2019/10/24
スマホをかざせば生きものや山の名前がわかる! 学習&進化するAIアプリで人生はもっと楽しく
街なかの散歩や、子どもと山をハイキングしているとき、目にとまった虫や花、山の名前が気になったり、子どもに聞かれたりすることがある。ところが、名前すらわからないと、ネットで調べようようにも検索するためのヒントがない。
仕方ないのでスマホで撮影、SNSなどで「これなに?」と尋ねてみるのも手だが、知り合いにその分野のスペシャリストがいるとは限らない。「形しかわからないもの」って、実は結構調べにくいのだ。
結果、その場で知ることができないことで自分の知的好奇心も、子どもの興味の芽も潰えてしまうことになりがち。
そこでおすすめしたいのが、スマホをかざしたり撮影したりするだけで、その名前と詳細な情報がわかるアプリ。 こうしたアプリは実際、生活をどんなふうに面白くしてくれるのだろうか。
「この植物の名前はなに?」 すぐにAIが教えてくれる!
たとえば植物の名前。散歩中によく見かける草花も、実はスマホをかざすことで詳細がわかる。試しにバス停のベンチ脇に白くて可憐な花が咲いていたので、植物好きに向けた「Green Snap」というSNSアプリを使って撮影してみた。
アプリ内にある「教えてカメラ」という機能を使うと、撮影した写真がクラウドにアップされ、AIが名前を教えてくれるのだ。撮影するとすぐに回答が来た。
左の画像は「人工知能からの回答」。「トレニアかも」「ポーチュラカかも」「カリブラコアかも」「ベロニカかも」などなど全9件が挙がった。そのなかからちょっと似ているカリブラコアの画像をクリックすると、右の画像のように、過去にSNSに投稿された同じ花の一覧を見ることができる。見た目で検索できるので、すごくわかりやすい。ただ、この白い花とは違うようだ。
実際にどこまで正確なのか。花屋さんで試してみた。
東京・池袋の「フラワーショップ・イワイ」である。こちらにある白くて大きな花「カサブランカ」を「調べるカメラ」で撮影すると、10秒ほどで回答が届く。
「ユリ」「アマリリス」「オリエンタルリリー」など、AIから全9件候補を挙げてきたなかに、ちゃんと「カサブランカかも!」という回答があった。
見た目で同じ花を探せるのはやはり便利だ。撮影の仕方や角度などによってはAIが正しい植物名を示さないケースもあるようだ。
が……、その時、アプリ内のSNS参加者からコメントが届いた。さっきのバス停脇の白い可憐な花に対して「ニチニチソウかも」と回答してくれたのだ! 人工知能が回答できない場合にも、植物好きが集まるSNSの、人間の集合知がアシストして教えてくれるのがすばらしい!
あらためてアプリで「ニチニチソウ」の一覧を見ると、なるほど、ニチニチソウは白だけでなく、赤やピンクも存在することがわかる。子供に聞かれた時も、さらなる知識として会話ができるため、心強い。
風景にスマホをかざすと見える山の名前が特定できる!
次は、山の名前。ふと家から見える山々や、出張中に見かけた山、ハイキングやドライブ中に見かける山など、これもスマホをかざすだけで名前がわかる。
たとえば、出張中に出会ったこの山の稜線。
「PeakFinder AR」というアプリを使えば、山の名前が特定できる。
この風景にスマホをかざせば…
このとおり、山の名前が出てくるのだ。真ん中の富士山を中心に、まわりの山々との位置関係もよくわかる。
この「PeakFinder AR」には、世界中の約650,000(!)もの山々の地形データが記録されており、GPSとコンパス機能を駆使して、見えている山の名前を特定することができるという仕組み。
山の名前がわかれば、WEBで検索することができるが、今のアプリ技術があれば、見た目そのまま画面に山の情報を映し出すことができるのだ。
また、このアプリでは線画表示にも切り替えることができ、画面下に出ているタブの右端にある鳥のアイコンをタップすれば、その山頂まで“飛ぶ”ことができる。
鳥の目線で山頂から見える山々の景色を体感することができるので、アプリをダウンロードしたら、ぜひ試してみてほしい。
出会った生きものの名前がわかる! 記録ができる!
最後は生きもの。何の動物かわからない時にも、スマホをかざすだけで名前がわかる世の中が来ている。たとえばこの「LINNÉ LENS」。かざすだけで、対象の生きものの種類を教えてくれるアプリだ。
収録されているデータは約10,000種類。水族館と動物園にいる生き物の9割に対応しているという。
普段の生活では犬猫以外の動物に出会う可能性が少ないため、小動物を中心に、ヘビやカメ、フクロウなど14種類の生きものと触れ合うことができるスポットで、さまざまな動物たちにスマホをかざしてみた。
「アニマルルームいけもふ」である。
さて、こちらの珍しい動物の名前はわかるだろうか?
お店のお姉さんに抱いてもらい、スマホをかざしてみる。画面内に生物を認識すると、四角いフレームで囲って表示される。
同時に「カコミスル」という名前が! 下の数字が「確信度」。「73%の割合でカコミスル」、という意味だ。正直、微妙な数字だが、かざし続けていると表示が変わった。
「キンカジュー」「99%」。さっき「GreenSnap」でみんなの投稿を見て、「これだな」と自分で判断した部分を、このアプリはAIが「確信度」というかたちで提示してくれるのだ。
このコは「フェネック」。
そしてミーアキャット。
ヨツユビハリネズミ。
オグロプレーリードッグ。
なかなかの精度で生きものを言い当ててくれる。さっきの「カコミスル」のように判断に迷った記録もきちんと残っている。
一度認識した生きものは、左の写真のように動物図鑑的にアプリに収録され、右の生きものの「分類ツリー」にも登録される。キンカジューの場合、「生き物全体>哺乳類>ネコ目>アライグマ科」という枝分かれの先に、キンカジューを示すブルーのドットとして残る。自分の出合った生き物が記録されるので、自分の出合った動物図鑑をつくることもできる。
なお、ちなみにこのアプリの開発者はダイバー。自らが海で出合った生きものの名前を知るために生み出したという。そのため、このアプリの真価は海のなかでこそ発揮される。海の生きものや魚にはめっぽう強いのだ。ダイビングをするみなさんは、ぜひ海中で試してみてほしい。
人生をより価値のあるものにしてくれるAIとARの進化
「検索」ということが当たり前になってきた今、文字や声といった言語だけでなく、見ている風景でも検索できる時代がやってきている。AIやARの進化は、間違いなく私たちの日常を、これまでより価値あるものに変えているのだ。
スマホアプリでは、まだまだ精度が高くないものもあるが、今後5Gの時代になり、スマートグラスなどのデバイスや、AIの機能がさらに進化すれば、見るだけで瞬時に正体がわかるような時代が来るかもしれない。今まさに、その予感がリアルになりつつある。技術の進化は明らかにワクワクの度合いも進化させてくれているのである。
文:武田篤典
撮影:斉藤美春
撮影協力:
フラワーショップ・イワイ
アニマルルームいけもふ