2017/05/25
ちょっと待った! そのニュース、本物? 大手サイトが始めた『ファクトチェック』とは?
トランプvsクリントンの陰で拡散したフェイクニュース
2016年、壮絶な選挙戦の末、トランプ氏がクリントン氏を破って米国大統領になったのは、皆さんご存知の通り。この時、アメリカで大きな問題となったのは、氾濫したフェイクニュースの選挙への影響だった。フェイクニュース――つまり、偽ニュースだ。
たとえば、「ローマ法王はトランプ支持を明らかにした」(下の画像がその偽ニュースだ)とか、「トム・ハンクスはトランプ氏を応援してる」とか、「クリントン氏のメール問題でFBI担当捜査官が無理心中」といった、真っ赤なウソがSNSを通じて拡散、これを信じる人がたくさん現れて、トランプ氏に有利に働いたというものだ。
マクロン氏とルペン氏が戦ったフランス大統領選でも、このフェイクニュースは問題となった。人種差別的な内容も含んださまざまな偽ニュースがネット上を駆け巡り、これを見た隣国のドイツはフェイクニュースを法律で規制する方針を打ち出したほどだ。
フェイクニュースの犯人は誰だ!?
誰がフェイクニュースを流すのか? そのほとんどが、いわばフェイクニュース専門のサイトだ。真実とウソを巧みに混ぜ合わせ、いかにも本当らしいニュースをつくりあげて掲載し、読者を増やしているのだ。こういったフェイクニュースが拡散する媒体となったFacebookやGoogleなども、いわばとばっちりを受けた格好で非難の的となった。
そこでスタートしたのがファクトチェック(事実確認)という取り組みだ。ニュースが偽物か、それとも真実か、読者からの申し立てに応じて、専門の団体が調査して発表するというものだ。
Googleがファクトチェック開始
たとえばGoogleでは、2017年4月から日本を含む各国で、ファクトチェック・ラベルの表示を始めた。読者の申し立てに応じて、世界の115のファクトチェック団体が協力して真偽が確かめられ、もしもフェイクニュースだったら「FALSE(誤り)」というラベルが検索結果に表示される。
ファクトチェック・ラベルがついた記事だけを探す場合、たとえば「●●●● Snopes.com」と、検索語にプラスしてファクトチェック団体のひとつであるSnopes.comを加えるだけ。アメリカ国内のニュースに限るが、これだけでSnopes.comによるファクトチェック・ラベルのついた記事を見ることができる。
実際に試してみよう。先ほどの「ローマ法王がトランプ支持を明らかにした」という記事を英語「pope endorse trump」で検索してみる。すると、「世界に衝撃、フランシスコ法王がドナルド・トランプを大統領にと支持」という英文記事が検索結果として表示されたが、同時に「Snopes.com によるファクト チェック: FALSE」というラベルが表示されている。つまり、ファクトチェック団体であるSnopes.comが調べたところ、このニュースはウソであることがわかったというわけだ。
一方、真実であろうという場合は「Mostly True」と表示される。下の画面は、「ゴルフのしすぎだとオバマ氏のことを非難したくせに、トランプ大統領自身は就任後1カ月の間に6回もゴルフをした」というニュースに表示された、ファクトチェック・ラベルだ。そこには「Mostly True」、つまり事実だとある。
日本語検索では、まだまだこのファクトチェック・ラベルに出合うことは少ないが、日本からは日本の報道検証機構GoHoo(ゴフー)がファクトチェック団体として協力しているので、これからは日本語ニュースでも、こういったファクトチェック・ラベルが少しずつ見られるようになるだろう。
Facebookではシェア時に警告も
さて、一方のFacebookだが、こちらもユーザーの申し立てにもとづいて第三者のファクトチェック機関であるPoynter(ポインター)が真偽を調べ、もしもフェイクニュースだと判明したら、その記事は「Disputed(問題あり)」と表示される。そして、そのフェイクニュースとされた記事をシェアしようとすると「これは虚偽の可能性があるコンテンツです」という警告が出される。Facebookが作成した下のビデオを見ると、よくわかる。
新聞やテレビといったマスメディアより、SNSからニュースを得ている人が増えている今、わたしたち一人ひとりのシェアという行為にも大きな意味と責任があるといえる。わたしたち自身もSNSのマナーとして、派手な見出しに引かれて安易にシェアをする前に、自前のファクトチェックをしたほうがよいだろう。
文:太田 穣