2016/12/26
| 更新
2019/01/09
世界で加熱『eスポーツ』って? 賞金や大会内容など日本と海外事情を解説
「eスポーツ(イースポーツ)」とはエレクトロニック・スポーツの略で、コンピュータゲームやビデオゲームでの対戦を競技化したもの。日本ではまだ「コンピューターゲームがスポーツっておかしくない!?」と思っている人のほうが多いかもしれないが、2018年にインドネシアで開催されたアジア競技大会では公開競技として行われ、サッカーゲームの「ウイニングイレブン」で、なんと、日本が優勝。2022年の中国・杭州大会ではeスポーツは正式競技としての採用が決定している。すでに世界では正式なスポーツのひとつとして認められているのだ。
海外でのeスポーツの盛り上がりぶりは、さまざまな大会での高額賞金からもうかがえる。チームで行うストラテジーゲーム「Dota 2」の世界大会「ジ・インターナショナル」の賞金総額は2478万ドル(約28億円)。中国のeスポーツ大会「ワールドサイバーアリーナ2017」の賞金総額はこれを上回る約34億円。 人気ゲーム「フォートナイト バトルロイヤル」の公式大会(2018〜2019年シーズン)の賞金総額はなんと1億ドル(約110億9,000万円)だ。
もはやテニスやゴルフのメジャー大会並みである。ここからも、いかにeスポーツが海外では人気があり、興行的にも成功しているかがわかる。
日本でもサッカーや野球ゲームのリーグが誕生
多くのeスポーツの大会は、まずオンラインの予選にエントリーし、勝ち上がった選手が決勝トーナメントに出場するという流れで進む。オンライン上での対戦はインターネットを通じて世界中に中継されるほか、大きなアリーナに大観衆を集め、ライブイベントとして盛り上げる大会も多い。ゴールドマンサックスの分析では市場規模(年間売上総額)は2017年に6.6億ドルだったのが、2022年には29.6億ドル(約3,358億円)に達する見込みだ。
下の動画をご覧いただきたい。プレーヤーの華麗な動きに酔いしれるように、プロゲーマーの美技に感嘆する実況アナウンサーや観客たちの様子はまさにスポーツ中継そのものだ。
日本でも、遅ればせながら2018年2月の「日本eスポーツ連合」発足とともに、eスポーツの大衆化への取り組みが加速度的に広がってきた。まず、Jリーグは世界的人気のサッカーゲーム『FIFA18』で戦う「明治生命eJリーグ」を発足させた。なんとFIFA公認のeスポーツで、プレーヤーの最終目標は世界大会「FIFA eWorld Cup 2018」への出場だ。
サッカーに負けじと、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメントは人気野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」を使ったeスポーツ「パワプロ・プロリーグ」を共催、2018年11月からリーグ戦が開始された。
また、毎日新聞社主催の「第1回 全国高校eスポーツ選手権」が開催されることが決まり、55校がエントリー。2019年春の決勝大会を目指して、高校生ゲーマーたちが予選大会で腕を競う。ほかにもさまざまなeスポーツの大会が日本でも催されるようになった。
日本のeスポーツシーンを牽引する日本eスポーツ連合
こういった動きを作りだした「日本eスポーツ連合」は、「日本eスポーツ協会」、「e-sports 促進機構」、「日本eスポーツ連盟」を統合した団体だ。賞金付きの大会の開催やプロライセンスの発行、eスポーツ選手の育成などに取り組むのが主な役目。
KDDIも「日本eスポーツ連合」のオフィシャルスポンサーとして、5Gサービスやauひかりの高速化など、通信サービスの拡充で、日本におけるeスポーツの普及を支援していくと宣言している。
「日本eスポーツ連合」が発行するライセンスは、15歳以上が対象の「ジャパン・eスポーツ・プロライセンス」と、13〜15歳の「ジャパン・eスポーツ・ジュニアライセンス」の2種。ライセンスを取得するには、日本eスポーツ連合が公認している大会で優秀な成績を収めることと、指定された講習を受けることが求められる。
とはいえ、いちばん大切なのはプロゲーマーとしての資質を備えていることだ。プロライセンスの発行によって、今後は大会の賞金がより高額になったり、さまざまな企業からスポンサーを受けるプロプレイヤーも増えてくるはず。メディアの注目も高まるだろう。
さまざまなジャンルがあるeスポーツ
eスポーツといっても、ジャンルはさまざま。
おおよそ、次のように分類される。
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■FPS(First Person shooter)
プレイヤーの1人称視点で展開されるシューティングゲームで、『Call of Duty』『オーバーウォッチ』などが代表的。■RTS(Real-time Strategy)
リアルタイムに進行する時間のなかで、俯瞰視点で部隊などに指令を与えながら戦略的に戦うシミュレーションゲーム。上で紹介した動画がこのジャンルとなる。『StarCraft』『Age of Empires』などが代表的。■MOBA(Multiplayer online battle arena)
味方プレイヤーと協力しながら敵軍の本拠地を破壊する対戦型戦略ゲームで、『League of Legends』『Dota2』などが代表的。■格闘技系
プレイヤーがキャラクターを操作して1対1もしくは1対複数人で対戦するゲームで、『鉄拳』『ストリートファイター』などが代表的。■スポーツ系
サッカーや野球、アイスホッケーやカーレースなどのスポーツをモチーフにしたゲームで、『ウイニングイレブン』や『FIFA』などが代表的。■パズル系
パズルをコンピュータゲームでプレイできるようにつくられたゲームで、『テトリス』『ぷよぷよ』などが代表的。
2018年流行語大賞トップテンにも選ばれたeスポーツ。日本では障がい者の方々によるプロチームの結成を目指す動きもあり、単なるコンピュータゲーム競技という枠を越えて広がる大きな可能性を感じさせる。
日本中がeスポーツ種目で日本の選手が金メダルをとることを、今か今かと待ちわびる日がくるのも近いかもしれない。
文:太田 穣