2014/04/01

タッチで名刺読み取り

仕事でもらった名刺の整理が面倒なのは、どうやら日本だけの話ではないらしい。マサチューセッツ工科大学のベンチャーアクセラレータープログラムの卒業生によって設立されたスタートアップ企業TouchBase Technologiesが、スマートフォンの画面にかざすだけで名刺のデータを読み取ることができる「TouchBase Business Cards」という製品を開発し、話題になっている。

タッチしてデータを読み取るところから、名詞の中に小型のICチップが仕込まれているのかと思いきやそうではなく、特殊な導電性のインクを使ってスマートフォンのタッチスクリーンに情報を読み込ませるという独自の技術が使われている。つまり、スクリーンの上に指先で名刺上の情報を書き込むのと同じことを、名刺をスクリーンの上に置くだけで実現しているのである。プロフィールの読み込みはウェブアプリケーションを通じて行うため、専用アプリのインストールも不要だ。NFC(近距離無線通信)を使用していないので少し古い機種にも対応でき、今後は多くのデバイスに対応させていく予定だという。

プロフィールの共有だけなら、スマホを近づけるだけでできるダイレクトな通信技術や、近くにいる人のプロフィールをワイヤレスで共有したり、はたまたLinkedInやFacebookなどを通じてもできるのだが、あえてトラディショナルな名刺交換のスタイルを守りつつ、データの入力を簡素化し、確実にクラウドから読み込めるようにした点が大きなポイントだと、創業者でありCEOのSai To Yeungは語っている。紹介ビデオでは、交換した名刺をおもむろにスマートフォンにかざし、相手のプロフィールを確認すると同時に、「Hello」というメッセージを送る、21世紀のスマートな名刺交換スタイルが提案されている。

ちなみに、ある調査によると、日本のビジネスパーソンの半数以上は名刺を受け取っても整理をせず、保存しているだけだそうだ。名刺整理ツールや専用アプリなどもたくさん登場しているが、いくら簡単になっても、カメラで撮影したりスキャンしたりするのは面倒という声は少なくないようで、せっかくのビジネスツールを活かしきれてないのが現状だ。その点、TouchBase Business Cards は、データをクラウドでも管理し、随時更新したり、どれだけアクセスされたかも分析できるという点でも、新しい名刺交換スタイルになるのではないかと期待されている。このことは、ピッチコンテスト直後からウォールストリートジャーナルをはじめ、さまざまなメディアで紹介されているところからもうかがえる。

TouchBase Business Cardsの価格は36枚で25ドルからで、クラウドファンディングサービスのIndigogoでプレオーダーを募集したところ、目標額をクリアし、5月から出荷が開始される予定だ。今後は、日本での展開も期待したいところだ。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。