2014/03/03

ケーブル、ワイヤレスに次いでマグネット接続が拡大の兆し

マグネットで自在にパーツをつなげてiPadでコントロールできる「MOSS」は、プログラミングや回路の基本も一緒に学ぶことができる。

スマートフォンやタブレットの電源ケーブルをマグネットで接続する「MAGNECTOR」のブース

デバイスや周辺機器の小型化、ミニマム化が進んでいるが、一方で、接続する場合にケーブルをつなぐのが面倒、ワイヤレス接続はバッテリーを消耗するといった問題が浮上している。そこで、最近話題になっているのが、マグネットを使った接続技術だ。

ケーブル類を"抜き差し"なしで接続したり、複数のデバイスやアクセサリーを簡単に連結するのが主な用途で、おなじみのところでは、Appleのノートブックの電源ケーブルや、iPadのスマートカバーなどに使われている。接続も安定していて、つないだり外したりする際の破損を防いでくれるというメリットもある。そうしたところからスマートフォンやタブレットの電源ケーブル接続にマグネットを使うMAGTRON社の「MAGNECTOR」という技術や、複数台のスマートフォンを磁石でつなげて1つの大きなディスプレイとして表示できるようにするNano Magnetics社の「Nanoport(ナノポート)」と呼ばれる技術が今年のCES(Consumer Electronics Show)で発表されていた。

ナノポートは、ネオジムというレアアースを使った強力な磁石でデバイス同士をつなぐほかに、データ転送や給電もサポートしており、クルマのダッシュボードにデバイスを接続するといった使い方もできるという。さらに、多くのデバイスやアクセサリーを好きな形に組み合わせてシームレスに使ったり、補助バッテリーをつなげたり、いろいろな応用ができると創設者のTim Szetoは語っている。ちなみに、2台のディスプレイを磁石でつなぐ技術は、AppleがiPadで同様のことを可能にする特許を申請したと昨年報じている。

自在にデバイスが接続できることは、同じくCESに出展されていた「MOSS」というロボットを組み立てるキットでもマグネット接続が使われていることで証明されている。「MOSS」は、ライト、センサー、スイッチなど、さまざまな機能を持つ、サイコロのような形をした立方体のパーツを組み合わせて、さまざまな形のロボットが作れる。パーツの角にはマグネットが仕込まれていて、パチンコ玉のような金属球を使って、それらを自在につなげられるようになっている。パーツそのものは、タイヤやローラー、小さなプレートなど、いろいろな形があって、例えば、クルマの形に組み立てて、iPadからリモートコントロールで動かしたりといったこともできる。開発元のModular Robotics社は、クラウドファンドのKicstarterで予定金額をクリアしており、予約注文を開始している。

マグネット接続が増えてきた理由としては、小さくても安定した磁力を持つ磁石が入手しやすくなり、価格的にもデバイスに仕込みやすいという背景がありそうだ。今年あたりから、さらに多くのデバイスで使われるようになるかもしれない。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。