2016/12/20

祝シリーズ5位獲得! 『SUPER GT』LEXUS TEAM TOM'SのドライバーがKDDIにやってきた

右・伊藤大輔選手。プロドライバー歴20年以上、SUPRE GTでの年間チャンピオン経験を持ち、優勝回数は10回以上という凄腕。
左・Nick Cassidy(ニック・キャシディ)選手。ニュージーランド出身。昨年の全日本F3チャンピオンから今年SUPER GTデビュー

市販車をベースに完全レース仕様にしたマシンで、トヨタ(LEXUS)・日産・ホンダの3メーカーがしのぎを削る国内最高峰のレース「SUPER GT」。その魅力と、KDDIがLEXUSチームを通信のチカラで支えているという話題については以前、「通信のチカラ」でも取り上げた。

参考記事:国内最高峰のレース「SUPER GT」。LEXUS TEAM TOM'Sを支えているのは「通信のチカラ」でした

「エンジンの回転数」「サスペンションの挙動」「スピード」「加速度」といったレーシングカーのデータと、「タイム」「ラップタイム」やコースの区間で取った「セクタータイム」、「気温、路面温度」、「気圧」、「風速」などなど、ピット側でのデータをリアルタイムでクラウドに上げるネットワークの構築に協力しているのだ。

2016年の「SUPER GT」は、11月の「ツインリンクもてぎ」での2連戦をもって閉幕。LEXUS TEAM SARDの年間優勝をはじめ、LEXUSチームはベスト6に5台が入る大健闘ぶりを見せ、auがスポンサードするLEXUS TEAM TOM'Sは今シーズン、シリーズ5位を獲得した。

ボンネットにオレンジ色のロゴを戴いて激走した同チーム36号車のドライバー、伊藤大輔選手とニック・キャシディ選手がシーズンの終了報告にKDDI本社に訪問。さっそくお話を聞いてみた。

「ひと言で言うとファミリーチックなチームですね」(伊藤)

宣伝部長とのフォトセッションと挨拶を済ませ、KDDI本社にある携帯端末のアーカイブを眺める2人。「これ、ニュージーランドで見たよ!」とか、「俺は確かIDOだったよ」なんて端末の思い出話に花を咲かせる。「あ、これこれ」と、1996年発売のT211を手にする伊藤選手に「ダイスケ、当時30歳ぐらい?」とニック。「違うわ! ハタチじゃ!」と返す伊藤選手。

LEXUS TEAM TOM'Sの印象を尋ねると、「ひと言で言うとファミリーチックです」と伊藤選手。なるほど!

伊藤「会長の舘さんはもともとレーシングドライバーで、みんなを引っ張っていく力と、本当に家族のようにみんなをまとめる力を持った人。だからチームが一丸となって一つの方向に向かいやすい雰囲気を持っています」

ニック「僕自身は、去年も同じTOM'Sだったけど、フォーミュラ3に参戦していて、今年はまったく新しいメンバーのなかに入ったので、最初は正直、溶け込むのに時間がかかった気がする」

伊藤「ドライバーもオーナーも監督もエンジニアもメカニックもチームマネジャーも、それぞれが自分の仕事に集中して取り組む。家族っぽいけどプロだからね」

ニック「僕は、SUPER GTのルーキーイヤーでプレッシャーもあったからね。そんななかでもきちんと結果を出していくことで信頼を得られたと思う」

「最初の年に年間(シリーズランキング)5位を獲得したのはすごく嬉しかったよ」(ニック)

SUPER GTは全8戦。開幕戦の岡山国際サーキットでは8位、第2戦の富士スピードウェイでは4位に入るも、続くスポーツランドSUGOでは11位に終わり、序盤戦は安定しなかったものの、最終的には年間5位に食い込んだ。今年はどんな1年だったのだろう?

伊藤「僕自身はTOM'SでGTを走るのは4年目で、パートナーがニックになって体制も新しくなって。でも序盤に関しては苦しかったね」

ニック「シャシーに問題があったんだよね。僕はこれまでフォーミュラーカーにばかり乗っていて、市販車ベースのGT500へのエントリーは大きなチャレンジだった。それで最初の年に年間5位に入れたのはすごく嬉しかったよ」

伊藤「しぶとくポイントを取ったから、中盤戦から巻き返していけたよね。第6戦の鈴鹿では今季最高の2位に入ることもできた。もちろんタイトル争いに絡んでいきたかったし、LEXUSが上位を固めているので、LEXUSのなかでトップにもなりたかったけど、全体的にはいい感じにまとめられた1年だったかな」

「ドライバーのフィーリングをすぐにデータと参照できるのがすごく便利」(伊藤)

そんななかで、今季から構築されたKDDIによるクラウドネットワークはドライバーにとってどんな武器になったのかというと・・・・・・。

伊藤「僕らって走行後にエンジニアと会話をするんですよ。同じタイヤを使ってる違うLEXUSチームのデータを見ながら、"あっちは今こういう状態で走ってラップタイムがこう変化してる。じゃあうちはこういうふうにしない?"みたいなことを。今年になるまで、マシンを降りてすぐそんな話はできませんでした。それをするには、全チームのタイムとデータを手元にかき集めてドライバーのところに集めないといけない。タイムラグが生じてたんです」

ニック「1日後とかね。データ自体は前から活用してたんだけど、マシンを降りて即座に見ながら現状を認識できるのは大きいよね」

伊藤「練習走行を終えて予選の前にどういうセットアップをするか、走ってみたドライバーのフィーリングをすぐにデータと照らし合わせて話せるのがすごく便利」

ニック「実際にドライビングが変わるというよりは、走ったあとにデータシステムを振り返ってどういうコンディションで走っていたのか、自分の走行記録を見て"復習"できる感じ。同じようなセッティングで走っていたほかのドライバーと比べて、じゃあ僕の出来栄えはどうだったのかを考えられるようになったので、非常に勉強になりますね」

伊藤「そこからレースに向けてやるべきこと、どういうセッティングにしていくのがいいかを認識しやすくなるしね。まあ、いくら情報を得ても、最終的にレースで自分たちのパフォーマンスを上げられるかどうかは、それをどうやって生かせるかなんですけどね(笑)」

「今年はダイスケから非常にたくさんのことを学びました」(ニック)
「その通り(笑)」(伊藤)

LEXUS TEAM TOM'Sのお2人、終始フレンドリー。取材班には丁寧に礼儀正しく答えながら、お互い時々辛辣に突っ込み合ったり、微笑みあったり。非常にいいチーム感が溢れている。「ルーキーイヤーとしては、この成績はまずまずなんですけど、もっと上に行けたかな」とニックが言えば「俺もそう思う」と伊藤選手が応じる。

ニック「でも、なにより今年はダイスケから非常にたくさんの事を学びました」

伊藤「その通り(笑)」

お互い、どんな関係なのかを聞いてみると「兄貴かな」「年の離れた弟みたい」と2人。

ニック「レースのパフォーマンスとか、チームの一員としてはすごく模範的な存在だと思ってます。あとそれよりも、マシンを降りてからのことをいろいろ教わってて」

伊藤「走ることに関してはすごくポテンシャルが高いので、心配はしてないんです。今年すごくたくさんのことを習得したと思ってるし。だから僕が注意してるのは"GTのプロドライバー"という姿勢について。日本最高峰の、世界でも人気の高いレースですから、普段の生活でも自分の立ち位置をきちんと意識して行動しなさいよ、と。ね?」

ニック「アリガトウ(笑)」

最後にそんな二人からスペシャルメッセージ。

文:武田篤典
撮影:稲田 平

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