きキー
BMWが来夏に発売するBMW i8は、モーターと小排気量大出力のエンジンを組み合わせたプラグインハイブリッドのスポーツカーとして注目されているが、キー(鍵穴に挿すわけではないので、正確にはインテリジェントキーとでもいうべきもの)にも未来が詰め込まれている。カラー液晶ディスプレイを備えており、電池の充電量や燃料残量をはじめ、燃費効率や航続距離などの情報を表示できる。ポイントは、このシステムがビルトインではなく更新できること。市場のニーズに合わせてプログラムを随時追加していくようだ。

2. Audiのオンライン信号情報システム
道路状況をリアルタイムにキャッチしてドライバーに提供する技術はいろいろ登場しているが、アウディのシステムはさらに一歩先を行き、交通ネットワークシステムと連携して、進行方向にある信号の状態をインストルメントパネル中央に信号機型のアイコンで表示する。狙いは、信号の変わり目に交差点に侵入しないようにする、あるいは青信号に変わるまでエンジンを切ってゆっくり待つようドライバーに促すためだ。

3. Microsoft Windows in the Car / Apple CarPlay
3月にスイスで開催されたジュネーブモーターショーで話題をさらったAppleのCarPlayは、単にクルマでiPhoneを使えるようにするのではなく、車載OSという新たな市場を生み出そうとしている。会場ではフェラーリに完全にビルトインされる形で注目を集めたが、ボルボも同様にダッシュボードにCarPlayを完全にビルトインした新型車両XC90を発表しており、他のメーカーも追随すると見られている。また、車載OSでは、MicrosoftのWindows Embedded Automotive 7の動きも注目されている。両者に共通するのは、モバイルで提供しているユーザーエクスペリエンスをそのままクルマでも提供し、より快適に安全運転ができるアプリの開発にも力を入れていこうとしている点である。ジェスチャーや音声コントロールなどの機能もドライバー向けにカスタマイズできるようになっており、自動車の世界でも良い競争関係が生まれるのは、ユーザーにとってはメリットになるかもしれない。

4. LEDレーザーヘッドライト
より明るく、省電力を目的にヘッドライトにLEDを採用するメーカーが増えている。BMWは、LEDに加えて高効率なレーザーを利用して1,800フィート(約550m)先まで照らし出せるヘッドライトを開発した。さらに車載カメラと連動して対向車や歩行者への眩しさを抑えながら最適な距離を照らし出せるようにしており、特に自転車が認識しやすいようにしている。同様の機能はアウディもCESで発表している。

5. Vehicle-to-Vehicle Communication Systems(V2V)
以前にも紹介した自動車同士の相互通信を可能にする技術で、車両に搭載された車間センサーや交通情報のフィードバックを取り入れながら、より安全な運転を可能にする。アメリカでは2017年までにすべての車両にV2Vの搭載が義務づけられ、その結果、交通事故を年間で80%削減するとしている。

近年の自動車は、車両全体が電子機器でコントロールされるようになり、テスラやBMWは社内に搭載したSmart Displayを通じて、Androidアプリやコンテンツをダウンロードして使える技術も実用化している。ITとの親和性が高くなる一方のクルマメーカーから、今後どのような新しいテクノロジーが生まれるかに注目していきたいところだ。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。