2015/11/04

“つながる”を支える“はたらくくるま” 『車載型基地局』の秘密に迫る

お祭り、花火大会や、有名アーティストの野外コンサート、あるいはコミックマーケットのように一般の人が主役になるものなど、日本国内では多種多様なイベントがいたるところで開催されている。また、それらの中には10万人規模の動員となるイベントも少なくない。

エリアに人が集中するとなると、通話やネット閲覧など、スマホでの通信はスピードが落ちてしまったり、ときにはまったくつながらなくなってしまったり、ということも起こり得るはず。しかし、「昔はそういうこともあったけど、最近はちゃんと通話できるよな......」との実感を持つ方もいるのではないだろうか?

大量のトラフィック(通信量)発生が予想される巨大イベントでも、安定的に"つながる"状況をつくる――それを実現しているのが、「車載型基地局」だ。文字どおりアンテナなどの通信に必要な設備を搭載し、臨時に基地局を開設できるクルマのこと。KDDIは20台の車載型基地局を保有し、日本全国のさまざまなイベントなどへ出動している。

普段は人の目に触れることの少ない車載型基地局だが、今回、T&S編集部はその取材を許された。どこでもつながることを実現するため、何が備えられ何をしているのか? そんな車載型基地局の秘密を、徹底解剖する!

これがKDDIの「車載型基地局」だ!

①アンテナ

移動基地局のシンボルともいえるアンテナ。音声通話なら約100回線のトラフィックをさばき、データ通信の場合は約千ユーザーが同時利用可能だ。

アンテナは伸縮式。伸ばしきるとその高さは11メートルにもなり、これはマンションの3~4階に相当する


②車内

アンテナがキャッチした音声通話の電波は、車内の装置によって音声を光信号へ変換し、各地域に設けられた「ネットワークセンター」へ送信。そこから、電話をかける相手につなぐ。実はこれ、常設の基地局とまったく同じ仕組み。「車載型基地局」だからといって、スペックが劣るわけではないのだ。

③車両後部

車両後部のハッチを開くと、まず目に飛び込んでくるのが発電機(水色の装置)。災害時に出動することもある車載型基地局は、どこでも稼働するために、発電機を備え付けている。また、発電機の左上にあるのはエアコンのファンで、高温で車内の装置がダメージを受けないよう、空調管理がなされている。

④車両右側面

発電機の前方には、バッテリーを搭載。車体後部右のドアを開けると、その姿を確認できる。この発電機とバッテリーを備えることで、車載型基地局は燃料さえあれば24時間稼働が可能となっている。

⑤パラボラアンテナ

車載型基地局は通常、近くにある既存の回線と接続し、ネットワークセンターと通信する。だが、災害時などは回線自体が被害を受けている場合も......。そんなときに活躍するのが衛星通信が可能なパラボラアンテナ(写真左の丸い物体)。使用時はこれを立ち上げ、人工衛星を介した音声通話、データ通信を可能としている。

⑥ジャッキ

車体底面にはジャッキを設置。基地局を固定する役割をもつのはもちろんだが、設置場所が平坦でない場合、車両全体を水平に保つ役目も果たす。

アンテナとジャッキの操作はリモコンで行う。赤いスイッチはアンテナを伸ばし、そして縮めるもの。真ん中の黒いスイッチは4基のジャッキを一括で操作し、ほか4つの黒いスイッチで各々のジャッキを調整できる。

⑦赤ランプ

華やかなイベントだけでなく、通信環境の復旧が早急に必要とされる災害被災地にも車載型基地局は出動する。その場合、運転席上部に据え付けられた赤ランプ点灯、サイレン鳴動により、必要に応じた緊急走行を実施する。緊急走行のため、運転手は特別な研修を受けるのだとか。

イベント時には特別塗装バージョンも!

ロゴ以外の部分は真っ白なボディの、KDDIの車載型基地局。だが、イベントによっては特別な塗装が施されることも。今年夏の「コミックマーケット88」では、CMでおなじみの「三太郎」のイラストが車体側面に描かれた。

楽しいイベントから、インフラが止まり厳しい状況に置かれる災害時まで、さまざまな場面で活躍する車載型基地局。日頃、目にする機会はあまりないが、その役割は、当たり前に「つながる」ためになくてはならない存在なのだ。

文:藤麻 迪
撮影:有坂政晴(STUH)
絵:友田 威

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