2016/12/28
【賀正! 冬休みマンガ部】ブックパス4周年記念、年末年始だから読みたい! 大人のためのマンガ「オトマン」3本勝負
年の瀬も年の瀬、あと数日で新年を迎えるというある日、彼らは集った。TSマンガ部である。今回のメンバーは30代、40代のT&S編集部員。
2015年6月から各種マンガを読み漁ってきた。今回、久しぶりにこの部が招集されたのは、au公式の電子書籍ストアが4周年を迎え、2016年の年間ランキングが発表されたから。
定額制で好きなだけ読める「読み放題」と、1冊ずつ購入する「アラカルト」部門のランキングから気になるマンガをピックアップした。
今回のテーマは「お正月に読みたい"オトマン"」。つまり、大人のマンガである。語るのは、独身・子どもなし・自由人の30代と、既婚・子ども2人あり・コンサバティブな40代。どっしりと己の経験に照らし合わせて大人っぽく語るのである。
人のドス黒い怒りを、いい塩梅に解消してくれる
『善悪の屑』
30代H(以下30) 「これ、仕事の依頼の方式がなかなかだよね」
40代T(以下40) 「1話目の導入はちょっとドキドキした。街の小さな古本屋に来た客が、ある文庫本を差し出して『いくらですか?』と。そしたら『いくら出せるの?』。それが仕事の依頼の始まりっていう」
30 「それにしても、出てくるやつ出てくるやつ、屑すぎるよね」
40 「タイトルでも謳ってるけどさ」
30 「子どもは平気で殺すし、同級生をいじめ抜いて自殺に追い込むイジメ集団に、その責任を死んだ子に転嫁する屑教師とかね」
40 「様々なバリエーションの屑たちが出てきて、様々なバリエーションで退治していくっていう。次はどんな屑が出てくるの? って目線で見ちゃうよね。結構、実際の事件とか社会問題を基にしたエピソードが多いんだけど、深掘りはしない」
30 「『こんなひどいことしたんだぜ!』っていうことを見せるために使ってるからね。そこで立ち止まって考えることなく、話はひどいんだけど、サラッと読めちゃう」
40 「興味は『その屑がどんな目に合うんスか!』っていうことだしね。だから身につまされないで済む(笑)」
30 「結局、復讐の方法は正直、悪趣味だったりグロすぎたりすることはあるけど、一応は"胸スカ"に特化した作品だからね」
40 「切ったり割いたり焼いたり吊るしたり無茶苦茶しすぎだけど。でもさ、その復讐方法のほうがもし行き過ぎだとしたら"胸スカ"にはつながらないと思うんだよ」
30 「ここに出てくる屑たちも、日本の司法制度ではそれなりにバランスのとれた扱いをされてるはずなんだけど、実際に子供を殺されたり孫を自殺に追い込まれたりした当事者にしてみれば『なんじゃそれ?』って感じじゃん」
40 「その感覚って第三者にも蔓延してるよね。ネットとかでサラッと見た記事に対して、『死刑にしちゃえばいいのに!』とか言ったり。なんか正義感みたいなものを持ったようなつもりで掲示板に書き込んじゃったり・・・・・・」
30 「そうそう。事情とか全然知らないし、それが政治とか経済とか、自分たちの生活に関わるような事柄ならまだしも、自分と関係ない事件だったりすると、『死ね!』とか言えちゃう感じ。なんか『善悪の屑』ってその辺の、歪んだドス黒い怒りみたいなのをスッキリ持って行ってくれる気がするんだよ」
40 「ここには思い込みの入り込む余地はないからねー。屑の屑っぷりがこれでもか! って完全に描ききられてるから、そいつに同情したり斟酌したりすることなく、ちょん切られるのを見ても胸スカできる」
30 「普段、生活してると、ここまではひどい目には合わないから、ここまでの復讐はしてもらわなくてもいいんだけど・・・・・・でも、もうちょっと軽いタッチの復讐屋がいてもいいと思うことはある(笑)」
40 「コンペで負けた相手に復讐してくれる的な?」
30 「悪し様に罵られた営業先のオヤジに辱めを与えてくれる的な?」
40 「いくらなら出せるの?」
30 「いくらなら出すかなあ。まぁこのくらいのモチベーションだったら復讐いらないか。仕事で見返そうぜ! っていう美しい昇華の仕方になるのかなあ」
40 「お小遣いの使い方としては甚だ不健全だよな。なにかうまいものでも食ったほうがいいね」
据え膳食っちゃったらその先は地獄。誰の身にも起こりうる
『ホリデイラブ ~夫婦間恋愛~』
30 「基本、昼ドラですよね。2人とも自業自得のオンパレードなんだけど、身につまされるんだよなあ」
40 「おれなんか、女子とごはんみたいなことになるだけでドキドキする。純平(主人公の旦那)が浮気するときに、行ったことない岐阜のおしゃれレストランを検索して予約する気持ちとか超わかる」
30 「心の動きにリアリティがあるよね。お互いに『やり直そう』と思ったり、『いやもう心は離れた無理だ』っていう揺り返しが来て、でもやっぱりお互いに努力してみようとしたりの繰り返し・・・・・・」
40 「で、純平がどんなに努力しても、良かれと思ってコミュニケーションとろうとしても、それが一切響いてなかったり・・・・・・」
30 「まあまあ元サヤなモードになりかけた時にも、一緒に見てるテレビとかで"不倫"とかいうキーワードが出てくると、お互いにビクッてなったり。その地名にはなんの罪もないのに、浮気の舞台になったというだけで『岐阜』って言われると、関係ないことを思い出したり」
40 「浮気によって、それまでの日常が一変してしまうと。なるほど、そういうところのリアリティが尋常ではないかもね。これさ、出会い系がきっかけになってるけど、そうじゃない出会いのきっかけだっていっぱいあるしね」
30 「うん。主人公の杏寿だって、お客さんに強引に出会い系に登録されて、結果、同業という触れ込みの黒井と出会って"ああいうこと"になるけど、この夫婦は特別に悪人でもなんでもない」
40 「純平だって一応、最初は下心はなかったわけだし」
30 「だから、浮気とか発覚後のドロドロとかって、実は誰にでも可能性があるんだっていうね」
40 「家庭って波風の立たない運行が幸せだから、なにか非日常的なアトラクションみたいなものには、ついついひかれるよね」
30 「だから、家族勢揃いのお正月に、マンガでだけこういう世界観に触れて、幸せを再確認するのがいいのではないかと」
40 「あと、もしマズイことになったら、こんなひどい目にあうぜっていうシミュレーションにもいいのかな」
30 「そうそう。壊れてしまうと、『なんでもないようなことが幸せだった!』って思うことになるのよ。女性向けのマンガだけど、これ、男性も読んだ方がいい」
40 「身につまされるっていう意味では『ホリデイラブ』は『善悪の屑』よりもっと怖いかもなあ」
子持ち全員号泣案件。お母さんってそんな気持ちだったのか!
『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』
30 「泣いたの?」
40 「ボロ泣き」
30 「あー、そこは独身と子持ちの差なのかなあ・・・・・・。どういうところで泣く?」
40 「これって現実の物語っていう話だけど、実は結構キツイことが多いんだよね。まあ初手から、バイトで産婦人科に入った主人公が中絶された胎児を見て凹むっていう話で。瓶に入れられたその子たちに世界を見せてあげる。歌を歌ってあげるっていう。あ、ダメだ。しゃべりながら泣けてきた・・・・・・」
30 「そこまで??」
40 「だからさっきの『なんでもないようなことが幸せ』なんだよ」
30 「あ、自分の家族との対比か。なるほどね」
40 「うちは子どもが2人いて、いい子かというと全然普通で。ゲームしたり寝っ転がったり家の手伝いしなかったり、反抗したりしててさ、でも"ああ、こうしてここにいるだけでいいよな"って思えてくる」
30 「で、泣く」
40 「泣く」
30 「この作品って、子どもを宿したときにお母さんになる気持ちみたいなことがすごくつぶさに描かれてるじゃん。そういう部分、奥さんに感じた?」
40 「実際のところ、"自分が父になる"って想像しかなかったね。いっぺんうちの子が夜中に痙攣したことがあってさ。救急車呼んで、で、3人で乗り込んで。でも、隊員の人あちこちに電話するだけで全然発進しないわけ」
30 「受け入れ先の病院探してるんでしょ?」
40 「うん。あの人たちも仕事だし、うちの子も死んじゃうほどじゃないからさ、そこは父的に隊員さんの事情も汲み取るじゃん? でも母は違うんだよね。『なにしてるんですか! うちの子が死んでもいいんですかーっ!』ってシャウト。その時は"ああ、やっぱり父と母は違うんだ"って思った」
30 「あー、なるほど」
40 「この作品でも『産んでもすぐに死ぬ』って子どものエピソードがあるじゃん。『死にますけど、産みますか?』って条件を突きつけられたら、なかなか"産む"は選べないよね」
30 「産む場合と堕ろす場合のリスクとか考えたりね」
40 「でも作中の夫婦は産むんだよね。で、1週間一緒に過ごして別れる。そのあいだの思い出と痛みを抱いて生きていくっていう」
30 「答えは1つじゃないぞっていうね」
40 「命の尊さを大上段から押し付けてくるわけじゃないから、読んでる人は救われるのかもしれないよね」
30 「母親的な強さっていうのはあるかもね。子どもが泣きながら帰ってきたら、父親は大抵、『どうしたんだ。わけを話せ』ってなるじゃない? で、善後策を考える。あるいは将来社会に出たとき、どうすると対処できるかを教える」
40 「あ・・・・・・オレ完全にそう」
30 「でも母親って『わかったわかった。もうしょうがないわねえ』って。『大丈夫、大丈夫』って言いながら、なんなら笑ってたりするじゃない」
40 「同じ土俵にいないよね、母って」
30 「読みながら、そこが女の人の強さと魅力だなと思った」
40 「なんか正月から、結構重かったりきつかったりするマンガたちを紹介してきたけど、これはこれでよかったかもね。あれですよ。一休さんが杖にドクロを差して正月の京の街を練り歩くエピソード。みんなからは『不吉な!』『正月からなんだ!』って言われるんだけど、『みんな一皮むけばシャレコウベ。みんな同じ、常に死は隣にあるんだぞ』っていうエピソードに似てる」
30 「うん、そのたとえピンとこないけど、つまり『なんでもないようなことが幸せ』だっていうことなんだよね」
というわけで、日々の幸せを大いに実感するにいたったTSマンガ部の2人。今回取り上げたコミックは、ブックパス会員なら「ホリデイラブ」は定額で読み放題、「善悪の屑」「透明のゆりかご」はアラカルトで購入し、読むことができる。この年末年始は「オトマン」を読んで、大人の苦みを噛みしめてみてはいかがだろうか。そして、現在ブックパス4周年キャンペーン中! 最大40,000コインプレゼントなど、お得な情報もお見逃しなく!
- おかげさまで「ブックパス」は4周年を迎えました!
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これまでのご愛顧に感謝し、『ありがとう4周年キャンペーン』を開催中!
読み放題、アラカルトともにおトクがいっぱいのこの機会をお見逃しなく♪
※「ブックパス」は562円(税抜)の月額情報料で、270誌以上の雑誌やコミックなど、総額2,300万円・50,000冊以上の作品が定額で楽しめる「読み放題プラン」と、350,000冊以上のなかから好きなタイトルを1冊ごとに購入する「アラカルト購入」の、2通りの楽しみ方で電子書籍をご利用いただけるau公式電子書籍サービスです。「ブックパス」はauスマートフォン・PCからお楽しみいただけます。
文:武田篤典
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