2021/06/21
Appleの紛失防止タグ『AirTag』はどんな場面で役立つ?使い方や注意点、使用感をレポート
2021年4月、Appleから「AirTag(エアタグ)」が発売された。
これは紛失防止タグと呼ばれるガジェットで、大事なものに付けておけば、近くでも、遠く離れていても、AirTagを付けたアイテムの在りかがわかるというものだ。財布やカードケースに入れておくほか、専用のアクセサリとしてキーチェーンなどもあるため、カバンに取り付けるなど、さまざまな使い方ができる。本記事では、具体的にどう設定して、どんな場面で役立つのかを紹介しよう。
AirTagは世界中のiPhoneが探してくれる
そもそも紛失防止タグとは、スマートフォンなどと通信することで位置情報を検索し、それがどこにあるのかわかるようにするものだ。一般的には、財布やキーケース、カバンなど携行品に付けることで、紛失や忘れ物防止に役立つ。
AirTag自体にGPSは搭載されておらず、iPhoneと通信接続することにより位置情報がわかる仕組みだ。iPhoneなどの「探す」アプリを使って、近距離であればAirTagまでの距離や向きを指し示してくれるほか、AirTagから音を鳴らすこともできる。
なお通信接続には、BluetoothやUWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線通信)が用いられている。UWBは広い周波数帯域を使用し、障害物による影響が少ない通信方式なので、より細かい位置を探すことが可能だ。
また、Bluetooth接続が届かないほど離れている場合でも安心。世界中に数億台あるといわれるiPhoneやiPad、MacがAirTagの位置情報を拾い、iCloudを通じて匿名で持ち主に在りかを指し示してくれるのだ。
サイズは500円玉よりひとまわり大きいほど(直径31.9mm)で、重さは11g、厚みは8mm。ステンレススチールとプラスチックの組み合わせもあり、ツルッとした触り心地だ。かなり軽いため、携行品に付けて持ち歩いていてもまったく気にならない。
なお、AirTagは多少磁気を発している。財布に入れておいてもクレジットカードへの影響を心配する必要はないとされているが、気になる人は直接カードに触れないようにしておくといいだろう。
使い方は簡単。なくしてから見つけるまでの手順もわかりやすい
初期設定の方法は実に簡単。AirTag本体に着いている保護フィルム(絶縁フィルム)を引き剥がしたら、iPhoneに近づけるだけでペアリングされる。
この手順はAirPodsなどとほぼ同様で、近年のApple純正のiPhoneアクセサリらしい手軽な初期設定といえる。[接続]を選択したら、AirTagのアイコンと名前を設定する。
「財布」「バックパック」「ジャケット」といった基本的な名前であればプルダウンメニューから選択できるが、「○○の財布」などオリジナルの名称も入力可能だ。また、アイコンはAppleオリジナルの絵文字から選択する。
あとはアクセサリを使ってアイテムに付けたり、小銭入れに入れたりしておくおくだけ。実際に筆者は普段、AirTagの存在を気に留めることはなく、付けていることを忘れてしまうことがあるくらいだ。
そして、iPhoneの「探す」アプリを開き、下部のメニューから[持ち物を探す]をタップすると、持ち物が地図上にマッピングされる。近くにない場合は、探したいアイテムを選んで[探す]をタップしよう。
また、万が一紛失したときに備えて、[検出時に通知]をオンにしておこう。誰かのiPhoneが近くを通ったときに、持ち主のiPhoneに位置情報の通知が届くようになる。
さらに、[紛失モード]の[有効にする]をタップしておくのもおすすめだ。紛失物を見つけてくれた人がスマホをかざしたときに、電話番号やメールアドレス(通知内容を選択可能)が表示されるように設定できる。
持ち物がなくて焦る!という局面がほとんどなくなった
筆者は4個入りパッケージを購入し、日常遣いの財布と、カードや領収書を入れる長財布、自宅のキーケースとクルマ用のキーホルダーに割り当てている。実際の使い勝手はというと、実に快適だ。
AirTagのおかげで、出かける間際にクルマのキーや財布が見当たらなくて困る、という局面がほぼなくなったのだ。「どこにいったかな」という疑問がよぎったときは、捜索作業に着手するよりも先に「探す」アプリを開くクセがついた。
もし、AirTagが通信圏外であったとしても、自宅内にあれば少し歩くと、すぐに反応する。大まかな距離が表示され、さらに近づけば方向が示される。その精度は極めて高く、表示は正確そのものだ。また、「Hey Siri、○○を探して」と話しかけて探すこともできる。
加えて筆者は忘れ物をすることが多く、たとえば出先で自宅の鍵などを持っていないことに気づいた際、「どこに置いたかな……」と不安に駆られることがある。その際に「探す」アプリを開けば、最後にどこでいつiPhoneとAirTagが接続していたのかがわかる。そのため、最後に接続したのが自宅だったというログをすぐに確認でき、鍵のありかを特定できることは大きな安心感につながる。
実際に公園でなくしてから、見つけるまでに約30分
幸運なことに、筆者はこれまで外出先でAirTagを付けたアイテムを紛失する……という事態には遭遇していない。そこで今回は、紛失から発見までを疑似体験するために、近所の公園に出かけてみた。家族にAirTagを付けたキーリングを預け、それを公園のどこかに隠してもらい、探し当てるという試みだ。家族の出発を見送って10分後、いざ捜索開始である。
公園にいる誰かがiPhoneを持ってAirTagに近づいてくれれば、iCloudを通じた匿名の位置情報が手元のiPhoneに送られてくるはずだ。しかし、捜索から10分ほど経ってもまだ反応がない。
この公園は広大なため、たまたま人の姿が少ない場所に隠されたと考えれば、反応がないのも納得できる。しかし、自分のiPhoneが幸運にも近くを通りがかれば、AirTagの反応を拾って場所が示されるだろう。こうしてさまよい歩くこと30分。遊具エリアから50mほど離れた木陰で、反応があった。
そこから距離が縮まる方向へと歩を進めていくと、矢印が表示された。
それに従って移動すると、すぐに在りかが判明した。木の根元に置かれていたのである。
思わず「あった!」と声が漏れた。擬似的な紛失とはいえ、ひと安心した。広大な公園で自分の足と目だけを使って小さなキーリングを見つけるという芸当は、不可能に近いと言っていいだろう。今回の検証ではiCloudネットワークの恩恵に授かることはできなかったが、AirTagを付けておくだけで、“探す”という行為の難易度は格段に下がるという印象を受けた。
セキュリティにも工夫が。なくして悪用される心配は少ない
このように、AirTagは位置情報を持ち主に伝えることに特化したガジェットだ。それだけに、悪用されないか気になるところ。知らない人のiPhoneやiPadを位置情報の中継に利用するが、そこは徹底的に匿名化と暗号化が施されている。つまり、近くを通りがかったiPhoneユーザーに、AirTagの位置情報が漏れることはないのだ。
そして、拾った人が初期化して持ち去ってしまう心配も無用。初期化するには認証したiPhone本体が必要で、基本的に持ち主以外にはできないので安心だ。
バッテリーは長持ちで耐水性能も備える
気になるバッテリー持ちだが、Appleによると通常使用であれば1年以上持つという。交換時期はiPhoneが教えてくれ、交換する電池もコンビニによっては取り扱いのあるCR2032型のコイン電池なので、手に入れやすい。さらに、IP67等級(最大水深1メートルで最大30分間)の耐水性能を有する。
そのほか、カラフルなキーリングやループなど純正アクセサリも豊富に揃う。エルメスによる高品質なレザー製ラゲッジタグ、バッグチャーム、キーリングもあるほか、各社からさまざまなアクセサリが登場している。
AirTagは安全のための保険
AirTagは紛失防止タグとして非常に優秀であり、セキュリティにも配慮された仕様になっている。筆者自身、AirTagを財布やカバンに付けているだけで、日々絶大な安心感を覚えている。
これまでに一度も、鍵や財布が見当たらなくて困った……という経験がない人なら不要かもしれない。しかし、そんな人は少ないだろう。この先、いつか一度でも手元からなくなって困った局面が訪れた際、「買ってよかった」と感じられるはずだ。忘れ物に困った経験がある人は、日々の生活にAirTagを取り入れることを検討してみてはいかがだろうか。
文:吉州正行