2014/01/24

お金より人を動かすもの 駐車場シェアリングの場合

駐車できるくらいのスペースがあれば、人に貸して駐車場代金を取ることができる。サンフランシスコ近郊Walnut Creekのスタートアップ、Park Circa社は、いわゆる「シェア」(共有)を駐車スペースに適用している。

当初の考えはシンプルだった。使っていないスペースがある人を募り、共有の駐車場として場所と駐車料金を登録してもらう。1時間に1ドルから3ドルで、平均して1日に4時間程度利用されれば、空きスペースが月に120ドルから360ドルを生み出すことになる。駐車場の利用者は、利用可能な空きスペースを選んで、駐車して、料金を支払う。GPSと地図アプリとPayPalなどの決済手段があれば、会員管理、スケジュール管理などは比較的シンプルに実装できる。

創業者のChadwick Meyer氏は3年前、地元でこぢんまりとサービスを開始した。チラシを配って、ツイッターでプロモーションをして、口コミで広めようとしたが、事業にならなかった。

「駐車スペースを持っているような人は、それなりにリッチだから、月100ドルそこらのためにわざわざ登録なんかしない。自宅近くに知らない人の車が入れ代わり立ち代わり駐車されるのも気分がいいことではないだろう。しかし、そんなリッチな連中だって、遠出したときには駐車スペースが必要なはずだ。スペースを提供する側と利用する側を別々に捉えていてはいけない」。必要なのは、小銭を稼ぐ仕掛けではなくて、バーターシステムに違いない。これが創業者の出した結論だった。

そこで決済はPark Circa内でしか通用しない仮想通貨で行うことで、駐車スペース提供者しか利用できないようにシステムを変更し、提供エリアを拡大している。提供者は、駐車できる場所を登録すると、500ドルの仮想通貨がもらえ、スケジュールと料金(時間帯によって可変)、写真などを設定する。つまり、通勤に車を使っていれば、朝、出かけてから帰るまでの空き時間を貸し出すこともでき、駐車する場所を探す側には、空き時間しか、その場所は表示されない。利用者がアプリを使って駐車場にチェックインし、チェックアウトすれば駐車代が仮想通貨で支払われる。

エリア拡大したといってもPark Circaはまだベータ版で、サンフランシスコのほか、オークランド、サクラメント、ロサンゼルス、サンディエゴなどカリフォルニア州の主要都市や、ニューヨーク州、テキサス州、イリノイ州、フロリダ州、ワシントン州などの一部のエリアで限定的に提供されている。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。