2014/04/07

バーチャルペットの世話で喘息の管理方法を教えてくれる子ども向けアプリ

ボストンのLifeGuard Games社が、喘息で苦しむ子どもたちのためのアプリ「Wellapets」を開発した。リリースは2月末で、価格は約1ドル。バーチャルペットの世話をする中で、自身の喘息をコントロールする方法を学んでもらうのが目的だ。ハーバード大学医学大学院生だった創業者が、病院に来る子どもたちが待合室で母親のiPadやiPhoneで遊んでいるのを見て、子どもたちに情報を伝えるチャネルとしてスマートフォンやタブレットが果たす役割に気づいたのが開発のきっかけだったという。

バーチャルペットの世話では、餌を与えたり遊んだりするだけでなく、ペットの吸入器の管理もしなければならない。また、喘息の原因となるものを掃除して取り除いたりすると、アプリの中のミニゲームを遊ぶことができる。

ゲーミフィケーションを利用したアプリやサービスの中には、より長く使わせることでより高額の料金をチャージしたり、たくさん買わせたりすることが目的のものも多いが、後片づけや掃除、服薬など、それ自体は面白味もないが、定期的にやらなければならないことを楽しみに変えるためにゲームを活用している例もある。Wellapetsもその一例だ。

他者と競ったり、ご褒美が貰えたりすることで持続して利用してもらう(エンゲージメントを強める)のに、ゲームの仕掛けを使うことは、フィットネス系トラッカー(活動量計)用のアプリケーションでは一般化しつつある。もはや数値を記録するだけでは継続的に使ってもらうのは無理ということが判明しつつあるようだ。

LifeGuard Games社は、喘息に続いて糖尿病や食物アレルギーなど、子どもたちを苦しめている他の病気の管理方法習得アプリを打ち出していく予定。同社が直接、患者である子どもやその親に売っていくのではなく、小児科医などをチャネルにして展開していく戦略らしい。小児科医からすれば、生活習慣の改善や吸入器の使用など、子どもに習慣づけてもらうことの難しいことをアプリが助けてくれれば治療効果が上がるはずだから、患者と親に薦めるモチベーションは十分にある。手間はかかるが確実な販売戦略といえそうだ。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。