2021/08/18
スマホが熱くなる原因は?サーモグラフィの結果を元に冷やし方などプロが解説
今年の夏も猛暑日が続いているが、「炎天下で動画撮影していたらスマホが熱くなった」「長時間ゲームをしていたらスマホが熱くて画面がカクつく」といった体験をしたことはないだろうか。気温が上昇するとスマホは熱くなりやすくなり、長時間の動画撮影や動画視聴、ゲームなどは、スマホに負荷が多く本体が熱くなりがちだ。
では、どういった操作を行うとスマホが熱くなりやすいのか?スマホが熱くなりがちな操作を行いサーモグラフィを使って、その温度を計測してみた。熱くなりやすいメカニズムや対処法、正しいスマホの冷やし方を伝えよう。
CPUの負荷や環境温度の影響でスマホが熱くなる
まずはスマホが熱くなるケースを簡単に説明しよう。そもそもスマホ本体は、夏の炎天下など、環境温度が高くなれば、熱くなりやすく冷めにくくなる。加えて、スマホ内部のCPUやカメラ、通信制御部なども発熱源となる。長時間のゲームや動画撮影、動画視聴など、CPUやカメラ、通信制御部に負荷がかかった状態が続くと、スマホが熱くなりがちだ。また、充電処理も熱が発生するので、充電しながらスマホを操作する「ながら充電」は、よりスマホが熱くなってしまう。
パソコンであれば内部温度が上昇すると排熱用のファンなどで熱を下げることができるが、小型のスマホにはそれがない。スマホそのものから熱を放散して温度を下げる方法しかないため、発熱量が放熱量を上回るとスマホが熱くなるのだ。
とはいえ、スマホ本体の中にはいくつか温度センサーが内蔵されていて、ある一定の温度以上にならないように、CPUの処理速度などを落としたり、画面の輝度を落としたり、充電を止めたり、カメラ機能を止めたりする「セーフティ機能」が作動する仕組みになっている。
そのスマホのセーフティ機能が作動することによって、「表示がカクつく」「充電ができない(充電が止まる)」「カメラが起動しない」といった症状が現れる。それらは「スマホが故障した」と思いがちだが、実は「低温やけどの発生につながる温度上昇を抑える」ための意図的な動作なのだ。
ゲームか動画撮影か?いちばん熱くなるスマホはどれ?
実際に、どういう動作がスマホの温度を上げるのかを編集部で実験してみた。概要はこちら。
①同一スペック・同一電池残量のスマホを4台用意。
②エアコン温度設定26℃の室内で「ゲーム」「動画撮影(4K)」「動画視聴(YouTube)」「ながら充電(充電&ネットサーフィン)」をそれぞれ10分間行う。
③10分後のスマホ温度をサーモグラフィで確認。
実験前のスマホの温度をサーモグラフィで見ると27.3℃だ。
では、実験スタート!
4台のスマホはそれぞれ次の操作を10分間行った。
●ゲーム
3D空間で戦うFPS(ファーストパーソンシューティング)ゲームをプレイ
●動画撮影(4K)
三脚に固定して4K動画を撮影
●動画視聴(YouTube)
YouTubeを流しっぱなし
●ながら充電
充電しながらネットサーフィン
操作開始から、およそ5分経過。4台のなかでは「動画撮影」の温度がぐんぐん上がり43.5℃に達した。
5分経過の時点で、次に温度が高くなったのが「ゲーム」で37.2℃。その次が「ながら充電」で36.9℃。次が「動画視聴」で33.5℃だ。
結果発表!「動画撮影」がいちばんスマホが熱くなった
10分が経過したところで、どのスマホが熱くなるかの実験が終了。結果はこちら。
第1位 動画撮影(4K) 46.5℃
第2位 ながら充電(充電&ネットサーフィン) 37.7℃
第3位 ゲーム 37.4℃
第4位 動画視聴(YouTube) 34.1℃
※本実験の結果は参考値です
今回の編集部内での実験で、いちばんスマホの温度が高くなったのは「動画撮影」で46.5℃。2位は「ながら充電」で37.7℃、3位は「ゲーム」で37.4℃と僅差。4位は「動画視聴」で34.1℃という結果となった。
スマホのカメラユニットは熱くなりがち
実験結果について、KDDIにおけるスマホ品質管理の専門家である山西一郎に聞いた。
――さっそくですが、動画撮影がいちばん熱くなった理由はなんでしょうか?
「一般的に、スマホに搭載されているカメラユニットは熱を持ちやすい部品です。実験のサーモグラフィでは横にしたスマホの左側が熱くなっていますが、そこにカメラユニットが内蔵されています。動画の場合は撮りっぱなしで、常にカメラが稼働している状態が継続しているため、発熱しやすくなります」
――動画撮影に続いて、ながら充電が37.7℃、ゲームが37.4℃、動画視聴が34.1℃という順番に熱くなりました。
「CPUをよく使う代表格がゲームです。たとえば、3Dを活用したゲームは常に新しいグラフィックをつくり出しているためか、CPUの負荷が高いようです。また、通信機能のあるゲームなら、通信機能も使用しているため、より負荷がかかります。
充電しながらのネットサーフィンは充電による発熱と、通信機能による発熱だと考えます。4位の動画視聴ですが、通信機能は動作していますが、CPUの負荷は比較的軽いと思います。
また、外気温の影響も見逃せません。炎天下の環境ではスマホが熱を帯びますし、放熱も不利です。レジャーやスポーツなど、炎天下でスマホを使用する場合は、直射日光が当たる場所を避け、小まめに使用を止めて休ませるなど、長時間の連続使用にならないよう工夫してください」
実際に、外気温31℃の屋外にスマホを置いて動画を撮影したところ、わずか1分で40℃を超え、5分間で45℃、10分後には48℃という結果に(!)。夏の屋外ではスマホが熱くなりやすいことがよくわかった。
熱くなったスマホは自然冷却が基本
――熱くなったスマホはどのように冷却するのが良いでしょうか。
「スマホは熱の供給元がなくなると自然と冷えていくため、まずは使用しているアプリなどのご利用を一旦止めて、スマホを休ませてください。電源をオフにするとより効果的です。充電中だった場合は、充電を止めるのも効果が期待できます。自然冷却がいちばん好ましく、冷蔵庫に入れたり保冷剤を使ったりして強制冷却するのはおすすめできません。扇風機の風をあてるのは大丈夫だと思います。」
――強制的な冷却は何故おすすめできないのでしょうか?
「急激にスマホの温度が下がると、内部が結露して精密機器に水分が付着し、腐食やショートの原因になり、故障につながります。『防水スマホだから氷水で冷やす』というのもNGです。スマホの適切な冷却方法は、自然に冷ますことが基本。急激な温度の低下は厳禁です」
実験後にアプリを終了させて、スマホを休ませて温度を測ってみた。10分後には「動画撮影」が35.2℃、「ながら充電」が33.9℃、「ゲーム」が32.8℃、「動画視聴」が33.6℃と、風を当てなくても、待受画面にしているだけで、ちゃんとスマホは冷却されていた。
夏はスマホが高温になりやすく、長時間の動画撮影やゲームもスマホには大きな負荷がかかる。本体が熱くなる前にスマホの利用を一時止めて、涼しい場所でスマホを休ませることを心がけてほしい。
文:TIME&SPACE編集部