2021/09/30
「MagSafe」と「ケーブル」どっちが早い?iPhoneの充電速度や使い勝手の違いを検証
iPhone 12シリーズから採用された「MagSafe」は、マグネットを使用してワイヤレス充電ができる便利なシステムだ。では、MagSafeと従来のケーブル(有線)で、充電速度はどれくらい違うのだろうか。
今回はTIME&SPACE編集部がMagSafeとケーブルでiPhoneの充電速度を検証し、実際に使ってわかった便利なポイントやそれぞれのメリットをお伝えする。
MagSafeとは?
MagSafeとは、Appleが開発した「マグネットを使用したワイヤレス充電システム」のことで、iPhone 12シリーズから導入された。
これまでのワイヤレス充電は、スマホを置く位置がズレると充電できないケースがあったが、MagSafeはiPhone 12の背面に埋め込まれたマグネットを使用して本体と充電器を簡単に固定することができ、ズレる心配がない。また、MagSafe対応の保護ケースやカードケースなど、専用アクセサリーを装着したまま充電することもできる。
MagSafe充電器は最大15Wの高速ワイヤレス充電が可能で、別売りの20WのUSB-C電源アダプタ(Apple推奨)、もしくはパソコンの USB-C ポートへ接続して使用する。
ちなみにMagSafeという名前は、旧来のMacBookシリーズで採用されていた電源コネクタの名称を引き継いでいるが、磁力を使うというコンセプトが共通しているだけで、スマホではiPhone 12シリーズから初めて搭載された。また、MagSafeを使用できるのはiPhone 12シリーズ以降となる。
ワイヤレス充電規格Qi(チー)とケーブル充電
ここでワイヤレス充電について、おさらいしておこう。ワイヤレス充電にはいくつかの方式があるが、スマートフォンで採用されているのは「Qi(チー)」という規格だ。
Qiは、WPC(Wireless Power Consortium)が策定したワイヤレス充電の国際標準規格のことで、現在はiPhoneやAndroidなど多くの機種が対応しており、MagSafeもQiを使用している。Qiのワイヤレス充電器の出力は5W、7.5W、10W、15Wがあり、一般的に7.5W以上が急速充電タイプになる。
一方のケーブル充電は、スマホ本体にケーブルを差し込んで使用するお馴染みのタイプ。ケーブルから電力をそのままスマホに送るため充電ロスが少なく、同じ性能なら充電速度はワイヤレスよりも早い。
MagSafeとケーブルで充電速度を検証
今回はMagSafeとケーブルの充電性能の違いを、同じiPhone 12を使用して検証した。
■実験の条件はこちら
・MagSafe充電器、MagSafe充電器(スマホケースあり)、ケーブルの3パターンで実施(※)
・「最適化されたバッテリー充電」の設定はオンで測定
・同じiPhone 12のバッテリー残量70%から1時間充電して、何%まで充電できるかを測定
・70%から100%になるまでの時間を測定
※Apple純正の20W USB-C電源アダプタ、USB-C Lightningケーブル、MagSafe対応iPhone 12シリコーンケースを使用
結果はケーブルがいちばん早いが、MagSafeの急速充電も奮闘
まずはMagSafeからスタート。MagSafe充電器とスマホを合わせるとピタリとくっつき、「70%充電済み」と大きく表示されて充電がスタート。この大きな充電マークは「Apple純正のMagSafe充電器」でのみ表示されるものだ。
MagSafe充電器は実験開始から3分で72%、5分で74%、10分で77%とぐんぐん数字が上がり、30分で84%、60分で94%まで充電できた。70%から100 %まで充電するまでにかかった時間は107分だ。
続いては、MagSafe対応シリコーンケースをiPhoneに装着して実験を行う。MagSafe対応ケースは本体と同じ位置に磁石が埋め込まれており、本体のみの場合と同様の吸着力でMagSafe充電器を装着できる。
MagSafeケースありの状態での充電は、開始から3分で72%、5分で73%、10分で77%まで上がり、30分で83%、60分で88%まで充電できた。70%から100 %まで充電するまでにかかった時間は131分。
最後はケーブルでの充電。ケーブル充電は開始から3分で73%、5分で75%、10分で79%まで上がり、30分で91%、60分で98%まで充電完了!70%から100 %まで充電するためには74分かかった。
結果をまとめるとこうなる。
充電速度はケーブルがいちばん早かった。MagSafeはケーブルに比べ少し充電速度は劣るが、15Wによる急速充電が可能。ケースを装着していても、極端に充電速度が落ちることはなかった。
ちなみにiPhone 12は最大15Wのワイヤレス充電が可能だが、MagSafe以外のQi充電器を使用すると最大7.5Wとなるため、今回はQi充電器との充電速度の比較は行わなかった。参考までに、Qiの15Wワイヤレス充電器で70%から充電すると60分で86%に。70%から100%になるまでの時間は164分であった。
MagSafeはスマホにくっつきやすくて使いやすい
実際にMagSafeを使った筆者の感想を伝えたい。MagSafeは思った以上に使いやすく、電源スピードも早かった。マグネットでの装着は簡単で、正確な位置にくっつく。コツとしては、置いてあるMagSafe充電器にスマホを近づけるのではなく、スマホを手に持って充電器を近づけるとフィットしやすい。また、マグネットはスマホを装着したまま持ち上げられるほど強力で、逆に、外すときは程よい力加減でススっと離れる。
過去にワイヤレス充電器を使っていた際に、睡眠中に充電器に触れてしまい、「朝になっても100%まで充電できていなかった」と困ったことがあったが、マグネット式ならその心配はない。この安心感は大きい。
MagSafeは、充電しながらスマホの操作ができるという利点もあるが、“ながら充電”は充電で発生する熱に加えて、スマホの使用による熱が発生するため、本体が熱くなりやすく、強い負荷がかかるのでおすすめはしない。
また、充電するたびにスマホにケーブルを差す必要がないので、本体の充電口を痛めることがないのもうれしい。ケーブル充電は充電速度の早さに魅力を感じたが、充電していないときにケーブルがむき出しになるのも悩みのひとつであった。
その点、MagSafeは充電していないときでもケーブルがむき出しになることがなく、シンプルなデザインのため、寝室やリビングなどに置いてもマッチしそうだ。
ケーブルやQiを選ぶメリットも
ケーブル充電や従来のQiによるワイヤレス充電を選ぶメリットもある。
ケーブル充電はなにより充電速度の早さが魅力で、コンパクトで場所も取らない。旅行やちょっとした外出時に気軽にバッグなどに入れて持ち運ぶことができる。
Qi充電はとにかく商品の選択肢が多い。充電器にスマホを置く「パッドタイプ」、スマホを立てかける「スタンドタイプ」、ホルダーに固定してクルマなどで使用する「車載ホルダータイプ」など、多彩な機種が発売されている。
「パッドタイプ」でも2台を同時に充電できるものや、スマホの形に合わせて充電位置がズレにくくなっているトレイ型、置くだけで充電&バックアップができるものもある。質感も木目調やレザー風など、インテリア性が高いものが揃う。雑貨や文具のような感覚で好みの充電器を選ぶことができるのだ。また、デスクにスマホを置くような感覚で気軽に充電ができるうえ、スマホを使う際は両手で充電器やケーブルを外す手間がない。充電状態からすぐに片手でスムーズにスマホが使えるのも、利点のひとつだ。
今回の結論としては、MagSafeの充電速度はケーブルよりもやや劣るが、急速充電が可能。本体をコネクタに差し込む手間がなく、ズレて充電ができないといったこともない。ケーブル充電とQi充電の弱点をなくした、“いいとこ取り”の充電器だと感じた。選択肢が増えたiPhoneの充電器は、この記事を参考に使い勝手や好みに合わせたものを選んでほしい。
文:TIME&SPACE編集部