2014/01/06

GPSで健康になろう

スマートフォンやタブレット、携帯電話機に当たり前のようにGPS機能が内蔵される中、GPS機器メーカーは、新たな用途を模索している。

GPS機器メーカー大手のGarminの2012年の収益の12%、営業利益の約6分の1を占めているのがフィットネス分野だ。単なる運動のためのランニングや自転車だけでなく、ハイキングやハンティング、ボート、自家用機など、アウトドアにお金を使う人々を主なターゲットにしている。それぞれのアクティビティーでニーズは異なるが、GPSによる位置情報と、移動に要したルートと時間から算出する速度の情報を得ることができる。

GarminにはForerunner、ForeAthleteなどアスリート向けの腕時計型の製品群もある。ランニングやサイクリング用のGPS機器で、位置とルートのほか、ペースを計算し、さらに心拍数も計測してくれる。昨今、Nike+ FuelBandやFitbit、Jawbone UPなどがトラッカーとして注目を集めているが、こうしたウェアラブルデバイスの多くは、GPS機能を連動するスマートフォンに任せることで小型軽量化を図っている。こうした製品が市場に食い込んできている中、スマートフォンメーカーも相次いでスマートウォッチを発表し、一人に2つしかない手首を巡る争いが激化している。

また、大企業向けに健康管理プログラムを提供しているEveryMove、Redbrick Health、HUMANAなどの新興企業が、GarminのGPSデバイスのAPI公開を求めてきたという。顧客企業の社員の中で特に健康志向の強い人々がすでにGarminの製品を使っていたため、サービスに自然に組み込むことができるようだ。Garminはこうした事業者の求めに応じて限定的にAPIを公開してきたという。

日本企業にも歩数計や活動量計を活用して社員の健康管理にインセンティブを与えるプログラムを実施するところが現れてきているが、アメリカ企業では、社員の健康管理は、会社側にとっても社員側にとっても日本からは想像できないほど重要な課題とされているようだ。

Garminにとっては、これは新しい取り組みになる。これまでアスリートやアウトドアに熱心な一部の人々向けにハイエンドの製品を提供してきた同社は、社員一般を対象とするような製品は手掛けてこなかった。アスリートであれば設定も記録も自発的に行うだろうが、健康管理が必要な一般人には、少々の作業でも大きなハードルになる。Garminがこうした方向に舵を切るのか、トラッカーとスマートフォンの組み合わせに法人市場を奪われるのか、先行きが注目される。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)
NTT、東京めたりっく通信、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発にあたる。現在はビジネスアーキテクツ社にてモバイルヘルス分野の新事業立ち上げに従事。同志社大学ビジネススクール嘱託教員として「技術開発と事業化戦略」を担当している。