2017/06/14
世界初「空いてるルート」を案内する乗換アプリを使ってみた
おそらく使っている人にとっては手放せない必須アプリのひとつ、経路検索サービスである。行きたい場所への最適なルートや交通手段、所要時間、料金などを瞬時に教えてくれる頼もしいヤツだ。
それがauナビウォーク。ある日、埼玉県の大宮駅から東京の表参道駅までのルートを検索した。午前8時17分に大宮駅を出発し、表参道駅を目指す。検索の際には「時間短い順」「運賃安い順」「乗り換え少ない順」から「CO2少ない順」まで、さまざまな条件設定ができる。
上の写真は「運賃安い順」で検索して、いちばん上に出てきたルート。機械的にこのルートに従えば、大宮から表参道までいちばん安く、早く到達できるということになる。
最短ルートだけでなく「混雑を避けたルート」だと!?
一方、下の画像(左)は「時間短い順」という条件で検索した結果。いちばん上に表示されている「8:20→9:11」が、もっとも短い時間で大宮駅→表参道駅間を移動できるルートなのだ。所要時間51分、乗り換え2回。その隣のアイコンは混雑度を表しているもの。
ほうほう、黄色なのね。ここで下の右の画像をご参照いただきたい。混雑度:黄色。つまり「混んでいる。圧迫感があります」なのである。
首都圏の各駅でコツコツ調べた混雑状況と、5年に1度国交省が実施する電車の乗客の移動実態調査「大都市交通センサス」を使って作った移動需要データを経路検索エンジンにかけ、朝のラッシュ時に電車に乗る首都圏の約800万人が、それぞれどの電車に乗るのか、その電車には何人乗っているのかを推定するらしい。
ここで今一度、左の画像をご覧いただきたい。「混雑を避けたルート」っていうのがある。「混雑度」自体は、昨年4月から提供し始めたが、この仕組みを一歩進めたサービスがこれ。この「混雑を避けたルート」を詳しく見ていくと、
「8:21→9:25」。
所要時間1時間4分、乗り換え1回。
混雑度を表すアイコンは・・・・・・ブルー!「座れる〜座席に空きがあります」なのである。すなわち、「最速ではないけど、ちょいと時間をずらすだけで目的地まで座って移動できちゃいますよ」の提案。
折しも今年2月、東京では小池百合子都知事が「快適通勤ムーブメント」を発表した。夏以降をめどに、企業に時差出勤やフレックスタイム、テレワークなどを導入することを促し、都内の通勤環境を快適にしていこうとしている。そんな折、世界初、 今年3月から始まったサービスである。
どうやら「auナビウォーク」を使えば、個人的に「快適通勤」が実践できそうだ。「混んでても早く行きたい」のか、「少々遅くても楽に行きたい」のかは、時々の状況次第なんだけど、「混雑を避けたルート」に乗れば、たった数分〜十数分の違いで本当に座って移動することができるのか?
ということで、検索結果をなぞってみることにした。被験者はオレたち。「TIME & SPACE」編集部のタケダ(左)と、同じくNo.1若手のハラダ(右)。5月のある日、朝7時30分に大宮駅に集合した。ここから、検索結果として出た「最短ルート」と「混雑を避けたルート」で、それぞれ表参道駅を目指すのだ。
ただし問題がひとつある。一般の方が乗っている電車の中での撮影はNGだ。混雑度の違いをこの記事上でエレガントに表現する方法はないだろうか・・・・・・?
そうだ! 折り紙だ!
大宮駅前で2人が持つ白いペラッペラのショッピングバッグには折り鶴が入っていた。「最短ルート」と「混雑を避けたルート」それぞれ50羽ずつ。
ペラッペラな素材&マチが一切ないというバッグの形状によって、内容物は外圧の影響を受けやすい。外圧がない場合、折り紙はもちろんその状態を保持できる。つまり電車が混んでいれば、鶴たちはなんらかのダメージを受け、空いていれば無事。そう、これは世界初の「電車混雑折り鶴ベンチマークテスト」なのだ!
鶴ぐらい楽勝と見くびっていたが、完全に折り方を忘れ、YouTubeを見ながらなんとか50羽を折り終えた2人。そして舞台は早朝の大宮駅へと戻る。
7時30分に集合して、ここで改めて8時17分大宮駅発表参道駅行きの経路を検索する。各々のルートは下の通りだ。
ハラダは大宮駅から上野東京ライン(混雑度:黄色/混んでいる)に乗り、赤羽駅で埼京線(混雑度:オレンジ/身動きできない)に乗り換える。渋谷駅から表参道駅は銀座線で一駅。ここは混雑度ブルー(座れる)だ。
一方タケダは、大宮駅から埼京線で乗り換えなしで渋谷駅まで。混雑度はブルー(座れる)。発車時刻の差はわずか1分。混雑度にこんなに違いが出るのは、タケダの乗る埼京線が「大宮始発」だから。
地元で、普段からこの路線を使用している人にはわかりきった話かもしれないが、仕事などでたまたま訪れる人にとって「ちょっと待ったらその駅始発で座っていける」と知らせてくれるのはとてもありがたい。
「イッテキマース」「いってらっしゃーい」。見送り、見送られる出発というのはいいものだ。ずぶ濡れだけど。で、ハラダを見送った1分後、タケダも出発。
そして約1時間後。東京メトロ・表参道駅。
通常、通勤時に座れる確率が高いらしく、慣れない満員電車にもまれてグッタリしているハラダに対し、14分後、さわやかな表情で到着したタケダ。ハラダの表情は少々オーバーな気がするが、少なくともタケダのさわやかさは本物だ。
さて、われわれが一所懸命折った鶴たちの安否をご覧いただこう。
タケダ鶴
ハラダ鶴
タケダ鶴=全羽無傷
ハラダ鶴=無傷:8羽、脱臼:24羽、骨折:18羽
なお折り鶴における脱臼の定義は「開いてあった羽がたたまれてしまった状態」とする。また骨折については「折り目ではない部分で首や羽が折れてしまった状態」とする。今後、折り鶴ベンチマークテスト案件が発生した時に備えて、こうした定義は必要だろう。
結果的に、非常に極端に差が出たが、それも無理からぬこと。
どんなふうに混雑し、どんなふうに避けたのか。
なにしろ、「混雑を避けたルート」を選択したタケダは大宮駅から渋谷駅までの55分間を、座って旅してきたのだから。折り鶴の袋は終始ひざの上。
一方「最短ルート」のハラダは、auナビウォークでは「身動きできない。体の向きを変えるのが困難です」という混雑度オレンジの埼京線で、激流に翻弄される落ち葉のような21分間を過ごした。
車内での撮影ができないので、プロフェッショナルの法廷画家の方に車内の再現画像を制作してもらった。
〈タケダルート再現図〉
<タケダの証言>
t「始発待ちの人が結構いるかと思って、発車の10分前にホームに行ったらわりと空き空きでした。3〜4分後には電車が来てすぐ座れました。発車の時に立ってる人は15〜16人ぐらい。各駅停車だから、毎駅で乗り降りする人が多くて、車両内が満員になることはなかなかなかったです。僕の座った席の前はずーっと空いていたので、圧迫感も一切ありませんでした。大宮から6駅目の北戸田駅あたりで前に人が立ちはじめましたが、全体的にはちょっとした旅行気分が楽しめました。」
〈ハラダルート再現図〉
<ハラダの証言>
h「座るとか、全然! つり革さえ持てない状態で、人が降りたり乗ったりしてくるたびに翻弄されてました。ずーっとギューギューでしたけど、赤羽駅で埼京線に乗り換えた時が特にヤバかったです。バッグに入っているのが折り鶴じゃなくてベネチアングラスとかケーキだったらと思うと・・・・・・。いやあああ、しんどかったっす。」
そんなわけで「混雑を避けたルート」を選択すれば、かなり高い精度で「混雑を回避」できるということがわかった。早く着きたい時には従来通りのルートを選べばよいし、「時間があるから楽に移動したい」とか、「睡眠不足を少し解消しておきたい」なんて時には「混雑を避けたルート」を選ぶのもよいだろう。もちろん、ベネチアングラスとかケーキを運搬する時にはなおさらである。
文:武田篤典
撮影:竹内一将
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