2014/03/07
音声対話で操作する見守り携帯電話
オーストラリア、ブリスベーンのスタートアップ、ollo mobile社は「クラウドフォン 3G(CloudPhone 3G)」という携帯電話機を開発している。今年の夏にオーストラリア、アメリカ、イギリスでの発売開始を目指している。
クラウドフォンはスマートフォンではない。小型でタッチスクリーンはなく、ボタンも1つしかない。首から下げて持ち運び、電話をかける時には、ボタンを押して、「娘に電話して」「タクシーを呼んで」といったように、かけたい相手を指示すると、音声認識してかけてくれる。高齢者をターゲットにしており、バッテリーは10日間もつ。
あらかじめ登録しておいたコンタクト先に電話できるほか、持ち主の居場所や動きも、見守る側のスマートフォン等で確認できる。転倒したことも検出し、クラウドフォンが高齢者に「大丈夫?」と音声で尋ねる。怪我をしていると答えたり、あるいはまったく答えがなかったら、家族など緊急連絡先にアラートを送る。さらにアラートに誰も反応しない場合には、緊急通報(オーストラリアは000番、日本では119番)するように設定することもできる。創業者の叔母が、浴室で滑って転んで怪我をしたことが開発のきっかけだという。子ども向けの製品も検討中らしい。
ollo mobile社がアメリカやイギリス市場を目指すのは、オーストラリア国内での資金調達が難しいことも理由のようだ。海外からの投資を受けるには、税制やその他の規制がハードルになる。アメリカでは2012年のJOBS Act(ジャンプスタート・アワー・ビジネス・スタートアップ法)の制定でクラウドファンディングの合法的運用が法制化されたが、オーストラリアでは、このような法制度は未整備だという。
著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)
NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。