2014/04/14

ハードウェアスタートアップのためのマーケットプレイスが登場

Grand St.は今後の動き次第で、ハードウェア系スタートアップやクリエイターにとっての新しい市場として定着するようになるかもしれない

2012年頃から急速に数が増えているハードウェア系スタートアップ。ウエアラブルウォッチの「Pebble」や、iPhoneでコントロールできるボールの「Sphero Robotic Ball」など、クラウドファンディングから事業を成功させる例も増え、ベンチャーキャピタリストからの出資額も増える傾向にある。

ソフトウエア(アプリ)に関しては、App StoreやGoogle Play等のマーケットプレイスによって、スタートアップや個人でも全世界に向けた販売が可能になったが、ハードウエア系スタートアップでは、資金は獲得できたものの適切な販路を開拓できず、なかなかうまく成長できないメーカーも少なくない。そこで登場したのが、ハードウェア系スタートアップの製品を専門に扱うマーケットプレイス「Grand St.」だ。

ポイントは、販売方法が3つ用意されているところ。「ショップ」は、販売準備あるいは製造を進めている最中の製品が対象で、先物買いをしたいユーザーに向けて、より早い段階で製品がアピールできる。「ベータ」は、製品はあるけれど、まだ市場には出回っていない段階の商品。プロトタイプ販売的な位置付けで、必要であればGrand St.がテスターを探す手伝いやフィードバックを得るための環境を提供するという。また、いずれも売買が成立した場合に8%の手数料を支払う仕組みになっている。

面白いのは、3つ目の「プレオーダー」だ。半年以内に市場での販売が予定されている製品が対象となるが、市場で発売されたあともそのままGrand St.で継続して販売ができる。さらに、外部のサイトで販売する際にGrand St.へのリンクを張れば、掲載も販売もすべて手数料は無料となる。クラウドファンディングの場合は、資金を獲得してからも、実際の製品がユーザーの手に届くまでに半年以上かかったり、製品化されないケースもあるが、そうした問題についてもGrand St.がサポートし、ユーザーとメーカー相互の不利益にならないようなシステムを目指している。

ハードウェア製品の開発に対しては、アイデア段階から設計、製品化、販売まで支援するQuirkyのようなサービスもあるが、Grand St.はそれよりも手軽に利用できる印象だ。スタートアップだけでなく、既に製品を販売していたが注目されていなかった独立系ハードウェアメーカーにとっても新たな市場になろうとしている。共同創設者であるAmanda Peytonは、「私たちのゴールは、ハードウェアアクリエイターにとって良い顧客を見つけ、さまざまな開発の段階において、次の製品を生み出すための柔軟なソリューションを提供することにある」と語る。

現在、ユーザーが20万人を超えたところだというが、新しいスタイルのマーケットプレイスとして、個人のクリエイターにも注目されており、今後の動き次第では日本にも参入する可能性はありそうだ。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。