2015/05/28

【基地局探訪記 その3】トリコローレ・イタリアーノに彩られた基地局を訪ねて

スマホやケータイは電波でネットワークとつながっている。その中継地点となっているのが「基地局」だ。全国にある基地局の多くは電柱のようなコンクリート柱や鉄塔にアンテナを付けたオーソドックスな形をしているが、なかには個性的な特徴をもったものもある。こちらの連載では、TIME & SPACE編集部が各地をめぐり、そういった「変わりダネ基地局」紹介していきます。

イタリア三色旗と隣接するトリコローレの基地局

ということで、今回訪ねたのは広島市西部の高台にある新興住宅地だ。
ここには「緑・白・赤」のイタリア三色旗、トリコローレに包まれたイタリアーノな基地局があるという
百聞は一見に如かず。編集部が現地を訪ねてパチリと収めた写真がこちらだ。隣には、イタリア三色旗そのものがはためいている。

風にはためくイタリア三色旗の横で、じっと佇むトリコローレの基地局。支柱下部が赤、支柱が白、支柱上部が緑に彩られているのがわかる

こちらは、10年ほど前にオープンした人気のイタリアンレストランの敷地内に設置された基地局。店は山肌の中腹にあり、広島市の中心部とその向こうに広がる瀬戸内の島々を一望することができる(この日は曇っていたのが残念......)。

基地局周辺からの眺望。晴れていると、遠くの瀬戸内の島々まで見渡せるのだとか

イタリアの職人から教わった技術で、スタッフ自らモッツァレラチーズをつくり、手作りの石窯でピザを焼き上げる

こちらのイタリアンレストラン、地元では有名な人気店。イタリアのチーズ職人を招いて技術を教わり、店内でモッツァレラチーズをつくり、自分たちで組み上げた石窯でピザを焼く。このこだわりと店内からの素晴らしい眺望が、大きな人気のヒミツだ。

基地局がトリコローレになったわけ

基地局が設置されたのは、この店の駐車場の一画。そのときの経緯を、レストラン店長の道浜さんは次のように振り返る。

「オープン当時は、住宅街のいちばん奥に店を構えたつもりでしたが、店を作ってしばらくすると、店よりも上にある土地にも戸建ての住宅や団地が建てられるようになりました。それで電波が入りにくくなったのか、KDDIの方が訪ねてこられて、ここに基地局をつくることになったんです」

それが2012年のこと。KDDIが高台の新興住宅地内を調査した結果、この店の駐車場が基地局の立地としてベストと判断され、店との協議のうえで建設が決まった。その際、コンクリート柱を店の敷地内に建てるのは味気ないとの理由で、「赤・白・緑」の3色で彩ることになったのだという。

取材の合間に時折顔を出す太陽の光を浴び、トリコローレのイタリア国旗も基地局も色鮮やか

三色旗の「緑・白・赤」が意味するところは諸説あるものの、一般的には、緑が「美しい国土」、白が「アルプスの雪・正義・平和」、赤が「愛国者の赤い血・熱血」を表すとされる。それになぞらえて......というわけではないけれど、トリコローレの基地局も、単に三色に塗ったわけではなく、機能ごとに色を塗り分けている。

基地局のてっぺん、緑に塗られた箇所は、ケータイに向けて電波を飛ばし、ケータイからの電波を受信する「アンテナ」装置だ。細長い筒状のものと正方形をしたものの2つがあり、この両方が「アンテナ」で、電波を飛ばす特性の違いによって形状にも違いが出るのだという。地面と接する赤い部分は、電波をつくる「無線機」や、電源はじめ各種の制御装置を収納する。緑と赤をつなぐ白い柱は、「アンテナ」を支え、「アンテナ」と「無線機」をつなぐ支柱だ。「無線機」でつくられた電波は、支柱沿いに上まで延びるケーブルを伝い、「アンテナ」から空中へ放射される。

アンテナは緑、支柱は白、無線機や各種の制御装置の収納ケースは赤。色のおかげで、基地局の機能も分かりやすい!?

誰でも自由にサクサクモバイル

基地局の真下、店の駐車場で通信速度を測ってみると、4G LTEで下り46Mbpsを記録した。快適な通信環境といえるだろう。

KDDIの担当者によれば、「この基地局ひとつで、電話なら大人数が同時に通話しても十分まかなえます」とのこと。レストラン付近にある住宅地はこの基地局ひとつでカバーしており、誰でも自由にモバイル通信を楽しめるわけだ。

ちなみに、三色旗の本家は「青・白・赤」のフランス国旗のトリコロールとされる。それには、フランス革命で掲げられた「自由・平等・博愛(友愛)」の意味も込められており、イタリア三色旗もその意味を受け継いでいるという。

ケータイも、サクサク自由に誰でも使えて、いろんな人と仲良くつながって......。ん? これってまさしく「自由・平等・博愛(友愛)」そのものでは?? 通信って、実はフランス革命とつながってるのかも......と思った広島取材旅行であった。

文:萱原正嗣 撮影:有坂政晴(STUH)

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