2014/03/19

ゲーム用コントローラーで花開く次世代インターフェース

Kickstarterで早々に設定額をクリアしたYEI Technology社の「PrioVR」は全身にセンサーを巻き付けて使うコントローラーで、身体の自然な動きだけでゲームがプレイできる

視線入力コントローラーでは、高い精度でオンラインゲームにも対応するTobiiのような方向と、低価格でタブレットにも対応していくThe Eye Tribeのような方向という、2つの大きな流れが見られる。写真はいずれもCES International 2014にて

北米では昨年からゲーム機器の売上が再び伸びており、それに合わせてなのか、新しいタイプのゲーム用コントローラーが登場し、話題になっている。

YEI Technology社が開発中の「PrioVR」は、頭や腕、手などに直接センサーを巻き付けて、身体の自然な動きでゲームをプレイできるというコントローラーだ。頭の向きに合わせてプレイヤーの視点が自在に動き、手でピストルを撃つマネをすると、ゲームの中の標的を撃つことができる。このように、身体の動きや音声など、人間の自然な活動で操作するインターフェースを「NUI(ナチュラル・ユーザー・インターフェース)」と呼び、XBOXのKinectや任天堂のWiiフィットなど、NUIを利用したコントローラーは今までにもあったが、PrioVRはより細かい動きにも素早く対応できるのが特徴だ。弓矢を引いたり、剣を振り回したり、ゲームや武器等に合わせていろいろな動きを組み合わせ、エアタイピングで文字入力といったこともできるそうだ。クラウドファンディングのKickstarterで資金調達していたが、予定額の倍となる14万ドルをクリア。2月中旬にテスト販売を開始し、うまくいけば6月頃に300〜400ドル(予定価格)で正式販売する予定だ。

NUIの一形態でもあるが、目の動きでカーソルを動かし、まばたきでクリックしたりできる「アイトラッキング=視線入力」タイプのコントローラも話題だ。最初に視線の位置を同期する「キャリブレーション」という操作をするだけですぐに使え、精度も上がっている。この分野で注目されているTobii Technology社は、「EyeX」というPCゲームにも対応できるアイトラッキング製品を発表しているが、より自然な目の動きをトレースできることから、手足の麻痺などの障がいがある人向けの入力デバイスとしても注目を集めている。

EyeXは95ドルで予約販売を開始しているが(通常価格は139ドル)、価格が100ドルを切る製品も増加している。その中でも99ドルの「The Eye Tribe Tracker」(The Eye Tribe社)は、通常はディスプレイの下あたりに取り付けて使うアイトラッキングデバイスをモバイル機器でも使える技術を開発。現在、Androidタブレット向けに開発を進めており、さらにマイクロソフトのSurface Proへも対応すると発表している。コントローラー機能をカスタマイズできるソフトウエア開発キット(SDK)も同時に提供していて、アイトラッキング機能をアプリに組み込めるので、視線でプレイする新しいゲームのジャンルが登場するかもしれない。

ここで紹介したコントローラーの技術は、言うまでもなくゲーム以外へも応用が可能だ。開発側は、製品化の分かりやすいモデルケースとしてゲームというジャンルを選んだようにも見える。いずれにしても、アイデアレベルの新しいゲームコントローラーは、ほかにもいろいろ発表されており、それらがゲーム機のオプションとして発売されるケースも出てくるかもしれない。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。