2018/07/24
プロ写真家のコツ! スマホで花火をキレイに撮るテクニック
夏といえば花火の季節。空一面に広がる花火を記念に残しておきたいもの。でも、花火をスマホで撮影するのって結構難しいんですよね。あとから見返したときに、ブレてしまったり、肝心の花火が小さくなってしまったり……
そこで今回は、プロカメラマンと一緒に「どうすればスマホで花火を綺麗に撮影できるのか」実際に花火を撮影してきました。
※今回の記事で使用した花火写真は、すべて「Galaxy S8」で撮影したものです。
花火を撮影する時の3つの基本ポイント
「暗い中での撮影」「動くものの撮影」「撮影対象が光るもの」という、スマホで撮影するにはそもそも難しい条件が揃っている花火大会。実際のところ、ベストな写真を撮るためには、事前の下準備が重要です。
①できるだけスマホを固定して撮影をする
暗い場所での撮影は、シャッタースピードが遅く、どうしてもブレがちです。ブレ対策としてはスマホ用の三脚が使えればベストですが、ただでさえ荷物になる三脚を持ち運ぶのは大変ですし、そもそも花火会場では大型の三脚の使用が禁止されていることも。
三脚の代用となる壁や台があればそこに固定して撮りたいところですが、それがない時は、とにかく脇をしめて極力スマホを固定できる状態で手ブレを抑えること。シャッターボタンも極力ソフトタッチで。
②「HDR」はオフにすること
HDRは「High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ合成)」の略語で、明るさの異なる3枚の写真を撮影し、自動的に合成して肉眼に近い写真にする機能です。iPhoneやAndroidスマホのカメラには標準で備わっていて、動きのない風景写真などで有効ですが、一瞬の光を捉える花火撮影では、写真がブレやすくなるため、オフにしておくのがポイント。
【HDRオンのNG例】
③撮影前にレンズの汚れを拭き取っておくこと
知らないうちに、ついレンズに触ってしまい、指の脂でレンズを汚してしまったまま撮影をしてしまうと、「ハレーション」という、光の強い部分がにじんでしまう現象を引き起こしてしまいます。
ベストショットが撮れた、と思ったあとで、よく見てみたらハレーションのせいでボヤッとした写真になっていてガッカリ、なんてことがないように、撮影前にレンズのホコリ、汚れは拭き取っておくことにしましょう。
【ハレーションによるNG例】
実際に撮るときの基本テクニックと注意点
では、肝心のベストショットはどのように撮ればいいのでしょうか。まずは基本的なテクニックと注意点を紹介します。
①ひたすら連写をしてベストな一瞬を捉える
スマホがグラグラしないように固定したら、シャッターボタンをひたすら押して撮りまくります。
花火は打ち上げられてから、開くまでに少しタイムラグがあります。そのタイミングを覚えておき「ここぞ!」のちょっと前からシャッターボタンを押し始めておくのがポイント。
花火は開いたあとからも、種類によってさまざまな表情があります。1回の花火でも多くの表情を捉えるために、ひたすらシャッターボタンを押しましょう。もちろん、肝心な時にメモリ不足で写真が撮れない、なんてことにならないようにディスクやカード容量に余裕があるかなどの確認も忘れてはいけません。
【連続撮影〜第一形態】
打ち上がりからすぐの花火。開いてからもひたすらシャッターを押す。
【連続撮影〜第二形態】
さらにシャッターを押し続けると花火にさらなる変化が。
【連続撮影〜第三形態】
さらにシャッターを押していると花火に変化が……。
【連続撮影〜最終形態】
これがこの花火の最終形態。とにかく慌てず丹念にシャッターを押し続けるとさまざまな変化を捉えることができます。ベストショットがどれになるのかは、撮影後にアルバムから探してみましょう。
②静止画にこだわらず、動画撮影も視野に入れる
蝶々やハートマークなどを描く「型物花火」は、自分側に開いてくれる運と、その開いた一瞬を捉えない限り、なにがなんだかわからなくなってしまうのが難点。上の写真では、そんな捕獲困難なキャラクター花火が夜空に羽ばたいた一瞬を捉えています。
実は上の写真は、動画撮影したものから静止画として保存したものです。最近では、静止画に迫るほどの高画質で動画が撮れるスマホも登場しています。どうしても失敗したくない、撮影に自信がないという人は最初から動画モードで撮影するというのも有効な方法なのです。
脇役の存在で花火をより良く魅せる上級テクニック
では、プロのカメラマンは花火大会をどういう風に撮影するのでしょう?
スマホで撮影するとき、つい「ピンチアウト(デジタルズーム)」機能を使って、花火そのものだけを撮っていませんか? ピンチアウトで撮影すると、そのぶん画像が粗くなりますし、あとから見返したときに、その場の感動がイマイチ残っていないと感じることがあります。実は花火の撮影は、花火そのものを撮影することだけが醍醐味ではありません。
【やりがちな作例】
そこで水面の反射、屋台など会場の情景、集まってきた人々など、風景そのものを写し込むように撮影することで、花火大会ならではの「雰囲気のある」ワンショットになるんですよ。
①花火を水面に映して、2倍キレイに写す
【水面を利用した作例】
花火以外の情景を写す場合、まずは構図を「上下」に分けて考えましょう。花火は当然上側になり、下側は当然、暗くなりがちですね。そこで下半分に光源となるもの、明るいものを写し込んでみるとバランスがよくなります。
そこでおすすめなのが、水面を鏡に映り込んだ花火自身の姿を情景に写し込む方法。多くの花火大会は、川や、湖の近くで開催されるので、ぜひそのシチュエーションを利用しましょう。
②手前のシチュエーションを生かして撮影する
花火そのものだけでなく、客船や遠くの建物などの背景と一緒に撮影し、そのときに見た情景そのものを切り取ることで、より思い出深い写真になります。
【客船など建造物を手前にした作例】
【手前に会場の賑わいを入れた作例】
先ほどの水面と同様、引いた構図では下側に明るいものを入れるのが基本。そこで花火大会会場の人だかりを入れてみたところ、会場の賑わいも写し取ることができました。
【手前に人のシルエットを入れた作例】
さらに、会場の混雑ぶりをさらに逆手に取った一枚がこれ。人のシルエットを手前に写し込むことで、まるでドラマのワンシーンのような雰囲気のある写真になりました。
打ち上げられた花火だけに捉われていると、こうした花火以外の要素は邪魔に感じて画角に入らないようにしてしまいがち。いっそ花火をメインではなく、背景と考えてみる。それぐらいに柔軟に考えてみれば結果的に「雰囲気のある花火の写真」が撮れるんです。
とはいえ、まずは花火を楽しみましょう
「人の目のように露出、ピントの調整、色の再現性に優れたレンズはどこにもありません。思い出のシーンは、スマホだけでなく自分の頭にも刻み込んで撮影を楽しんでください」……こちらがカメラマンからの最終アドバイス。確かにシャッターチャンスを狙いつづけた結果、花火そのものを楽しまなくては本末転倒ですよね。
花火大会が開かれているのは1年のうちでもごく限られた機会ですからね。レンズを通してだけでなく自分の目、そして耳と肌で夏の夜空に広がる花火を感じてください!
■今回の花火写真 撮影例一覧(すべてGalaxy S8で撮影です)
文:のび@び助
写真・監修:遠藤貴也