2018/07/03

「暑い日はスマホ電池の減りが早い」は都市伝説? 電池劣化を防ぐ使い方も

あーすれば電地が長持ちするらしいとか、こーすれば電波が入りやくなるらしいとかとか。大抵はそれっぽい理屈がひっついているので、ついつい人にも話したくなって、いつの間にか「らしい」が抜けて、事実として知られていることってあります。

100%信じてるというわけでもないけど、なんとなく納得している、そんな微妙なスマートフォンにまつわる「都市伝説」。TIME & SPACEでは、それらの疑問を専門家にぶつけ、真実なのか、偽りなのかを検証していきたいと思います。

というわけで今回検証するのは、夏に向けて知っておきたい「暑い日は電池の消耗が早い」説。

この時期「炎天下でスマホを使っていたから、みるみる電池が減ったよ!」という話を聞きます。「から」と言っているくらいなので、もう「暑い日は電池の減りが早い」というのはもはや一般化の域にまできている模様です。

では、本当に「暑さ」は電池に影響するものなのでしょうか?

KDDIの「電池先生」こと、プロダクト品質管理部に勤務する新保恭一に真相を聞いてみました。

電池先生こと新保恭一 電池先生こと新保恭一。KDDI 商品企画本部 プロダクト品質管理部 CS推進グループ 課長補佐。モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)モバイル充電WG 主査も勤める

暑いときには本当に電池の減りが早い?

――暑い場所とか夏の炎天下でスマホを使っていると電池の減りが激しくなりますよね。どうしてなんですかね?

新保「いやいや、そもそも暑さの影響を受けて電池持ちが悪くなることはないんですよ。」

――え!? でも、暑い場所でネットにつないだり、写真をバシバシ撮っていると、電池がどんどん減るじゃないですか。

新保「電池の消耗が激しいと感じるのは、残量表示を見ているのか、体感時間なのかわかりませんが、単に「操作した結果」だと思います。」

――では、なんで消耗が早いと感じるんでしょうね?

新保「そう、まさに「感じる」だけかもしれません。
スマートフォンの電池もちは「皆様の使い方」によりさまざまとなりますが、ゲームのようにSoC(System-on-chip)の稼働が大きいアプリや、カメラのように専用デバイスが動作する機能を頻繁に長時間利用していると電池の減りは早くなります。繰り返しますが、極端な高温等は別にして、人が普通に生活できる温度環境においては「暑いから電池持ちが悪くなる」ということはありません。」

「暑さ」よりもダメなのは……?

――気温は電池の持ちには影響しないってことなんですね。

新保「ところが、それも違います。逆に気温が低くなると電池持ちは悪くなるのです。と言っても0℃以下の話ですので、スマートフォンの電源が入っている状態であれば極端な低温でなければ問題はないですし、取扱説明書に記載されている利用環境でスマートフォンを利用するのであれば関係ない話です。現在、多くのスマートフォンに使われているのはリチウムイオン電池です。 この中身は化学物質で、「電極(2種類の金属)と電解質から成り立ち、電子が流れることにより電流が発生します」。この仕組み自体はほかの一般的な電池と変わりません。理科の時間に習いましたよね。」

電池のしくみ 一般的な電池の構造

――ええ、習ったと思います。……覚えていないだけで。

新保「簡単に言えば、「食塩水のような電解質液体のなかの電子が移動することにより、電流を発生させる」というのが電池の仕組みです。ところが気温が低いと、電池内にある電解質のなかの化学物質が不安定になり、うまく移動できなくて供給できる電力が不安定になってしまう。その結果、スマートフォンに供給される電力が少なくなります。」

――暑さよりも、寒さのほうが電池に影響があるんですね。

新保「あくまで極端な低温という条件ですが、電池持ちという観点で技術的に言えばそうです。暑さについては電池もち以外の影響が有るので、これは後程、話をいたします。

先の通り、電池は電力(電圧×電流=電力)を供給しますが、正しく言うと、電池はスマートフォンに「電圧」をかけて、スマートフォンが動作するために必要な大きさの「電流」を吸い上げるイメージです。つまり、電池が消耗するということは、電池がスマートフォンにかけることができる電圧が小さくなるということです。氷点下のような低温環境だと電池自体の電圧が小さくなってしまい、たとえ満充電しても通常温度環境での満充電状態より電圧が小さくなってしまいます。」

電池の放電温度特性 「放電温度特性」のグラフを見ると、-20℃のときに急激に電圧が下がる様子がわかる(一般的なリチウムイオン電池の放電温度特性例)

――そうなると、電池は暑さに影響を受けないという結論でいいでしょうか?

新保「実はそれもちょっと話が違うんです。電池が本来の力を発揮できるのは、人が生活しやすい温度と同じなんです。暑さというか、いわゆる高温状態で使い続けたり保管したりすると電池が劣化していきます。」

――どういうことです?

新保「消耗ではなく、電池そのものが劣化するという意味です。高温環境でゲーム等の電池の消耗が大きいアプリを長時間、何日も利用したり、さらに同時充電したまま利用したりすると電池劣化が早くなってしまいます。満充電しても使用できる時間が短くなるということなんです。

高温環境とは周囲の温度に加えてスマートフォンの温度も影響しますので、電池の劣化を防ぐためには、ゲームやカメラ利用などでスマートフォンが熱くなってきた、と感じたら涼しい場所で少し休ませてあげたり、充電したまま同時にゲームをプレイするといった使い方をできるだけしないようにすることが電池に優しい使い方となります。」

ばてる電池のイメージ

――なるほど。暑い日にスマホを使っても電池持ちに影響はないが、寒い日は影響がある。そして高温環境での充電は電池を劣化させるので、電池をいたわる使い方をしてね! っていうことですね。これが温度と電池の関係についてのファイナルアンサーですね。

新保「暑い日、寒い日と言うより、高温環境、低温環境という言い方が正しいですが、ファイナルアンサーです。」

暑いときはスマホも休ませながら使うことを心がけよう

――暑さと電池消耗は関係ないことは理解しましたが、とはいえ暑い日にスマホの動作が遅くなったように見えることがあります。あれはどういうことなんでしょうか?

新保「スマートフォンの動作に影響を与える要素は温度環境だけではないので一概には言えませんが、たとえば、スマートフォンの負荷が大きい(スマートフォンが頑張って処理をする)ゲーム等のアプリを利用する場合はスマートフォンは頑張って処理をしていますのでスマートフォン自身の温度が上昇します。

それに外気の暑さが加わるとさらにスマートフォンの表面が「熱い」と感じるかもしれません。auのスマートフォンは温度上昇等の安全性において国際基準に従っているのは当然として、お客様にご心配をかけないように開発されておりますので、高温環境でのご利用時にセーフティ動作することがあります。その時に、スマートフォンの動作が遅くなったように見えることもあるかもしれませんが故障ではありません。」

――どれくらい高温になると、その機能が作動するんですか?

新保「正確な数字は申し上げられませんが、お客様が怪我をしないことはもちろんのこと、不安に感じない温度を考慮して設計しています。」

――スマホを充電しながら使っていると、本体が熱くなることありますよね。

新保「スマートフォンの使い方にもよります。充電もスマートフォンの温度を上昇させる要因になりますが、先のとおり、温度が上がりやすいゲーム等のアプリを充電しながら利用すると、さらに温度を上げてしまいますし、電池に対しても負担をかけてしまいますので劣化の原因にもなります。」

――もし、スマホが熱くなってしまったらどう対処すればいいんでしょう?

新保「風通しの良い場所で、スマートフォンを休ませてあげれば大丈夫です。触って、特に熱くなければ使用や充電に問題ないと判断してください。やってはいけないのは、高温となったスマートフォンをカバンにしまったり、ポケットに入れてしまうこと。密閉されたところに入れてしまうと、熱がこもってしまい、さらにスマートフォンが熱くなってしまうからです。」

――ほかに使い方で気をつけた方がいいことってあります?

新保「スマートフォンが熱くなる前に一旦使用をやめることですかね。どうしても使い続けなければいけない状況でもない限り、ちょっと熱くなったかなと思った時点でスマートフォンを休ませてあげることも大切です。」

――ありがとうございました!

というわけで、「暑い日は電池の減りが早い」というウワサは「ウソ」ということがハッキリしました。ただし、暑さや熱によって電池が劣化するようです。今年の夏は気をつけながら使ったほうがいいということは気に留めておいてくださいね。

【今回の結論】
  • ・「暑い日のスマホは電池の減りが早い」は誤り。
  • ・極端な低温環境では電池の減りは早くなる。
  • ・暑い場所での充電は電池を劣化させるから気をつけるべし。

電池先生こと新保恭一

文:松田政紀(アートサプライ)

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