2014/04/28

街をゆく人の動きをソーシャルなライブカメラで分析

ニューヨークで起業したPlacemeter社が目指しているのは、市民参加による、街中の混雑情報をリアルタイムでチェックできるシステムの構築である。

映像から人の動きをリアルタイムに計測するシステムは、すでに何年も前から登場している。日本でも主要な駅で、構内やホームが急に混雑した場合に警告するシステムが試験運用されており、NYでは路上を監視するカメラのデータを、都市計画などに応用するというアイデアもある。

Placemeterは、市内の歩道や公共スペースの人の動きをカバーするために、市民が自らの意思で設置したカメラを利用することを思いついた。ビデオチャットに使うような小さなカメラやスマートフォンの映像を、同社が提供するネットワークにWi-Fi接続するだけで共有できるよう、専用のアプリを開発。今後、約2,000〜3,000台のカメラが設置されるようになれば市内の90%がカバーでき、すでに約500台が協力しているという。さらに、公共のカメラや、Earthcamなどの既存の"ライブウェブカム"と呼ばれる定点カメラのデータも利用し、誰もがより簡単に、街の情報にアクセスできることを目指している。

アクセスできる映像は、通りをざっくりと俯瞰したようなもので、人々が点に見える程度の解像度しかない。だが、Placemeterが開発したアルゴリズムを使えば、顔認識システムなどを使わずに、店から店へと移動する人を80〜95%の確率で追跡できるという。むしろ、人物のパーソナル情報が企業のマーケティングや、警察の捜査などに利用できないよう、あえてそうしたデータとは紐付けしないよう配慮されている。

Placemeterは、人々の移動データだけでも十分にビジネスになると考え、企業はもちろん、行政が興味を持って活用するだろうと見込んでいる。用途としては、出店計画や都市計画、それ以外にも、パレードやイベントを計画する際に、人の流れを誘導するためにどのように警備を配置すればいいかといった計画にも応用できるからだ。

今後、どれだけ参加者が増えるかが成功のカギになりそうだが、クラウドソーシングのあり方を考えさせられる、ユニークな取り組みとして、注目しておきたい。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。