2015/04/16
生活者が研究員! 『au未来研究所』が、“共創”をテーマに『FUMM』を発表
「FUMM」を掲げるKDDI宣伝部担当部長・塚本陽一氏
舞台上の女の子がジャンプする。床に描かれたヒツジの絵の上に着地すると「メェ〜ッ」。隣に立つ大人の持っているスマートフォンから、愉快なヒツジの鳴き声が流れる。床に描かれた線路の上を走ると、今度は蒸気機関車の「シュッシュッシュッ」。走行音は歩調を緩めるにつれゆっくりになる。スマホの画面には線路を走るSLのアニメーション。女の子の履いている靴からさまざまな情報が入力され、スマホが連動して楽しい音やグラフィックを流す。これが、「au未来研究所」が2014年度の研究活動の集大成として発表した靴型のウエアラブルデバイス「FUMM(フーム)」だ。一見、ポップでグッドデザインなスニーカーだが、ベルクロ面ファスナー上の白い突起物が目を引く。これは「加速度」と「気圧」を測るセンサー。そして、中敷きのつま先とかかとには「感圧」センサーが、ソールの土踏まず部分には「カラー」センサーが搭載されている。
「FUMM」が床の緑色を感知、歩くたびにスマホが「ゲロゲロ」と愉快な鳴き声をあげる。また、スマホとのBluetooth接続が切れれば警告音が鳴る
「FUMM」の制作コンセプトは「いつものお散歩が、冒険に」。「歩く」「走る」「キック」「ジャンプ」「階段の昇り降り」といった子どもの動きや「踏んでいる地面の色」を識別し、その情報をBluetoothで接続されたスマートフォンに送信。かわいいグラフィックと共に、動物の鳴き声や蒸気機関車の走行音などが再生される仕組みになっている。スマートフォンというと、ゲームやアプリなど、どうしてもインドアな印象が強いが、それを屋外に連れ出し、ディスプレイを見つめながらも親と子で一層のコミュニケーションを図れるデバイスになっている。
自身、二児の母でもある小澤氏が制作の背景を語った。
スニーカーの提供や、履き心地、耐久性の監修などはニューバランスジャパンの協力を得た。ニューバランス社ブランドコミュニケーションチーム ウェルネスカテゴリーリーダーの小澤真琴氏は、「ニューバランスは昨年から『NB Spark Start』という子どもたち向けのキャンペーンに力を入れています。子どもたちが体を動かすことを通じて健康に幸せになってほしいと願って、グローバルでさまざまなプログラムを展開してきました。そうした活動が背景にありました」と、プロジェクト参画の理由を語る。
かくして、同社のキッズ用トレーニングシューズ「KV620」をベースに、各種センサーとスニーカーとしての履き心地や耐久性などとの共存を目指し、約3カ月の試行錯誤を経て、3月30日の発表の日を迎えた。100年以上の歴史を持つニューバランス社でも通信会社とのコラボレーションは初めてだという。
そもそもこのコンセプトモデルは、「au未来研究所」が2014年度の活動として目指してきた「スマホの次を発明する」というテーマへの1つの回答。このラボは「株式会社KDDI研究所」の付帯組織として創設されたウェブ上のオープンラボラトリーで、Facebookなどでソーシャルログインすれば、誰でも研究員として参加することができる。この10年ですべての「物」は通信機能を持ち、すべての「環境」はユーザーとつながる―――そんな「つながることがあたりまえの未来」において通信事業者がどんな新たな価値を提供できるか、ということをテーマに、さまざまな提案を行っている。2013年にはアニメーション作家の神山健治氏を招聘して「未来と通信できる携帯電話」をフィーチャーしたアニメーションドラマを制作。さらには「自動販売機で買えるケータイ」というコンセプトを打ち出し、その解説映像を完成させた。
そして2014年には、この「FUMM」の完成に至った。「スマホの次を発明する」というテーマに則って、「au未来研究所 研究員」(=生活者)たちは、まず「衣・食・住」の3ジャンルにおいて、ウェブ上で自由にブレストやアイデアディスカッションを繰り広げた。夏以降には、具体的なアイデア出しと、それらを実際に制作物に落としこんでいくためのハッカソンを開催。複数の班を結成し、11月までの計6回のハッカソンで、各班各ジャンルに関して1つずつガジェットを完成させるに至った。
塚本陽一氏(左端)と、「FUMM」を生み出した5名のハッカソンメンバー
制作されたのは合計15のプロトタイプ。その中でコンセプトモデルの制作にまでこぎつけたのが「FUMM」だ。ハッカソンメンバーの1人が、つねづね「抱っこ」をすぐにねだる姉の子どもを見ていて、「歩くことがもっと楽しくなればいいんだ!」と思ったのがきっかけで、「いつものお散歩が、冒険に」というコンセプトを発想したのだという。
藤本美貴さんも「FUMM」を絶賛
記者会見には第二子を妊娠中というタレントの藤本美貴さんも登場。
「小さいころからスマートフォンで遊べる今の子どもたちも、家の中でいじっているだけでなく、外に出て体を動かせるようなことに使えると、親子間のコミュニケーションになりますね」と、「FUMM」の魅力を語った。
藤本さんも「欲しい!」と絶賛する「FUMM」だが、実はコンセプトモデル。残念ながら発売は未定とのこと。
走るとSLの音がスマホから流れる。途中で電車型の"駅"に触れれば、電車の音に変わる。歩くと音もゆっくりになる。デモンストレーションにも関わらず、モデルの女の子はわれを忘れて"冒険"に夢中になっていた
現時点では、親子のコミュニケーションデバイスの色合いが強いが、将来的にはカラーセンサーを使って目の不自由な方の歩行をサポートしたり、感圧センサーを家の照明と連動させ、新しいUIとして展開するというビジョンもある。まさに未来を視野に入れ、未来を作り出す「au未来研究所」。これからも大いに注目......だけでなく、ぜひ研究員として参加されたい。
文:武田篤典
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