2014/05/07

ウエアラブル時代の報道スタイル『グラスジャーナリズム』が登場

Glass Journalismの長所は、カメラなどを持たずにマイクだけで取材できること。そのうちスマートウォッチがマイク代わりになって、完全にフリーハンドで取材ができるようになるかもしれない

この秋、アメリカのUSC(サウスカリフォルニア大学)で開校する「Glass Journalism」のコースが話題になっている。

Glass Journalismとは、ずばりGoogle Glassをかけながら取材活動をすること。USCのコースでは、独自のプラットフォームを活用した情報収集や編集の手法を研究するのに加え、スマートグラスでニュースを見るためのアプリケーションなどの開発までも行うという。対象となるのは、ジャーナリズムや広報、エンジニアリング、デザインといったさまざまな分野を専攻する学生たちで、履修する学生全員にGoogle Glassが配布され、小グループで新たな課題に取り組んでいく。

公開されているシラバス(授業計画書)によると、授業は15週にわたって行なわれ、取材やストーリー構成の技術、マルチメディアやウェブ、プログラミング、そしてデザインについても学ぶ。ブレインストーミングを隔週で行い、その中では、Google Glassを使ってソーシャルメディアやブログなどにニュースが投稿できる、専用のCMS(コンテンツマネジメントシステム)ツールの作成も検討する。担当する講師たちにもGoogle Glassが配布され、彼らのGoogle+を見ると、専用アプリを使ったイメージ画像などが投稿されている。

コースを計画したロバート・ヘルナンデス教授は、Glass Journalismは既存のジャーナリズムを破壊するのではなく、より進化させるもので、スマートグラスが普及すれば、大手メディアも一気に導入するようになるかもしれないとコメントしている。すでに、今年のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)の会場では、驚くほどたくさんの記者がGoogle Glassをかけて取材をしており、CNNやエルマガジン、ニューヨーク・タイムズらが、試験的にGoogle Glassを使って取材した記事を配信しているという。

また、オンラインジャーナリズムとメディアトレーニングに関する教育を提供しているPoynter's News大学では、ウエアラブルジャーナリズムをテーマにしたコースを開講しており、専用コードを使えば無料でオンライン受講ができるようになっている。これからジャーナリストやメディアビジネスを目指そうとしている人は、アクセスしてみるといいかもしれない。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。