2017/07/28

IoTで住宅に“頭脳”を持たせる、『スマートホーム』とは?

家そのものをIoT化することで、家全体が頭脳を持ったロボットみたいになること、それが「スマートホーム」だ。SF映画みたいな話だが、もはや夢ではなくなってきている。

たとえば、こんな光景を想像してみてほしい。仕事から帰宅したあなたがGoogleホームやAmazonエコーのようなスマートスピーカーに向かって、「カーテンを閉めて」と言う。すると家中のカーテンがスルスルとしまる。「明かりをつけて。明るさは暗めにね」と言うと、今度は家中の照明がちょうどよい、落ち着いた明るさに点灯する。

今度は玄関のチャイムが鳴った。「だれ?」と聞くとスマートスピーカーが「奥さんです」と答える。「開けてあげて」とあなたが言うと、玄関のドアが開いてスーパーの買い物袋を手に提げた妻が「鍵を忘れちゃった」と言いながら入ってくる。妻は「外からリモートコントロールでお風呂を入れておいたから」と言いながら、冷蔵庫に買ってきたものをしまい始める。壁にかかった自宅のエネルギー消費量を示すディスプレイを見ながら、あなたが言う。「今月、電気、使いすぎだぞ」。妻がスマートスピーカーに向かってこう言う。「エアコンの温度、これから1度だけ上げてね」

なーんて世界を実現するのがスマートホームだ。家のセキュリティから省エネ、いろんなスマート家電のコントロールまで、スマートスピーカーやスマホなどを通して一元管理できるのだ。繰り返すけど、SF映画みたいだが、実現目前なのだ。

どんどん登場するスマートホーム向け製品

まずは省エネの面からスマートホーム化を目指すのがHEMS(Home Energy Management System)と呼ばれるものだ。これは電気やガスの使用量を専用のモニターで「見える化」し、節電状況をチェックしたり、家電などの使用頻度を自動制御してエネルギーの無駄がないようにするシステムのこと。これには専用の装置が必要で、日本政府は2030年までに全家庭にHEMSを設置することを目指し、着々と計画が進んでいる。

参考記事:わが家に執事がやってくる? 噂の『HEMS(ヘムス)』とは

家のリモートコントロール化の面では、遠隔操作ができる自動カーテンだってすでにお目見えしているし(「めざましカーテン─mornin'」という製品を紹介する下の動画を参照)、フィリップスの「Hue」というスマホから遠隔コントロールができるLED照明シリーズはすでに人気商品だ。

スマホなどで鍵を開けるスマートロックなる電子鍵のジャンルでも、さまざまな製品が登場している。スマートロックであれば、たとえば期間限定の仮想鍵(つまり暗証番号)をつくって恋人のスマホにその情報を送れば、恋人に物理的に合い鍵を渡すのと同じことになる。

このスマートロックをIPカメラと組み合わせれば、買い物中のお母さんがスマホで早めに帰宅した子どもの顔をチェックしてスマートロックを開けてあげるなんてこともできる。指紋や虹彩などの生体認証装置とドアロックが一体化したものもすでにある。

ほかにも監視カメラから冷蔵庫、洗濯機、コンセントに至るまで、家中のさまざまなもののIoT化が進み、あとは今後これらを管理・コントロールする音声アシスタントが対応していけばOKという状況。実際、iPhoneなどのiOSでは「HOME」というアプリがスマートホーム化に対応しているし、Google HomeではGoogleアシスタントが、Amazon EchoではAlexaがスマートホームを念頭に設計されており、スマート家電各社の対応も進んでいる。

「つながった家」こそスマートホーム

さて、スマートホームを真のスマートホームたらしめる最大のキーポイントはクラウドであり、AIだ。スマートホームをコントロールする音声認識アシスタントはクラウドのAIに接続されており、同時にスマート家電などのIoT化された各機器の情報もまたすべてクラウドに情報が集約される。その情報をAIが処理し、制御するのだ。AIによってサポートされ、コントロールされるのが理想のスマートホームなのだ。スマートホームとは「頭脳を持ったロボット」と冒頭に書いたが、その「頭脳」はクラウドにあるAIというわけだ。

欧米では、スマートホームのことを「コネクティッド・ハウス」(つながった家)とも言う。まさにAIにつながることでさらに便利になり、進化していくのが、真のスマートホームなのだ。

文:太田 穣