2018/08/14
「スマホが熱くなる」は実は故障じゃない? 素早く安全に冷やす方法を検証
40度を超えるような猛暑が続く今年の夏。そんな気温の上昇とともに増えてくるのが、
「スマホが熱くなって動作がおかしい。これ故障!?」
といった熱くなったスマホのトラブル。
実はこれ、スマホの正しい動作であって、故障ではない場合も多いんです。
ネットでは、「保冷剤で冷やすのは大丈夫?」「10円玉がスマホの冷却に効果がある」「不具合の可能性大、すぐケータイショップに」などなど、さまざまな対処法が書き込まれているものの、果たして正しい対処法ってどれ?
そこで今回解説するのは、熱くなったスマホの対処方法。
KDDIのトラブルバスターこと、プロダクト品質管理部の八尋慶和と中田雅和にスマホがなぜ熱くなるのか? 熱くなるのは故障なのか? その対処法は? を聞いてみた。
充電ができなくなるのはスマホが気を遣っていた!?
――早速ですが、スマホが熱くなる現象は暑さが原因と考えていいのですか?
中田「「スマホが熱くなる」というお問い合わせが、気温が上昇し始める7~8月にかけて急激に多くなります。環境温度が高くなれば、スマホも熱くなり易く、冷めにくくなる。つまり、気温の上昇がスマホが熱くなる原因でもあるんです。」
――スマホの温度が下がりにくいため、余計に「夏はスマホが熱くなる」と感じるんですね。
中田「スマホの本体を構成するCPUやカメラユニット、電池なども発熱源になります。パソコンでは内部温度が上がると排熱用のファンなどで熱を下げることができますが、スマホの場合は小型化や防水設計のために、それがない。スマホのボディそのものから放熱するしかないのです。」
――一般に「熱い」と感じた時、スマホの温度は何度ぐらいになっているんでしょう?
中田「42度から43度ぐらいですね。少し熱いなと感じるお風呂ぐらいの温度です。」
――それ以上熱くなることはないのですか?
中田「スマホの本体の中には、多くの温度センサーを取り付けてあり、ある一定の温度以上になると、それ以上高温にならないように、バッテリーへの給電をストップさせたり、処理速度を落とすなど、「セーフティ機能」が作動する仕組みになっています。」
――スマホ自体が自分の熱を計っているんですね。
中田「スマホが熱くなると「表示がカクつく」「充電ができない(電池持ちが悪い)」「カメラが起動しない」、つまり「スマホが故障した」と考えられてしまう原因になってしまっているのです。
実際、多くのお客様から故障だと思われたスマホは、メーカーに到着してさまざまな検査をしてみても故障していなかったことから、「セーフティ機能」が作動していただけだったと推測しています。」
――故障ではなく、正常なスマホだからこそまるで故障のような症状が出るんですね。充電ができなくなるのはどんな理由があるんでしょう?
中田「スマホに使用されているほとんどの電池はリチウムイオン電池で、熱に弱い特性を持っています。だいたい電池の温度が45度になってしまうと劣化しはじめると言われてます。」
――スマホが熱くなってしまう具体的な理由はどんなものがありますか?
中田「直射日光が当たる場所などで、動画アプリやグラフィックやアニメーションを多用するゲームアプリなどを使用すると大きな要因になります。
また、スマホを充電しながら上記のようなアプリを使うのもおすすめできません。」
スマホが熱くなった時の正しい対応を実験してみると…
――スマホが熱くなりすぎているなと感じたときの対処方法は?
中田「まず、有効なのはスマホの電源をオフにすること。充電中に熱くなった場合は「充電をやめる」ことです。」
――冷蔵庫に入れたり保冷剤を使ったりするとすぐに冷える、という都市伝説もあるようですが……。
中田「故障の原因になるのでおすすめできません。急激に温度が下がると、スマホの内部で結露が発生してしまいます。「防水スマホだから水で冷やす」こともおすすめできません。急激に冷やしてしまうと内部が結露して、内部の精密機器に水分が付着し腐食やショートなど深刻な事態にもなりかねません。スマホの適切な冷却方法は、自然に冷ますことが基本になります。」
――とはいえ仕事中だったり、大切な連絡をする時だったりと、なるべく早くスマホの熱を冷ましたい場合の有効な方法はどんなものがあるんですか?
中田「実際に見てもらったほうがわかると思いますので、スマホの冷却の実験をしてみましょう。」
ということで、急遽「熱いスマホをもっとも早く冷却できるのはどれか?」の比較実験することに。
10円玉か扇風機か? いちばん早くスマホを冷やす方法は?
実験の概要はこうだ。
●同一スペック、電池残量のスマホを4台用意。
●スマホに同一条件で負荷をかける。
※専門家立ち会いの元で実験しています。真似しないでください。
●4台のスマホが同じ高温状態になったところで、別々の方法で冷却をスタート。
●4種の冷却方法のうち、どれがいちばん早く冷やすことができたのか? を調べる。
八尋「「室温だけで自然に温度を下げる」「カバーをつけたままの状態」「扇風機で風をあてる」、それと最近ネットで話題になった、「10円玉を置いて冷却」の4つの方法で、どれがもっとも早く冷却できるのかを見ていきましょう。」
①扇風機
②10円玉冷却
③室温のみ
④カバー装着
スマホがフル活動する状況を強制的につくり出し、スマホの温度を上げていく。
八尋「4台とも電源をオフにして、冷却を開始してみましょう。」
左から順に、扇風機、10円玉冷却、室温のみ、カバー装着と並べた。
冷却開始から、およそ3分経過。
サーモグラフィーでみると、スマホの温度がみるみる変化しているのがわかる。
――やっぱり扇風機で冷やしているスマホがサーモグラフィーの色温度でいちばん冷えるのが早いように見えますね。次に10円玉も早い!
中田「10円玉冷却が低く見えるのは硬貨の表面温度が低いので、そう見えるだけかもしれません。ノーマルのスマホが室温近くなったら硬貨をとって表面温度をみてみましょう。」
実験結果発表! もっとも有効な冷却方法は?
7分が経過したところで冷却実験が終了。
結果はこちら。
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第1位
扇風機(26.9度)第2位
ノーマル(室温だけの放置)(31.5度)第3位
10円玉冷却(32度)第4位
カバー付き(室温だけの放置)(33度)※本実験の結果は参考値です。
――予想の通り第1位は扇風機でしたが、意外にもノーマルが大健闘でしたね。
中田「扇風機はスマホから放出された熱を吹き飛ばす効果で、かなり早く温度が下がることがわかりますよね。」
というわけで、スマホが熱くなった場合は、
日光の当たらない室内に置く。
なかでも冷房などで室温が低い場所だと良い。
さらに効果があるのは扇風機などで風にあてること。
という順で是非試してみよう。
銅の熱伝導率の高さで効果があるとされた「10円玉」の結果は意外だったが、ノーマルの実験結果をみても、机の温度が低ければ置いておくだけで冷却効果は十分ある、ということがわかった。またカバーありのスマホは、ノーマルに比べて放熱の効率が多少悪くなるので、カバーを外して行うほうが冷却効果は望めそうだ。
「スマホが熱い!」と感じたらスマホを休ませよう
まだまだ終わりそうもない酷暑の夏。
夏場はスマホも高温になり易い、という事実を知ったうえで、スマホが熱くなり、普段よりも調子が悪い、故障かな?と感じたら、「スマホが自ら冷やしてくれとSOSを出している」、「正常なスマホだからこそ、まるで故障のような症状が出ることもある」ということをまずは覚えておきましょう。
そして、速やかに「スマホの電源をオフ」にしたり、「涼しい室内で休ませる」などして、スマホを冷やして再度確認してみてはいかがでしょうか。スマホとともに、酷暑を快適に乗り切ってください。
文・撮影:TIME & SPACE編集部
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