2017/06/19

IoTマンゴー栽培で名産を守れ! 農業を見える化した宮古島とKDDIの取り組みとは

記録的な不作に見舞われた宮古島マンゴー

独特な香りと濃厚な甘み、そしてなめらかな口当たりで老若男女問わず人気のフルーツ、マンゴー。日本で流通しているマンゴーは、かつてはほぼ海外からの輸入だったが、近年は国内の生産量が増加傾向にある。

国内の生産地は一般的に宮崎県が有名だが、実は生産量国内1位は沖縄県であり、市町村別では宮古島が日本一の生産量を誇っている。亜熱帯の太陽の恵みを受けた宮古島産のマンゴーは糖度も風味も格別。なかには青果市場において高級品として珍重されているブランド銘柄もある。

そんなマンゴーを生産する宮古島の農家は、ある課題を抱えていた。マンゴー栽培は非常に高コストであり、また高付加価値なフルーツのため、ひとたび異常気象や日照不足などが発生し、その影響で生産ロスが起きると、それが即収入減に結びついてしまうのだ。実際、2016年は長雨と日照不足により、沖縄のマンゴーの生産量は前年比4割減という深刻な状況に陥った。

マンゴー生産の課題解決にIoTを活用

そういった課題を解決し、マンゴーを安定して生産していくため、KDDI、沖縄セルラー電話、スカイディスク、琉球大学は、2017年4月、宮古島においてIoTを活用したマンゴー栽培の実証実験を開始した。IoTとマンゴーの生産量の改善に、どのような関連があるのだろうか?

IoTを活用したマンゴー栽培の実証実験が行われる沖縄県宮古島の長北ファーム
左から、KDDIソリューション事業本部 森 敬一、スカイディスク代表取締役 橋本 司さん、沖縄セルラー事業開発部 國吉博樹、琉球大学研究推進機構 殿岡裕樹さん、琉球大学工学部 玉城史朗さん、長北ファーム 菅原純一さん

この実証実験では、マンゴー栽培にIoTを活用し、マンゴー栽培の課題であるハウス内の異常高温や低温、乾燥、高湿度、日照不足、生育不足といった栽培状況をセンサーによって自動で測定でき、そのデータを無線LANを通じてタブレットで監視できるほか、ハウス内の状況に応じてLED補光や二酸化炭素の局所添加で補い、マンゴーの栽生育不良の改善、増収、栽培期間の短縮化を目指す。

ハウス内の異常高温や低温、乾燥、高湿度、日照不足などのデータを観測するIoTセンサーデバイス
観測したデータはスマホやタブレットで確認。異常値を検知した際にも通知されるため、不測の事態においてリアルタイムに対応することができる

マンゴー生産の現場である長北ファームの菅原純一さんは、IoTの活用に大きな期待を寄せる。

「マンゴーの生産は天候に左右されるところが大きいんです。特に昨年は日照が少なく、長雨が続いたため、生産量が大幅に減少し、楽しみにしていたお客様にはご迷惑をおかけしました。私たち農家は、これまでの経験や感覚を頼りにしがちですが、それがきちんとデータとして蓄積されて、見える化されることで、安定生産につながることを期待したいですね」

農業のほか漁業や住宅など様々な分野への応用が進むIoT。今回のKDDI、沖縄セルラー電話、株式会社スカイディスク、琉球大学による実証実験はまだ始まったばかりであり、その可能性は未知数だが、高品質な宮古島産マンゴーの生産が安定し、より手に入りやすくなるとしたら、消費者としてもうれしい限り。四者による取り組みの今後の成果を楽しみに待ちたい。

文:TIME & SPACE編集部

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