2017/04/13
離島で生まれた『しまものマルシェ』の美味いもの3選! 黒糖、車えび、ごま油の誕生秘話に迫る
離島の地域活性化に向けて、離島地域の情報発信や教育サポートを行うKDDIの「しまものプロジェクト」。美味しい島の産品を届ける第1弾の「しまものマルシェ」に続き、第2弾では、離島事業者向けの教育サポート講座「しまものラボ」を開催した。その講座を経て、さらにパワーアップした日本の離島と"しまもの"の魅力に迫ります!
今回の舞台は鹿児島県の喜界島。鹿児島市から南に380km。島の周囲は48.6kmとこじんまりしているが、南国特有の透き通る海が美しい、サンゴ礁が隆起してできた島だ。
奄美大島から飛行機で向かった取材陣。降り立った喜界島空港の小さくてレトロな雰囲気に和みつつ、さっそく「しまものラボ」に参加した3つの事業者の工房へと向かう。
【喜界島工房編】黒糖の美味しさに惚れ込んで喜界島への移住を決意
まずは、黒糖作りを営む「喜界島工房」代表の杉俣紘二朗さんを訪ねる。杉俣さんは、26歳のときに東京から移住してきたIターン組。東京で参加していた自然食の会の活動の一環で、黒糖の生産現場を見学するべく喜界島へ。そこで、サトウキビとできたての純黒糖の美味しさに感動。2泊3日の滞在予定が数ヶ月間のアルバイトに延び、アルバイトをしながら自身でつくった黒糖を持参して帰京。それを友人に食べさせたときの「美味しい!」のひと言で、黒糖づくりの道へ進むことを決心したそう。
それが2006年のこと。昔ながらの黒糖づくりを続ける岡田忠二さんに弟子入りし、サトウキビ栽培から収穫、製品化までを一貫して手がける。移住当初から有機肥料のみでサトウキビを栽培するなど農法や土壌にも配慮してつくられた黒糖は、「まるで和三盆のような、すっきりとした甘さ」と瞬く間に評判となり、2015年には「食」をテーマにしたミラノ国際博覧会に出品されるまでとなった。
杉俣さんが理想としているのは「サトウキビをかじった時の味のような黒糖」だ。
「サトウキビにかじりついたときの自然の風味や透き通った甘さを目指しています。喜界島の畑はミネラル分を豊富に含んだサンゴの土壌なので、それを上手に使う農法やサトウキビの品種と組み合わせれば、もっと美味しくなるはず。そのために無農薬の畑を増やしたりなどいろいろ試していますが、いまだ試行錯誤中なんですよ(笑)」
百聞は一味(?)にしかず、というわけで、できたての黒糖をいただくことに。一般的な黒糖と違って、やや白っぽい薄茶色をしているのは「化学肥料が減った畑からできたサトウキビほど、こういう白っぽい色になる」のだそう。口に入れると、う、うまい! すーっと体に染みていくようなすっきりした甘さで、舌に残る苦みや雑味は一切ない。口溶けもよく、後口もすっきり。息子の駿くんや克磨くんが積極的に黒糖づくりを手伝うのも納得だ。杉俣さんいわく「子どもたちが手伝い始めたきっかけは、黒糖をつまみ食いしたかったから(笑)」とか。
■「しまものラボ」で、「純黒糖」の魅力を伝える重要性を確認
世界的な評価も高い黒糖だが意外にも認知度は低い。「『しまものラボ』で実施したアンケートでは、『純黒糖』を知らない人が7割近くに及ぶことが判明しました。認知度が低いということは、逆に言えばそれだけアピールできる素地があるということ。そのために、キャッチフレーズやパッケージデザインを含め、商品情報を整理して届けることが重要な課題だとわかり、良かったです」と杉俣さん。
ブランドコンサルタントの松田龍太郎氏による講座を、真剣に聞き入る参加者
この「しまものラボ」は、離島で食品製造を行う事業者を対象にした、全5回の販路拡大・商品PR基礎講座。流通販売や商品づくりのプロを招き、auユーザーによるテストマーケティングなどを活用しながら、自身の商品のアピールポイントや課題を見つけてもらうのが目的だ。同時に、商品の魅力を伝えるコピーや動画制作の知識を深め、情報発信力を高めてもらうという内容。
さて、どんなものができ上がったかは、ぜひ「しまものマルシェ」でご覧あれ。
〈喜界島の宝石箱 黒糖・黒糖ナッツ詰め合わせ〉
完熟した「旬のサトウキビ」だけでつくられた黒糖とナッツなどの詰め合わせ。
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【ミネックス編】オバマ前大統領も食した車えびの実力とは!?
続いて向かった先は、「株式会社ミネックス」。取締役専務、峰山恵喜光さんが車えび養殖池で迎えてくれた。近年、喜界島の車えびは注目を集めており、2014年の安倍晋三首相とオバマ前アメリカ大統領との夕食会では、ミネックスの活車えびが選ばれたのだそう。
「喜界島は隆起サンゴの島で山や川がないため、赤土の流出がなく、周囲の海水はきれいでミネラルが豊富です。この海水を利用した島の産品をつくりたいという思いで、祖父の代から車えび養殖を手がけています。車えびは、活きの良さやぷりっとした食感がなによりも大事なので、そのための環境作りにこだわっています」と語る峰山さん。取り入れたのは、「マイナスイオン餌」「目視での見回り」「液体凍結機」の3つだ。
マイナスイオン餌とは、マイナスイオンで不純物を徹底除去した餌のこと。「この餌を与えるようになってから、養殖池にヘドロが出にくくなり、理想的な車えびの生育環境がつくれるようになりました。また、5月には池の水を抜き、7月まで砂地を天日干しして日光消毒する『池干し』を行うことも、健やかな環境作りには欠かせません」と峰山さん。
養殖池に毎日"潜って"車えびの状態を確認
餌に配慮しているとはいえ、常にプランクトンを発生させている養殖池は透明度が低く、中で何が起きているか地上から確認することはできない。そこで、目視での見回りが必要なのだ。スタッフがダイビング機材を身に着けて、約7,000平方メートルもの広さの養殖池を毎日40〜50分かけて潜り、車えびや養殖池の点検やゴミの掃除を行っている。
「マイナスイオン餌を与える前は、毎日掃除を行っても追いつかないくらいゴミが出ることがありました。えびは夜行性なので、私たちが見回り点検を行う午前中や昼間は、本来なら砂に潜っています。なのに、砂の上に出ていることがある。そんなときは、"ああ、なにか異常が発生したんだ"と胸騒ぎを覚えたものでしたが、今はそんなことはなくなり、掃除も楽になりました」と、スタッフの福森春介さん。
ちなみに、車えびというと、おがくずに詰められた活車えびのイメージがあるが、実は冷凍車えびにも大きなメリットがあるという峰山さん。
「活車えびの出荷時期は11〜5月と限られていますが、旬の時期に冷凍すれば、1年中美味しい車えびを食べていただけます」
流水で解凍するだけで、新鮮な車えびが食べられる
そこで導入したのが、液体凍結機だ。真空パックにした車えびを、マイナス35℃に冷却されたアルコールに浸すことによって、わずか数分で完全凍結できる。これで、解凍してもほぼドリップが出ない高品質な冷凍が可能になったそう。もちろん、身はぷりっぷりのまま。刺身で食べられるほど新鮮さを保っているのがスゴい!
■アンケート結果をもとにレシピブックを作成
峰山さんが「しまものラボ」に参加したのは、「島外の方の客観的な意見が聞きたかった」から。auユーザーを対象にしたアンケートでは「もっとえびの料理法が知りたい」という声が多く挙がったことから、レシピブックを作成。パッケージも一新した。「車えび本来のプリっとした食感とやさしい甘みを味わえる料理ばかりです」と峰山さんが太鼓判を押すレシピで、車えびの美味しさを思う存分堪能してみよう。
〈活き〆冷凍くるまえび〉
海老の旨みを逃さず、解凍後は生で食せる贅沢な一品。
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【南村製糖編】これなら飲める!? さらりとした香り高いごま油
最後に訪れたのは、ごま油や黒糖をつくる「南村(なむら)製糖」の二代目、南村和弥さん。実は、喜界島は白ごまの生産量において日本一を誇る。しかも、「在来種ということもあってか、金ごまや黒ごまに比べて、白ごまは良質なものができるんです」と南村さん。
そんな南村さんがつくる白ごま油は、口に含むと、上品なごまの香りが鼻を抜け、とてもさらりとした口当たり。後味も軽やかで、まるでスープのようにすーっと喉を流れていく。これまで抱いていたごま油の印象が一変しそうな上品な香りと味わいが魅力だが、実は南村さん、当初はごま油づくりに消極的だったそう。
左から、母親のフサエさん、南村さん、父親の邦之さん
「母が乗り気だったので、とりあえずやってみようかと(苦笑)。それまでもごまは栽培していましたが、煎りごまやすりごまに加工していました。ごま油となると、焙煎や搾油、濾過などと作業工程が増えますし、搾油率はA級のごまでも3割未満、B級だと1割以下に下がります。ごまの含油率自体は50%ほどなので、もっと搾ることはできますが雑味が出てしまう。手間がかかる割に、大きな利益が出るわけではないごま油を、わざわざつくらなくても・・・・・・というのが正直な思いでした」
ごま油納豆は、納豆が苦手な人も驚くおいしさ!
それでもつくり続けてきたのはなぜ? と尋ねると、南村さんは「私自身が、このごま油を好きになってしまいまして(笑)」と、にっこり。「香りだけなら煎りごまやすりごまで十分ですし、栄養面なら、ねりごまがいちばん。でも、島ごまのやさしい香りと甘さを同時に味わえるのは、やっぱりごま油。ごまの"いいとこどり"をしていて、油の甘みで、かける素材の旨みも引き出せるんです」。
南村さんがさまざまな料理に試した結果、和食と特に相性がいいことが判明。納豆にかけたり、味噌汁にひと回ししたりすると、お互いの香りと味わいを引き立て合い、おいしくなるのだそう。
■言語化することで、商品の良さを再発見
「対面販売のときにいろんな言葉で説明することがあったのですが、『しまものラボ』の講座で商品説明を言語化して、伝えたいメッセージを絞りこんだことで、あらためて商品の良さを発見できたことが収穫でした」と南村さん。また、講座内で得た知識をもとに作成した動画でプレゼンを行い、「あまみ島一番コンテスト」で、見事入賞を果たしたそう。
喜界町農産物加工センターでは、加工品の販売も
実は、南村さんがごま油をつくっているのは町が運営する「喜界町農産物加工センター」で、誰でも利用可能な施設だ。喜界町の農産物を、島の特産品として開発育成することを目的に、平成18年にオープンした。在来種の柑橘によるジャムづくりや、在来そらまめの皮剥きなどの加工作業にも利用されている。同センター主査の輝(てる)政和さんは、「在来種のごまや柑橘、そらまめは、島の先祖が大事に守ってきた宝物の素材。ここから喜界島ならではの、世界に誇れる特産物を発信していきたいです」と語る。
ちなみに、ごま関連の設備については、ごま洗浄機から焙煎機、常温かつ低圧力で時間をかけて油を搾る玉締め機と充実。しかし、同じ設備を使っていても、焙煎や搾油の具合で、ごま油の風味に大きな差が生じる。「ごまの状態によっても搾油の具合を変えるので、この作業は他人任せにはできません」と南村さん。経験を重ねることで生み出した、透明の美しいごま油はまさに絶品のひと言だ。
〈白胡麻油〉
生産量日本一の喜界島の白ごまを100%使用。浅煎りのごまから搾油した油は、高い香りと甘みが特徴です。(随時発売予定)
「しまものラボ」の継続を望む嬉しい声も
離島地域のIT利用を視野に入れた情報発信力を高める目的で開催された「しまものラボ」。KDDI CSR・環境推進室長の鳥光健太郎は、「1,500万人のauスマートパスユーザーの生の声を活用したテストマーケティングなどによる情報収集が強みのひとつだと思っていたので、事業者のみなさんにご活用いただけて良かったです」と話す。嬉しいことに喜界島の方々からは、「ほかにも意欲的な島の事業者はいるので、こうした講座を継続的に行ってほしい」「販売促進やマーケティングの専門家によるアドバイスをさらに増やしてほしい」などの要望も。「秋には、別の離島でも『しまものラボ』を開催する予定なので、みなさんの声を参考にしながら、さらに充実させたい」と意気込みを語ってくれた。
秋には、石垣沿いにずらりと収穫されたごまが干され、"セサミストリート"となる
島内の阿伝(あでん)集落に築かれたサンゴの石垣の路地では、まるで道案内をするかのように、"旅する蝶"のアサギマダラがひらひらと目の前を飛んでいった。また、喜界空港へ向かう途中に立ち寄った海岸では、沖合いで何度もジャンプするクジラの群れに遭遇!
南村さん宅のヤギ。島のあちこちで見られる
人はもちろん、自然さえやさしくフレンドリーな喜界島。そこから生まれる産品は、自然の恵みを凝縮した美味しいものであふれている。「しまものラボ」でさらに美味しくパワーアップした産品を、「しまものマルシェ」でぜひご堪能あれ。
取材協力:離島経済新聞
文:知井恵理
写真:有坂政晴(STUH)
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