2016/11/14

HDDデータにアクセスする速度は実はあまり変わってない問題を、『オールフラッシュストレージ』が解決する

データ容量は増えたけど、アクセス速度は下がってしまった

今回紹介する「オールフラッシュストレージ」は、主にデータを蓄積するサーバーの話題だ。今後、世界中のサーバーで使われる記憶媒体は、HDD(ハードディスクドライブ)からSSD(ソリッドステートドライブ)に切り替わっていく。「SSD? なにそれ?」という方はコチラをどうぞ。

さて、インテル創設者のひとりであるゴードン・ムーア博士は「半導体の集積密度は18〜24カ月で倍増する」と語った。いわゆるムーアの法則だ。ハードディスクの容量はどんどん増えていき、今では3TBの外付けHDDが10,000円で買えてしまう時代。テレビ番組の録画保存で容量をケチる必要はなくなったわけだ。

一方で大きな問題がある。データの記憶容量はどんどん増え、CPUもガンガン速くなったけれど、HDDデータにアクセスする速度は、実は10年前とほとんど変わっていない(下の図を参照)。HDDのデータへの読み書き速度を上げるには、ディスクの回転速度を上げればよいのだけど、現状15,000rpm(1分間に15,000回転)が物理的な限界。これ以上スピードアップできないのだ。

2000年を1として、過去10年間のCPUとHDDの性能変化のグラフ。CPUは29倍も性能が向上している一方で、HDDは容量が増えたものの、I/O性能は横ばいなので、相対的に読み書き速度は大幅に低下してしまった

膨大なデータを超高速でさばくオールフラッシュストレージ

私たちの社会は、これからも膨大なデジタルデータを生成し続ける。2012年にIT専門調査会社のIDCが試算したところ、世界中で生成・複製されるデータは、2012年は2.8ZB(ゼタバイト)だったが、2020年には40ZBになるという。ちょっと前の試算だから、今ではもっと増えているかもしれない。

時間がないから立ち食いそば屋さんに入ったのに、30分も待たされたら意味がないのと同じように、有用なデータにアクセスできなければ社会が立ち止まってしまう。そばが食べられないならお腹が空くだけだけれど、アクセスしたいデータが救急患者のカルテなら、人の命に関わる問題となる。「なかなかつながらないなー」とかボヤいている場合ではないのだ。

そこで登場するのが、「オールフラッシュストレージ」。膨大なデータへ瞬時にアクセスし、記憶容量もバッチこい! のSSDを使う。HDDとどれくらいスピードが違うのかというと、SSDの方が平均して1,000倍以上も高速なのだ!! レベル違い過ぎ!

スピードアップは鯖落ちを減らし、省エネにも貢献する

サーバーがオールフラッシュストレージ化することで、鯖落ち=サーバーダウンの危険性はグンと下がる。データへアクセスするために長い行列ができるのは、ユーザーアクセスが集中すること以外に、サーバーの活用方法が大きく変わったことにも原因がある。それはサーバーの仮想化だ。ひとつの物理サーバー上で複数の仮想サーバーを運用できる(1台のマシンに複数のサーバーの機能をもたせること)ので、企業としてはコストが削減できるだけでなく、メンテナンスの手間もずいぶん省けるようになった。

たとえば、1つの物理サーバーに4つの仮想サーバーが入っていたとする。4つとも別々の仕事をしているが、同じサーバーに入っているため、データを読みに行く先は同じストレージになる。ストレージがHDDなら、容量はたっぷりだが、読み書き速度が遅いためにアクセスがさばけない。すると大量のアクセスが順番待ちになる。で、システムの限界を超えて"鯖落ち"、という事態に陥る。ところが、オールフラッシュストレージになれば、こうした事態はかなり回避される。しかもSSDは稼働部品がなく発熱が少ないのでエネルギー効率が良いときている。

冒頭に書いたムーアの法則どおり、SSDの容量は順調に拡大し、それにともなって価格もずいぶんと低くなってきた。私たちのデジタルライフを支え続けてきたHDDは勇退し、いよいよSSDが台頭する時代がやってくる。

文:吉田 努