2017/06/13
【ネット系女子!】デート写真もプロが撮影! 出張フォトサービス『ラブグラフ』CCO・村田あつみさん
いまどきのネットを騒がせている女性たちを紹介する「ネット系女子!」。20回目は株式会社ラブグラフ創業者であり、取締役CCOの村田あつみさん。
「ラブグラフ」はカップルのデートやご夫婦、家族のお出かけにプロカメラマンが同行し、自然体で幸せな瞬間を撮影してくれるというフォトサービス。「自撮りとはまったく違う、クオリティの高い写真が撮れる」と、10〜20代を中心にネットやテレビで話題となり、今では月間200組以上のカップルが利用しているそうです。
このサービスの創業者にしてWebデザインや広報業務など幅広い業務を手がける村田さんに、ラブグラフを立ち上げたきっかけや仕事のやりがいをうかがいました。
カップルの幸せを形にする出張フォトサービス
――どれくらいの年齢層の利用者が多いんですか?
「10代後半から20代前半がいちばん多いですね。SNSにカップル写真を載せることに抵抗のない層から使っていただき、広まっていった印象です。カメラマンも同じ世代の人が多いので、緊張せず自然な表情で撮影できるところが魅力です。また、撮影料金は1〜2時間ほどの撮影で一律1万6千円と、割と手軽に利用できる価格帯に設定しています」
――若いユーザーから支持されているんですね。
「現状マーケティング的には、ミレニアル世代の方を対象にしたサービスなんです。今後は、ユーザーの年齢層も年々上がっていくと考えています。実際、始めた当初はカップル写真が中心でしたが、今ではブライダル写真や家族写真など、使い方も多様化しているんですよ」
――そもそもサービスを立ち上げたきっかけはなんだったんでしょう?
「大学生3年生のときにデザイナーとして働いていたWebサイトを運営するスタートアップ企業でカメラマンの駒下(純兵さん/現・ラブグラフ代表)と出会ったことがきかっけです。彼は当時から自分のカメラで撮影した写真をTwitterにアップしていたんですが、『自分が撮影することで誰かに喜んでほしい』という思いから、友人カップルを撮影するようになったんです。
その頃私は、デザイナーとして技術もついてきて、『心の底から打ち込めるなにかをつくりたい』と思いはじめていた時期でした。なにがいいか考えたときに、友達の恋愛や家族の幸せが思い浮かんだんです。そんなタイミングで見かけた駒下の写真は幸せそのもので、本当に素敵だったんです。これをもっと世の中に広めたいと思って『Webサイトにしようよ!』と声をかけました」
――すぐにビジネスになると?
「いえ、最初はほとんど趣味のような感じですね。当時はカメラマンが交通費だけいただいて撮影に行くといった感じでしたし。ただ、私が良いなって思った駒下の写真に『自分たちも撮影してほしい』という連絡が結構あって。カップルとしての思い出を良い形で残したいという思いは、誰もが持っているんだと感じました。
実際、サイトをオープンした当日からすごい反響で、告知はSNSのみでしたが、一晩で3万PVを記録したんです。サイトを見て、ラブグラフの理念に共感してくれた人がカメラマンになりたいと連絡をくれたりもしました。関西を拠点としていたんですが、連絡をくれた人に県外在住者が多かったので、早い段階から全国規模でサービスを展開することができました。ネットの力ってすごいですよね(笑)。その後、企業からの問い合わせやタイアップなどの依頼が増えた結果、1年後に会社として『ラブグラフ』を立ち上げました」
「大切な人と過ごす時間が幸せ」ということを再認識できるサービスでありたい
――村田さんはCCOとしてどんな仕事をしているんでしょうか?
「CCOとは、クリエイティブとブランディングの責任者で、経営陣のひとりです。普通の会社にはCCOは置いていないことが多いですが、我々はラブグラフというひとつの『ブランド』を強みとしています。なので、そのブランドを定義し、広め、守っていくことがCCOの使命です。そのためには、見た目のデザインはもちろん、どう情報発信していくかの広報や、マーケティング戦略、カメラマンマネジメントも重要になってきますので、さまざまな役割を巻き込んでブランディングに取り組んでいます。
たとえば、写真。ラブグラフ専属のカメラマンのことを『ラブグラファー』と呼んでいるんですが、採用率は約10%です。写真の技術はもちろんですが、コミュニケーション能力も備えているかも厳しくチェックしています。デートに同行するのに、ひと言も喋らなかったら、楽しい雰囲気を台無しにしてしまいますからね。また、クオリティについてのポイントなどを載せたマニュアルをラブグラファーに配布したり、定例ミーティングでカメラマンマネージャーが写真をチェックするなどして、クオリティを維持するよう心がけています」
――Webデザイナーとしてサイト制作も担当したそうですね。
「はい。立ち上げ時には、ロゴやデザインはもちろんコーディング、Wordpress実装などもひとりで行いました。デザインする上で意識した点としては、写真がいちばん目立つようシンプルにしました。それに加えてお客様のお名前やコメントを掲載したりして、メディアとしても楽しめるように工夫しています。
ラブグラフは、『大切な人と過ごす時間が幸せ』ということを再認識できるサービスでありたいと思っています。ですから、実際に利用していただいた方はもちろん、初めてみた人もそう感じてもらえるようなサイトづくりを心がけています」
――今後はどんなサービスを考えていますか?
「『そもそもパートナーがいないから使ってみたいけど使えない』という意見をうけて、友達同士のお出かけで記念撮影を行う『ラブグラフフレンド』というサービスを始めました。今後はペットなど、ヒトに限らず自分が大好きなものと気軽に記念撮影ができるようなサービスを展開していきたいです」
インターネットが心の拠りどころだった中学時代
――Webデザインに興味を持ち始めたのはいつ頃ですか?
「中学生くらいですかね。当時バスケ部に入っていたんですが、部内でイジメにあってしまって。解決する手段もなくて、いちばん辛い時期でした。同じ頃、家にあるパソコンを使って中学生が集まる掲示板で他人と交流するようになったんです。ネット上での交流ですが、学校に居場所がなかった私にとってはすごく救いになったんです。
当時、絵文字の使い方が上手だったり、文章がなんとなく可愛かったりするとネット上でのヒエラルキーが上がるんですね。なかでも特に"イケてる"とされるのが、自分のHPを持っている人。私も"イケてる"と思われたくて、自分のHPをつくったりしていました。そこで交流した人と付き合って、でもメールだけのやり取りなのでいつのまにか疎遠になったりして(笑)。そういうことが楽しかった時期ですね。Webデザイナーとしての原体験は、そこにあるかな」
――デザイン技術は大学生時代に磨いたそうですね。
「はい。高校生のときにデザインの専門学校に進学したいと思ったんですが、親に反対されたので、とりあえず一般の大学に入りました。でもやっぱりやりたくて、未経験ながらCampusというスタートアップにWebデザイナーとしてインターン入社したんです。
入社してすぐにデザインに関する本を20冊ぐらい渡されて『これ来週までに全部読んできて』と言われたり、『3日後までに名刺のデザイン案15個考えて』と頼まれたり・・・・・・。教えてくれる人もいなかったので、とにかくネットを駆使して独学でデザインやコーディングを猛勉強しました。大変でしたが、訳もわからずイジメられていた時期を考えると、ずっとラクに思えたんです。それに、だいたいの問題は努力すれば解決できるという自信もついたので、感謝しています」
――それはなかなか大変でしたね。その頃があって、今の村田さんがあるんですね。
「ですね。まあ、今だって大変なことももちろんありますけど(笑)」
――それでも頑張れる理由は?
「やっぱり、お客様に喜んでもらえる、ってことですよね。いちばん思い出に残っているのが、3回にわたって利用してくれたカップルさん。1回目の利用はサービスを開始した直後で、デートを撮影させていただきました。その次の年は、赤ちゃんできたから記念に残したいということで利用してくれて。3回目に利用してくれたときは、赤ちゃんが産まれたとき。家族写真を撮ってほしいとのことでした。」
「こんな風に、人生の節目に私たちのサービスを使ってくれることがすごく嬉しいんです。これからも、そうやってユーザーの人生に寄り添えるサービスでありたいと思います」
「ちょっとリッチなプリクラみたいな感覚で、気軽に使ってもらえると嬉しいです」と、村田さん。いつも撮影係で自分が写っている写真が1枚もない・・・・・・とお嘆きのお父さんも、ラブグラフで家族写真を撮ってもらったらいいかもしれませんね。
文:服部桃子(アート・サプライ)
撮影:有坂政晴(STUH)
1991年生まれ。大学時代初期からWebデザイナーとして活動。大学では、社会心理学の視点からインターネット時代におけるアイデンティティーについて研究。新卒で入社したリクルートホールディングスを3カ月で退職し、現在は、在学中に立ち上げたフォト撮影サービスを運営する株式会社ラブグラフの取締役CCOを務める。ブランディング、デザイン、開発、マーケティングに至るまでマルチにこなす女性Webディベロッパー。