2018/10/30
球体が浮かぶ不思議な写真や、万華鏡の世界を撮る! スマホ用レンズの作り方
スマホカメラのシャッターを押せばきれいな写真がバシバシ撮影できる時代だからこそ、「カメラ性能やアプリでは写せない魅力のある写真」との思いがけない出会いには心が踊るというもの。
今回TIME & SPACE編集部が注目したのは、「宙玉(そらたま)」と「万華鏡写真」。スマホに手作りのレンズを装着することで、美しく、世にも不思議な写真を撮ることができる。どちらも実験写真家の上原ゼンジさんが考案した特殊な撮影方法だ。
「宙玉」は、写真の中央に宙に浮かんだ透明な玉に写り込んだ被写体を閉じ込めつつ、背景の絶妙なボケも同時に楽しめるという特殊なレンズ。
風景の中に、もうひとつ世界が切り取られたような独特な世界観が特長だ。
一方の「万華鏡写真」は名前の通り、万華鏡を使って写真を撮る方法だが、通常の万華鏡だと覗き穴が小さくて撮影がしづらい。そこでカメラのレンズに合わせて大きめに作った撮影専用の万華鏡である。
撮影素材も花やビーズ、スマホに表示させた動画など、身の回りにあるさまざまな素材で楽しめる。
これらの写真、基本は一眼レフカメラで撮影するものだが、スマホでも撮影ができる。しかもお菓子の空き筒と市販されている材料だけで自作も可能というので、上原さんのアドバイスのもと、早速作ってみることに!
※本記事では、iPhone X用に作成し、iPhone Xで撮影しています。
30分で完成! スマホ用「宙玉」レンズの作り方
- 【材料】
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- ・お菓子等の空き筒(直径7cmくらいの筒型の空き箱)×2
- ・スマホ用カバーケース(背面タイプ)
- ・ルーペ(レンズ径21mm、倍率20倍)
- ・強力な両面テープ
- ・スポンジ
- ・工作用宙玉
■まずはスマホケース側(土台側)のパーツを作ろう
- ① ルーペはレンズ部分をネジで外し、スマホのカメラレンズが中心にくるように強力な両面テープでケースの外側に貼り付ける。このとき、ルーペのレンズ部分をテープでふさがないよう、注意しながら貼り付けよう。ルーペをスマホにケースを装着したらスマホのカメラを立ち上げ、レンズ位置を確認する。
- ② 筒の蓋を、ルーペの形にくりぬいておく。
- ③ ルーペの形にくりぬいた蓋を、強力な両面テープを使ってスマホケースに貼り付ける。写真はスマホケースの裏側から見た図。
- ④ スマホケースを表側から見るとこうなっている。
■「工作用宙玉」を取り付けよう
- ① 筒の上部から6cmを切る(iPhoneの場合)。機種やルーペの倍率により長さが微妙に異なるので調整する。
- ② 筒の蓋のてっぺんを抜き、工作用宙玉を内側にセット(凸が大きい方を内側にする)。
- ③ 上で作ったスマホケース側のパーツにセットする。
- ④ ちぎったスポンジで隙間を埋める。ピンセットを使うと上手くいく。
スポンジを詰めた蓋部分をテープ(材料外。セロテープでも、マスキングテープでもOK)でとめたら、完成!
10分で完成! 「万華鏡レンズ」の作り方
- 【材料】
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- ・お菓子等の空き筒(直径7cmくらいの筒型の空き箱)×1
- ・ミラー(紙やプラスチック製など、はさみやカッターで切れるタイプ。製品の「万華鏡写真用ミラー」を使用する場合不要)
- ・セロテープ
- ・スポンジ
■ミラーパーツを作ろう
- ① まずはミラー(記事では紙製のものを使用)を長さ22cm、幅5cmにカットする。
- ② ①を3枚カット。
- ③ 切った3枚のミラーを隙間ができないようにセロテープで止める。
- ④ 完成。
なお、製品として「万華鏡写真用ミラー」が販売されている。こちらはガラス製の表面反射鏡で、写りがかなり鮮明となる。
■ミラーパーツを筒に入れて固定しよう
- ① 筒を用意しよう。この時、筒の底を抜いておく。
- ② 作成したミラーパーツを筒に入れる。
- ③ スポンジを小さくカット。
- ④ ミラーパーツが筒内で固定できるよう、③のスポンジを隙間に詰め込む。ピンセットなどを使用すると詰めやすい。
ミラーが固定されていれば完成!
ちなみに、下で固定しているのは、100均などで売っているワイヤーをより合わせて作った“万華鏡自立装置”だ。
「宙玉」レンズで撮影してみた!
制作した「宙玉」レンズと万華鏡を持参し、撮影テクニックを聞きに上原ゼンジさんの工房に向かう。
こちらが宙玉・万華鏡写真を考案した上原ゼンジさん。工房内は宙玉の試作品をはじめ撮影機材が所狭しと並んでいる。
さっそく宙玉を使ったスマホ撮影のテクニックについて聞いてみることに。以下紹介する作例は、上原さんにスマホ用宙玉・万華鏡で撮影してもらったものだ。
作例1:空と大地など水平線を利用した撮影
「宙玉は、玉の部分の撮像と背景が逆さになるので、空と大地との境が反転になるような風景を撮ると面白い写真になります」(上原さん)
作例2:街中のイルミネーションを撮影
「これからの季節でいうと、街中のイルミネーションなどは絶好の被写体。夜景とのコントラストがはっきり出たり、イルミネーションの玉ボケが背景に写り込んだりして面白い作品になります」(上原さん)
作例3:被写体と背景のコントラストが強いものを撮影
晴天の運動会の会場にたなびく万国旗。なんだか玉自体が地球儀のようにも見えて面白い。
公園や空き地にあるような木もこうして宙玉で撮影するだけで季節感を封じ込めた独特な写真に。
上原さん曰く、「被写体をバッチリ綺麗に写し込むということが重要という撮影方法ではないので、人物などはピンが甘くなってもシチュエーション次第で面白い撮影ができるので、ぜひ色々な被写体を皆さんで探してみてください」とのこと。
作例4:動物を撮影
ペットや野良猫など動物を撮ってみても面白い。被写体である上原さんの愛犬、チョコちゃんも、魚眼レンズで撮ったようにダイナミックな姿に。
万華鏡写真を撮影してみた!
さて、お次は万華鏡写真を撮影。
用意するものは、光源となる台。当日の撮影では、ポジフィルムを観察するための「ライトボックス」を使用したが、パソコンのディスプレイやタブレット、スマホなどでも代用可能。この上に万華鏡をのせたら準備OK。
「タブレットの場合は撮影した写真を表示させて撮っても面白いし、Zライトや100円ショップのLEDライトで横から照らしても構いません。また背景に折り紙やくしゃくしゃにしたアルミ箔を敷いてもいいでしょう」(上原さん)
作例はこちら。
作例1:近所で拾った季節の草花
撮影方法は、万華鏡装置の下にあるライトボックスもしくはタブレットの上にちぎった花びらを置き、スマホで覗き込みながら撮影するというもの。
「花は花屋さんで買ってきても、近所に咲いている雑草のようなものでも構いません。ついつい具材をたくさん敷き詰めてしまいがちですが、ちょっと間引いてシンプルな構成にしてみるときれいです。広角レンズのアタッチメントなども販売されていますが、そういったものを利用すると三角形のパターンを増やすことができます。いずれにせよルールはないので思いつきでいろんな方法にチャレンジしてみてください」(上原さん)
万華鏡写真の撮影では、草花のほかに、ビーズやガラス玉、アクセサリーなど、綺麗な色やキラキラしたものなどが素材として向いている。
作例2:シーグラスを使った作例
「この万華鏡写真は、ちょうどスマホのレンズがすっぽり入るところがポイントです。ワークショップでも、小さいお子さんからお年寄りまで夢中になってくれます。撮影した画像は、スマホやPC のデスクトップ画面やプリントアウトしてプレゼントの包装紙のテクスチャーや手作りの封筒などに使ってみても面白いですよ」(上原さん)
なるほど! 洋服の生地プリンター用のテクスチャー素材として使えば、楽しみも無限に広がりそう。
宙玉に、万華鏡。自分らしいスマホ写真に一工夫を求めてみるのも面白いかも。
文:よもぎ三太郎
上原ゼンジ
実験写真家。宙玉レンズをはじめ、手ブレ増幅装置や円窓シリーズなど、さまざまな実験的な写真に取組み発表。宙玉レンズは製品化され、世界中に愛好家がいる。
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