2014/05/16

世界初! かけるだけで自分のからだの状態が『見える』センシングアイウエアが登場

"自分の内面を見る"センシングアイウェアJINS MEME(ジェイアイエヌ提供)

パッドとブリッジに埋め込まれた3点式眼電位センサーで目の動きを検知する(ジェイアイエヌ提供)

ワンサイズのため、女性にはやや大きいが、販売時にはこうした問題も解消されるだろう

センシングしたデータは独自のアルゴリズムによる疲労指数meという数値で可視化され、アプリ画面に表示される。左からオフィスモード、フィットネスモード、ドライブモードの表示例(ジェイアイエヌ提供)

開発から発表まで4年かけただけあって、アタッチメントによる延長バッテリーなど、必要な機能はほぼ揃っている

Google Glassに代表されるウエアラブルグラスのイメージは、これから大きく変わるかもしれない。メガネブランド「JINS」を展開するジェイアイエヌが5月13日に発表した「自分を見る」センシング(計測)アイウエア「JINS MEME(ジンズ ミーム)」は、大きく2つの革新をウエアラブルグラスにもたらした。

1つは、ディスプレイ機能を切り捨てて、ユーザーのリアルタイムセンシングに注力したこと。本体に使用されている「眼電位センシング技術」は、眼球運動による目の周りの電位差を検出する技術で、以前から医療関係で使われていたものだが、メガネにも応用できるよう測定位置を4点から3点に減らした独自の「三点式眼電位センサー」を産学協同で開発。パッド(鼻あて)とブリッジの部分センサーを組み込み、直接カラダに触れるようにすることで、8方向の視線移動とまばたきをリアルタイムで検知し、目を動かすだけで画面操作を可能にする。世界初の技術で、特許も出願中だ。

もう一つの革新は、新たなスタイルのアイトラッキング(視線の追跡)だ。アイトラッキングデバイスには欠かせなかったカメラや肌に貼り付ける電極を無くし、かけるだけで常時、自然に視線を検知できるようにした。JINS MEMEはオフィシャルアプリを開発しており、発表会場の体験コーナーでは、まばたきの検知と、左右のみだが視線だけでスマホの画面移動ができた。また、フレームに内蔵された加速度と角速度を測る六軸センサーで頭部の動きも検知でき、手足に装着するウエアラブルセンサー同様に活動量や歩数等を計測することもできるほか、体の傾きやブレを計測して、体軸や体幹を意識したトレーニングに応用することもできる。BluetoothでスマートフォンやPCなどのデバイスと連携でき、マイクロUSB端子も備えている。

JINS MEMEを通じて収集されたデータは、独自に開発された疲労指数をあらわす「me = mental energy」によって、眠気や疲れといった、自分自身では分かりにくいカラダの状態を可視化するために使われる。例えば、体調が活発だとmeが増え、疲労がたまるとマイナスになる。オフィシャルアプリではme指数を、数値やグラフに加え、色やアラートで知らせることができる。me指数によって運転中のいねむり事故を防いだり、体軸のブレから病気の兆候を発見したり、運動量から健康管理をアドバイスしたりできるが、開発者用キットも公開されており、さまざまな応用アイデアが登場することが考えられる。

発売は来年の春を予定しているため、現時点での機能としてはまだ課題といえる点がいくつか見られる。より精度の高いセンシングのために、最初は10分ほどの調整が必要だったり、ユニセックスで1サイズしかないので、女性にはやや大きくてセンシングしにくかったり、皮脂がたまったり、髪の毛があるとツルの部分のセンサーが反応しづらかったりするといったところだが、今回の発表を機に協力先が増えれば、一気に解決に向かうだろう。何よりも本体が軽量なメガネと変わらないくらい軽く、熱を持つこともなく、見た目にも全く違和感が無いという点で、すでに十分にインパクトがある。

デザインはサングラス1つを含む3タイプがあり、1時間の充電で約8時間連続使用できるが、メガネバンドにもなるアタッチメントツールを使用すれば、約16時間まで延長される。販売ルートとしてはBtoBでの需要も視野に入れており、IT系企業が福利厚生の一環として、PCメガネJINS PCを購入したような例が、JINS MEMEでも出てくるかもしれない。発表会では利用シーンとして、オフィス、ドライブ、フィットネスが想定されていたが、ゲームやエンターテインメント、医療、マーケティングといった、もっと幅広いジャンルでも活用が広がりそうだ。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。