2014/02/19

ロボットが学んだ『スキル』をクラウドでシェア

オランダのアインドホーフェン工科大学などヨーロッパの複数の大学やフィリップス社の研究者らは、「ロボアース(RoboEarth)」という、ロボットが情報を共有するシステムを開発している。

病院や家庭で使うロボットが単体で学習するのではなく、学んだことをシェアすることで「スキル」を高めさせようとするもので、たとえば病院で働くロボットの1台が、病室の中の画像やレイアウト、医療機器の配置などをロボアースにアップロードしておけば、別のロボットが同じ病院に配属された際に、医療機器や薬の置場を探すために方々動き回る必要がなくなる。場所の情報だけでなく、動作についても共有できるので、新人ロボットは先輩ロボットから多くを吸収して仕事に励むことができる。

また、「ラピュタ(Rapyuta)」と呼ばれるロボアースのクラウドエンジンには、個々のロボットが装備しているCPUなどのコンピューティングパワーを補う機能も持たせており、データ解析などの処理をオフロードすることができるようになる。

これまでのロボットは、特定のタスクを実行するために最適化されて開発されてきた。しかし、決まったタスクを実行するだけでも、環境はいろいろ変化するから、あらかじめ、あらゆる変化に対応してプログラムしておくことはできない。単体が学ぶのでは全体として非効率だというのが、ロボットの経験と知識を共有するベースの開発の原点だそうだ。

病院や家庭に導入されるロボットが即戦力として活躍できるようになるというわけだが、人間にとって、ロボットに学んでほしくないことまで共有されるようにならないとよいのだが。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。