2014/03/18

子どもの発作を検知して知らせてくれるウエアラブルデバイス

ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークにある非営利団体、RTIインターナショナルのBarbara Kroner氏の14歳の娘は、アイカルディ症候群という難病と闘っている。これまでに15,000回以上の発作に襲われているそうだ。全米にはこの病気以外にも、40万人の子どもを含め、200万人がてんかんなどの発作性疾患に苦しんでいるらしい。

「夜中に娘が発作に襲われたら知らせてくれるデバイスがあればいいのに」と思った彼女は、無いならば作るしかないと、RTIインターナショナルの同僚とRTI発作アラートシステムの開発に着手した。夜中に、誰も見ていない間に発作が起こると、大怪我をしたり、意識不明に陥ったり、最悪の場合は命に関わることもあるので、夜間のモニタリングは非常に重要だ。このプロジェクトは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)から160万ドルの資金援助を受けた。

開発したシステムは、身体に装着するセンサーで心拍数、呼吸、姿勢を計測し、家族や介護士にアラートを送ることで突然死の発生を防ぐことが期待されている。ただし、市場に投入できるまで3年はかかると見られている。Kroner氏のデバイスには、RTIインターナショナルが保有する非侵襲(身体を傷つけない)の神経状態モニタリングのアルゴリズムが生かされてという。

近年、ウエアラブルデバイスは、健康増進やフィットネス系を中心に、雨後の筍のように登場してきている。今後、医療用途のウエアラブルが子ども用、高齢者用と増えてきて、看護や介護を受ける側にも、提供する側にも負担の少ないソリューションが整備されていくことが期待される。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。