2014/05/20

研究成果を共有してコラボレーションを促進する"メディアウォール"

ロサンゼルスにある私立大学、オクシデンタルカレッジには、クラシカルな見た目の建物とは裏腹に、最新のテクノロジーを用いた"壁"が作られている。

学生たちが最先端の世界情勢を学ぶジョンソンホールが昨年改装されたのを受けて、多くの人たちが集まるアトリエの壁一面に設けられたのが、二階建ての高さほどもあるGlobal Crossroads Media Wall。サンタモニカのBelzberg建築事務所が設計した。壁には10組のディスプレイが設置されていて、その中には写真やビデオなどのさまざまな情報が表示される。通常、ディスプレイがたくさんある部屋は、画面を見やすくするために薄暗くすることが多い。だが、設計を手掛けたHagy Belzbergは、壁そのものを美しい曲線を生かしたガラスにし、その中にプログラムによって調節されるLEDライトを配線し、空間全体を明るく照らし出すようにした。

しかもこの壁はただ情報が見られるだけではない。ディスプレイには、学生たちが発表した論文やプロジェクトが映し出されるのだが、それらをスマホのアプリを経由して手に入れることができるのだ。手に入れたデータにアイデアを追加したり、アプリから情報をディスプレイに投稿することも可能で、壁以外の場所、たとえば教室や研究室でも投影できるようになっている。特に論文は、発表すると同時にウォールにも貼り出されるため、他の学生や教師、訪問者たちも内容を見ることになる。こうして自分の成果を広く知ってもらい、他の学生と共同制作することも奨励しているという。ウェブサイトでは一部の作品が公開されている。

壁に流れる情報は、大学ではなくメディア研究室に所属する学生たちがキュレーションし、学生中心で運用するようにしている。個人が知識を得るだけでなく、デジタル技術を生かして他の人たちと相互に意見を出し合ったり、共有したりしながら、より良いアイデアを創り上げていく。そんな21世紀型の教育が、建物のデザインから感じられるのが、とても興味深い。使い方もアイデア次第というこの壁をハックして、巨大な作品を発表するという案もすでにあるとのことで、学生たちのアイデアが注目されている。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。