2014/03/20

見て聞いて全身で感じるパフォーマンス

「森と夜と世界の果てへの旅」より(デフ・パペットシアター・ひとみ)

五感をフルに刺激するパフォーマンスで、国内外で高い評価を得ている劇団が日本にある。その名は、「デフ・パペットシアター・ひとみ」。耳の聞こえない人(ろう者)と、聞こえる人(聴者)が、お互いの感性を生かしあって創作活動をしている専門人形劇団だ。「ひょっこりひょうたん島」でおなじみの「人形劇団ひとみ座」を母体として、1980年に結成された。

と聞くと、手話や舞台字幕を使った静的な舞台を想像するかもしれないが、そんな予想は見事に裏切られる。それもそのはずで、結成のきっかけは、それまでセリフで組み立てることの多かった人形劇にもっと新しい表現を、という思い。聴者と「目で見る世界」にいるろう者とが一緒に舞台を作り上げることで、セリフに頼らない、より高い次元の表現を目指したのである。これまでに、無言劇、パントマイムやプラカードを駆使して視覚的にセリフを表現した劇など、さまざまな手法を取り入れ、大人の鑑賞に堪える人形劇を多数、生み出してきた。

劇団の目指すところは、(1)耳が聞こえる・聞こえない・聞こえにくいにかかわらず、楽しめる人形劇を創ること、(2)ろう者と聴者の感性を生かして、人形劇の表現の可能性を追求すること、(3)子どもだけでなく、大人にも向けられた作品を生み出し、幅広い層に人形劇の魅力を届けていくこと。音声言語だけに頼れないろう者が参加しているからこその視覚的表現、人形と俳優とが同次元に立って繰り広げるダイナミックな表現は、言葉の壁を超えて海外でも大きな反響を呼んでいる。

3月28日〜30日には横浜で結成30周年記念作品である「森と夜と世界の果てへの旅」の公演が行われる。ナイジェリアの作家エイモス・チュツオーラの小説『やし酒飲み』を原作にした作品で、死者の町を目指して森に足を踏み入れた主人公が遭遇する荒唐無稽で魔術的な体験を、大型の手持ち人形による劇に仕立てた。人形の動きはもちろんのこと、役者たちの身体表現、目まぐるしく変化する舞台装置、民族楽器の生演奏、プロジェクターで投影する言葉などを駆使して、生命力あふれるパフォーマンスが繰り広げられる。日頃、メールやSNS、電話などを多用して、全身で感じる機会が少なくなっていると感じている人は、足を運んでみてはいかがだろうか。

森と夜と世界の果てへの旅
■公演日程
2014年3月28日(金) 14:00/19:00
29日(土) 14:00
30日(日) 14:00
*開場は各回開演の30分前

■会場
神奈川芸術劇場 大スタジオ(みなとみらい線「日本大通り」駅徒歩5分、JR根岸線「石川町」「関内」駅徒歩14分)

■上演時間
約1時間20分(途中休憩なし)

■入場料
おとな3,000円(税込)、こども(中学生以下)2,000円(税込)
*当日各500円増

■お申し込み
(公財)現代人形劇センター
http://www.puppet.or.jp/deaf/index.html
tel:044-777-2228 fax:044-777-3570
e-mail:deafdesk@puppet.or.jp