KDDI NEWS

2017/09/22

海上自衛隊に所属する砕氷艦『しらせ』がカッコよすぎ 超レア乗船体験を詳細レビュー

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まずはこれを見ていただきたい。

砕氷艦「しらせ」である。

TIME & SPACEの連載「南極が勤務地です! 2017」で南極からのリポートを送っているKDDIの笹栗隆司も、この船で南極に入った。(というかこれ、笹栗が撮った写真です)

こちらは昭和基地から直線距離で1万4,000km離れた千葉県・船橋港。8月下旬の風景である。

昨年11月に東京を出発し、物資と観測隊員を南極に送り届けて、前年の観測隊員を回収、今年3月に日本に帰ってきた。所属は海上自衛隊、横須賀が母港である。そんな「しらせ」がなぜ、船橋港までやってきたのか? それは……

この「SHIRASE」と会うためなのである。

写真をよく見ていただきたい。南極から帰ってきた「しらせ」より角張ってて、面構えがちょっとイカツイ。で、現役「しらせ」が「5003」なのに対してこちらは「5002」。そう、こちらは先代「しらせ」。1982年11月から、2008年7月末まで、砕氷船として南極に観測隊を送り届けてきたパイセンなのである。現在の正しい船の名前は「SHIRASE」(ちなみに艦長の表記も「KANCHO」だ!)。

実は退役後、再利用に関して様々な案が出されたが断念、一度はスクラップになることが決定していたという。翌2009年になって、この船に関わってきた人々と、民間の気象情報会社「ウェザーニューズ」が熱意を持って「やっぱり潰すのはやめよう」と声を挙げ、南極地域観測統合推進本部は後利用に関して再公募。

最終的に引き渡し先は「ウェザーニューズ」に決定し、2010年から地球環境の様々なデータを取り発信する場として現役船として活用されきたが、現在は同社の創業者が設立した一般財団法人WNI気象文化創造センターに所有権を移転し、地域の人々や縁のある方々の協力を得て運用されている。年5回「チャレンジングSHIRASE」と題して、艦内で南極観測の成果や気象、環境にまつわる各種イベントを開き、子どもたちの南極への、地球全体への、興味喚起を図っている。

そしてこの日開催された、「チャレンジングSHIRASE 2017第3回 〜再会 『SHIRASE』×『しらせ』〜」で、新旧2隻が6年ぶりに再会したのである。

撮影/(一財)WNI気象文化創造センター

「しらせ」と「SHIRASE」、どう違うのか。

上でも触れたように、見た目の大きな違いは船首の丸みだ。

現役しらせが丸みを帯びているのに対し、先代「SHIRASE」のほうが先端がナイフみたいに尖っていて、氷を砕くのに向いてそうな気がするのだが、実はこの丸っこい曲面構造だからこそ、氷にツルッと乗り上げやすく、自重で割ることができるのだという。

あと、先端にポツポツ空いた「穴」。

これも先代「SHIRASE」にはないもので、「融雪用散水装置」という。文字通り、ここから水をまいて氷上に積もってクッション状になった雪を融かしながら、ツルッと乗っかって割り進むのだという。この装置のおかげで、砕氷の効率が約15%アップしたらしい。

いざ、乗船!

今回のイベントでは新旧「しらせ」に乗船することができた。現役「しらせ」は基本的には、常にどこかを航海しているので、乗船は超レアなチャンス。まずはデッキから見ていこう。

満面の笑みで「しらせ」を案内してくれたのは、船務長の上野裕二さん。まず目につくのはデッキに鎮座している大きなコンテナだ。南極へは、全部自分たちで調達して持っていかねばならない。「しらせ」ネーム入りコンテナサイズは国際規格の12フィート(約3.6メートル)で、積載数は左舷と右舷で56個。積載能力は10%ほどアップしているとか。

こちらはブリッジ。赤い椅子は艦長の席。「しらせ」は海上自衛隊に所属しており、乗組員も自衛官だ。シートの色は艦長の階級を表していて、赤一色の場合は「一等海佐」なんだそうです。

艦長目線! こんな風景が見えるのだ! 「しらせ」から「SHIRASE」を見渡すという贅沢!

笹栗が撮影した「しらせ」作業中の画像で、がっつり稼働しているデッキクレーンも間近で見られた。

でかいっ!!!! 船の前後に2基ずつ設置。物資を積み下ろしするのに使うわけですが、コンテナで輸送することができるようになり、作業効率も大幅にアップしたという。

「しらせ」のメインの展示スペースは格納庫。イベントではなかったが、普段はヘリを2機格納しておくことができる大きな空間だ。

オフィシャルグッズの販売や、船のそもそものスペック展示などは大人のみなさんに人気。ペンギンとの記念写真と、南極の氷は子どもたちに人気でした。

この日のイベントでは船内格納庫にスノーモービル「しらせ1号」が展示され、試乗することができた。これには参加したチビッコも大喜び! 白夜の氷床を疾走するスノーモービルに思いを馳せる筆者も大喜び!

笹栗が人文字を作ったり剣道をしてリフレッシュしたのも、この広いデッキだ。

船内の様子は?

現役「しらせ」では、実は定員数もアップしている。先代「SHIRASE」が乗組員170名(観測隊員60名)に対し、現役「しらせ」は乗組員179名(観測隊員80名)。

左は現役「しらせ」の居住区画。定員は基本1室2名。で、右は先代「SHIRASE」の居住空間。10人部屋が中心らしい。什器は木造だし、比べてみると。現役艦のほうが超快適に見える……と思っていたら、現役「しらせ」のほうは観測隊員の部屋で、先代「SHIRASE」は乗員の部屋だと上野さんが説明してくれた。両方の艦を経験した乗員によると、現役「しらせ」の乗員用の部屋も、広さはあんまり変わらないとのこと。ただ、什器は全部スチールになったらしいけど。

こちらは床屋さん。本職の美容師さんたちが乗船しているわけではないので、手の空いた乗員が切るという仕組みらしい。技術があるわけではないので、虎刈りになる人続出だとか。

あと、立派な神棚もありました。

富士山を御神体として祀っていて、頂上に奥宮がある富士山本宮浅間大社から毎年お札をもらってきて祀っているのだという。先代の「SHIRASE」のみならず、さらにその先代の南極観測船「ふじ」の時代から、浅間大社は船内にあったらしい。ちなみに「ふじ」の時代には、持ち帰った南極の石を浅間大社に奉納したこともあるそうだ。

KDDIも船上イベントを開催しました

さて、今回はKDDIも「チャレンジングSHIRASE」に協賛。この日も、「SHIRASE」のほうで、「スマホでのぞく南極の世界」というイベントを行いました。

南極にまつわるクイズを5問出題。受付で回答用紙とスマホを受け取ると、昭和基地のパネルの前にたたずむわけです。パネル上には「な」「ん」「き」「よ」「く」という5つのアイコン。ここにARアプリ「SATCH VIEWER」をスマホでかざせば、右の写真みたいにクイズのヒントが得られる仕組み。

また、第54次南極地域観測隊越冬隊に参加し、2012年11月から14か月にわたって南極・昭和基地に赴任していたKDDI社員の大越崇文によるトークも。

「昭和基地は島である」とか「昭和基地で観測されたデータは地上4万kmのインテルサット通信衛星を経由して日本とやり取りされる」とか「天気の状態やオーロラの写真を国立極地研究所に送るのも重要だけど、通信は隊員と家族をつなぐ大切な絆」とか「アデリーペンギンの足の裏の色」などの話を軽妙に展開。8万枚撮ってきたという写真も駆使した説明で、子どもたちも興味津々。かなり盛り上がってました。「経験」してきた人間の説得力は違います。

「KDDIはそもそも昭和基地のネットワークや衛星通信の保守のために、2005年から国立極地研究所に毎年1人出向し、南極に派遣してきました。昭和基地で越冬するのっておおよそ30人の世界なんですね。だから、みんなでやれることをやる場なんです。

もちろんそれぞれに専門分野を持つプロが集まってるんですが、なんでも手伝う。つねに感覚として“I”ではなく“We”。よそでは体験できないことをいっぱい学びました。だから僕は“しらせ大学”とか“南極大学”って呼んでるんです」(大越)

イベント後、大越に「また行きたいですか?」と尋ねると、「行くというより、帰るんです。南極にはすべての思いを残してきていますから」と笑顔。通信インフラの保守運用に対する使命感はもちろんだけど、業務を超えたこんな熱い思いが南極との関係を支えているのかもしれない。そして「南極へのロマン」は、この日のイベントに集まったさまざまな世代に受け継がれていくことを実感しました。

文:武田篤典
撮影:稲田 平

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