2019/08/28

充電時間はどのくらい? 急速充電可能なスマホ充電器『GaN』の実力を試してみた

最近は、カフェなどでも電源が確保できる場所が増えてきていることもあり、モバイルバッテリーの代わりにUSB充電器を持ち歩いている人も多い。出張が多く、なるべくコンパクトに荷物をまとめたければ、なおさらUSB充電器は重宝される。

また、スマホだけでなくUSB Type-Cで充電できるノートパソコンも増えており、USB充電器とデバイスに対応したケーブルさえあれば、外出先でスマホもPCも充電できる。ただし、USB充電器もPCに対応できるほど出力が大きなものはサイズが大きく、カバンの中で少々かさばってしまう。

そんな問題を解決してくれる小型・軽量な充電器(ACアダプター)が「GaN」半導体を使用したUSB Type-C充電器だ

コンセントにささったRAVPower「RP-PC112」

GaNとは?

GaNとは「窒化ガリウム」のこと。通常、モバイルバッテリーやUSB充電器には「シリコン素材」の半導体が使われているが、GaN半導体はシリコン半導体と比べて電力損失がとても小さく、エネルギー効率が高いのが特徴だ。

そのぶん、発熱量も小さく、あわせて熱伝導率が高く、放熱性にも優れている。これにより、充電器の中核である電力変換器の小型化が可能になり、GaN半導体を用いた製品では従来の半分のサイズ、重さになったものも多い。

Si(シリコン)とGaN(窒化ガリウム)のエネルギー効率や発熱などをまとめた図版

さらに、急速充電にも対応しているため、時間の削減にもつながる。まさに革新的な素材なのだ。そのため、これから購入するなら、ぜひGaN半導体を使った充電器を選びたい。

GaNを採用した充電器

積極的に選びたいGaN採用製品だが、残念ながら現状ではGaNを使っているかどうかを外部から見わける方法はない。基本的には、メーカーがGaN採用をうたっているかどうかだけが判断ポイントとなる。このため、事前の情報収集をしっかりしておきたいところだ。

では、実際にGaN半導体を採用しているUSB Type-C充電器を紹介しよう。2019年8月現在、GaN半導体を採用し、日本国内で正規販売しているメーカーはそれほど多くない。ここでは、そのなかからAnker(アンカー)とRAVPower(ラブパワー)の代表的な商品をそれぞれ紹介しよう。

・Anker「PowerPort Atom PD 1」
ゴルフボールとほぼ同じサイズ(約縦41mm×横35mm×薄さ55mm)ながら、最大30W出力が可能。MacBookなどでも使われるApple純正の30W充電器と比べるとおよそ40%も小さくなっており、重さも約53gと非常に軽量だ。なお、au×Ankerのコラボレーション第5弾として、2019年6月より「au+1 collection SELECT」でも発売されている。

Anker「PowerPort Atom PD 1」

商品名/PowerPort Atom PD 1
メーカー/Anker
価格/3,780円(税込)

・RAVPower「RP-PC112」
こちらは出力60Wクラスで、世界最小サイズ(約縦49mm×横49mm×薄さ32mm)を実現(2019年8月現在)。従来の同クラスの出力の充電器に比べ、約半分という非常にコンパクトかつ105gの軽量サイズとなっている。最大出力は61Wで、機種にもよるが13インチクラスのノートパソコンも充電が可能だ。

RAVPower「RP-PC112」

商品名/RP-PC112
メーカー/RAVPower
価格/実勢価格 4,700円(税込)(2019年8月26日時点)

実際にRAVPower「RP-PC112」で充電してみた

GaNを使った充電器は、先に挙げたように小型化が最大の特長となる。実際に手に取ってみると、そのコンパクトさがわかるだろう。これなら持ち運びもラクだ。

親指と人差し指で持ったRAVPower「RP-PC112」

小型化に加えて、もうひとつの特徴はUSB PD(Power Delivery / パワーデリバリー)に対応している点だ。USB PDとは、USB Type-Cのみで利用できる急速充電規格のこと。給電が5~10W程度しか扱えなかった従来のUSB端子と比べると、USB PDでは最大100Wの給電が可能だ。

もちろん出力が大きいほど、速く充電できることになるが、すべての製品を最大出力で充電できるわけではない。どの程度の出力で充電できるかは、充電する製品(スマホやPCなど)次第なので注意が必要だ。

iPhoneを充電中のRAVPower「RP-PC112」

たとえば、iPhone XSはUSB PD「18W(9V/2A)」での充電に対応している。そこで、実際にRAVPower「RP-PC112」で筆者のiPhone XSを充電してみたところ、約100分で充電が完了した。普段使っている充電器の場合は、満充電になるまで約150分かかるので、1.5倍の速さで充電できたことになる。なお、電圧チェッカーで計測したところ、iPhone XSへは9V前後、2A前後で充電できていた。

iPhoneを充電中のRAVPower「RP-PC112」を電圧チェッカーで計測

急速充電を行うと充電器自体が熱くなることもあるが、RP-PC112は熱伝導率が高いGaNを採用しているだけに、そういったこともなかった。これなら安心して利用できるだろう。

ただし、USB PDで充電するには対応したケーブルを使用する必要がある。RP-PC112を含め、今回紹介した充電器にはいずれもUSBケーブルが付属していないので、ケーブル購入時には注意しよう。

今後のGaN半導体を使用した商品展開にも期待

いまのところ、日本国内で正規販売されている製品はまだ少ないが、今夏以降、日本でも採用製品が続々と増えてくることが期待されている。持ち運びのみならず、充電時間の短縮はこのスマホ時代には待ち望んでいた進化だ。小型ながら、急速充電にも対応したGaN半導体採用のUSB Type-C充電器を、ぜひ、試してみてほしい。

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文:山本竜也