2014/02/27

ソチに出現した巨大な顔

MegaFaces(メガフォン社報道発表資料より)

17日間にわたって開催された、2014年ソチ冬季オリンピックも終了し、会場ではすでに、3月7日から16日まで開催されるパラリンピックの準備が始まっている。

オリンピック会場では、火の鳥を形をした聖火台をはじめ、氷山をイメージした美しいデザインのアイスバーグ・スケーティング・パレス、正面がクリスタルで側面が透明なので外からスケート競技が見られるアドレルアリーナなどが話題になっていた。そして、もう一つ話題になっていたのが、会場の外にあるオリンピック公園に設置された「MegaFaces」という巨大な建物だ。

MegaFacesは、ピンアートあるいはピンポイントインプレッションと呼ばれるおもちゃと同じ仕組みを使って、巨大な顔を3Dで再現するというもの。おもちゃの場合は、ピンの後ろから手やモノをゆっくり押し当てると、そのままの形が立体的に表現されるのだが、MegaFacesでは建物の横にあるフォトブースで顔写真を5枚撮影し、それを3Dデータに合成。すると約1分後に、8メートルもの大きさの顔のオブジェが、建物の正面にゆっくりとモーフィングで現れるという仕組みになっている。

ピンとして使われているのは、アクチュエーターと呼ばれる約2メートルの長さを持つ伸縮自在のシリンダーで、全体で1万1千本が配置されている。1本ずつ個別に動くようにプログラミングされており、2000平方メートルの建物の中で、フォトブースから受け取った顔のデータに合わせてアクチュエーターがゆっくりと動く様子が動画で紹介されているが、まるで巨大な工場の中にいるような不思議な光景が見られる。さらに夜になると、建物を覆う薄い白い布を、シリンダーの先端に組み込まれたRGB方式のLEDライトが、光り輝きながら押し出すという演出も用意されている。顔のオブジェは同時に3つまで表現でき、顔のデータを提供した人はその様子をまとめた約20秒間のメールを受け取ることもできるそうだ。

デザインを手掛けたのは、デザイナーであり建築家でもあるAsif Khan(アシフ・カーン)で、開発はスイスのIARTが担当している。本プロジェクトは、ソチオリンピックのジェネラルパートナーである、ロシアの大手通信会社であるメガフォン社から委託され、パートナーパビリオンの一つとして制作された。期間中、ソチの会場を訪れる17万人以上に対して「誰もがオリンピックの顔になれる」というメッセージが込められているとのこと。パラリンピックでも引き続き展示され、来場者の注目を集めそうだ。

著者:野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」、「DIME」、「App DIME」「ライフハッカー」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。