2016/12/08
洗濯機が勝手に洗剤を注文してくれる『スマート家電』時代がすぐそこに
それはすなわち「つながる家電」
量販店や通販サイトの家電コーナーで、「スマート家電」というキャッチフレーズを頻繁に目にするようになった今日この頃。いったい、普通の家電とスマートな家電はなにが違うのだろう。もちろん、小型軽量化してスマートになったという意味ではない。
スマート家電のことを、別名「つながる家電」ともいう。つまり、「ネットにつながり、賢くなった家電」がスマート家電だ。注目されるようになったのは2015年ごろからで、世界各地で開催される家電見本市では、スマート家電でなければ家電にあらずというのが現状。このムーブメントを牽引しているのがサムスンやLGといった韓国のメーカーで、日本と中国のメーカーがこれを猛追している。
冷蔵庫の中身をスマホでチェック
では、家電がスマートになるとなにがどう変わるのだろうか? たとえば、サムスンの冷蔵庫である。Wi−Fi経由でネットに接続されたこの冷蔵庫は、扉に埋め込まれた液晶の大型タッチパネルでレシピを検索したり、テレビ番組を見たり、内蔵スピーカーで音楽を聴いたりと、いろんなことが可能だ。冷蔵庫の中身を内部のカメラからスマホ経由で見ることもできるので、外出先から足りない食材をチェックし、帰宅時に買って帰るといったこともできる。
上の動画は、ハワイ在住の主婦keepingupwithashlynさんが、購入したばかりのサムスンのスマート冷蔵庫の機能を紹介している。言葉が英語で再生時間も長いが、眺めているだけでも、スマート家電がどういうものかがわかる。2:00ごろから見るとよい。
洗濯機がスマートになったらこうなるというのは、アメリカの家電メーカー、ワールプールが2015年のCES(国際的な家電見本市)で発表した製品が教えてくれる。スマホにインストールしたアプリで、外出先から洗濯機をコントロールできるのはもはや当然。面白いのは、洗剤や柔軟剤がなくなりそうになると、勝手に注文して取り寄せてくれることだ。
お掃除ロボットもスマート化するとこうなる。LGの発売予定のものでは、内蔵した3つのカメラで部屋全体を撮影することができる。外出先の"ご主人様"はスマホでお掃除ロボットをリアルタイムに操縦して移動させ、掃除させたい部屋や一角をこのカメラで映し、「ここをきれいにしなさい」と命令できるというわけだ。このカメラ機能は防犯にも使われる。泥棒が家の中に侵入したりといった異変をお掃除ロボットが感知すると、それを撮影して、"ご主人様"のスマホに送って知らせてくれるのだ。
家電紹介サイト「Smart Review」が2016年のCESの模様を記録した上の動画では、LGのスマートお掃除ロボットが、スマホのアプリでリアルタイムにコントロールされているのを見ることができる。
スマート家電アプリでスマホがカオスに
"つながる"だけなら、すでに多くの製品がそれを実現している。電動歯ブラシ、エアコン、ドライヤー、体組成計・・・・・・たくさんの家電製品がスマホに情報を送ること自体はとっくに始まっているし、スマホから炊き方を指示できる炊飯器などもある。こういったものもスマート家電の仲間と考えると、私たちの生活はすでに十分にスマートになっているといえるだろう。
これからは、ありとあらゆる家電がスマート化していくのは間違いないし、それによって、スマホから遠隔操作するのは当然のこととなり、その家電の用途に応じたさまざまな便利機能も追加され、自動化されるようになるのだ。
そこで問題になってくるだろうといわれているのが、アプリの氾濫だ。ドライヤーのアプリだと思って操作したら、炊飯器でごはんが炊き上がったりとか、そんな冗談みたいなことが今後は起きるに違いない。
そういう状況が起きないようにしようと、各家電メーカーでは自社のスマート家電を統合してコントロールできるアプリを開発しているが、それでも、いろんなメーカーのスマート家電が家に増えてくると混乱は必至だ。その解決策として登場したのが、たとえば、iPhoneの「ホーム」だ。
時代はスマート家電統合アプリへ
iOS 10にバージョンアップしたら、新しく「ホーム」というアプリが表示されたので、「これなに?」なんてタップしてみて、「よくわからん」と思った人も多いのではないだろうか。実はこの「ホーム」こそが、スマート家電を一括コントロールするために生まれたアプリなのだ。ただし、条件がある。そのスマート家電がApple社が提供している「HomeKit」というプログラムに対応していることだ。
現在は、照明やドアの開閉錠、暖房機、防犯カメラなど、対応している製品はまだ少ないが、Apple社によれば今後、世界中で50を超える家電ブランドが「HomeKit」対応品を発売予定だという。この「HomeKit」対応品をiPhoneの「ホーム」に登録しておけば、Siriからコントロールができるようになる。つまり、外出先からiPhoneに向かって「暖房入れておいて。それから窓のブラインドも閉めておいてね」なんて話すだけで、自宅ではヒーターがONになり、電動ブラインドがスルスルと降りてくるというわけだ。まさにスマートホームだ。
こちらは、ITメディアの「CNET」が制作した動画で、iPhoneの「ホーム」を実際に使ってブラインドを開け閉めしたり、明かりをつけたりを紹介している。
この「HomeKit」と同様のシステムは、Google(Google Home)やAmazonからも発表され、機能がどんどん追加されていく見込みだ。となると、ますますスマホは生活の中心を占めるようになり、重要度を増すことになる。今は電車内でスマホを操作している人の大半は、おそらくLINEやゲームをしたりしているかだろうが、そのうち、洗濯したり、冷蔵庫の中の卵の数をチェックしたり、ご飯を炊いたり、掃除をしたり、泥棒を見つけたりといった人が増えてくるのだろう。
文:太田 穣