2016/10/06
逆に、個人のPCを会社に持ち込んで仕事に使う『BYOD』がトレンドに ……大丈夫?
「自分の端末を持ってこい」
「BYOD」と書いてなんと読む? 答えは「ビーワイオーディー」です。そのまんまじゃん、と怒るなかれ。先日、「ビョド」と読んでいた人がいました。注意されたし。
さて、「BYOD」とは「Bring Your Own Device」の頭文字をつなげたもの。訳せば「自分の端末を持ってこい」となる。この「端末」とは仕事で使うノートパソコンやタブレット、スマホのことだ。つまり、「自分のスマホなんかを仕事で使ってもいいよ」、もしくは「使ってほしい」という企業の方針を「BYOD」というのだ。
以前、このコーナーの「シャドーIT」の記事でも書いたように、私物のパソコンやスマホを仕事に用いると、セキュリティの問題が発生する。もしも紛失したり、盗まれたり、ウイルスに感染したりしたら、企業にとって大事な情報が危険にさらされてしまうからだ。悪意ある人間に顧客情報や機密情報にアクセスされたら一大事だ。
※あなたは大丈夫? リスクだらけの「シャドーIT」とは
慎重だった日本企業もBYOD容認へ
それなのに、海外の企業を中心に、どんどんBYODを認める企業が増えているのだという。2012年の調査とちょっと古いが、野村総合研究所のリポートによれば、BYODを認めている、ないしは認める予定だという企業の割合は、アメリカで61%、中国で86%なのに対し、日本は19%と、大きなへだたりがあった。
それが、翌2013年のガートナージャパン株式会社の調査では、BYODを禁止している日本企業が3割なのに対して、BYODを許可する日本企業は4割と、BYOD容認派がずいぶんと増加したのだ。この傾向は今も続いているといわれる。
用心深かった日本企業がなぜ? おそらく、そのデメリットよりメリットのほうに注目したからかもしれない。まず、自分のノートパソコンやスマホなら、機器やOSが自分好みのものになっているから使いやすいし、私用と仕事用と別々の端末を持ち歩く必要がなく、1台ですべてがこなせるので便利だ。それに会社でも自宅でも同じ機器を使って仕事ができるし、通勤電車の中で仕事のメールチェックなどもこなせる。そんな優れたモビリティーに大きなメリットを感じているのだ。
BYOD向けのシステムやアプリも登場
また企業側にとって、社員一人ひとりのために専用の機器を購入する必要がないという、経済的なメリットもある。さらに、広がり続けるBYODに目をつけたIT企業やセキュリティ企業が、BYODを効率的、かつ安全に利用できるように、さまざまなアプリケーションやシステムを開発、販売を始めている。それが、BYOD導入をためらう企業の背中を押した面もある。
たとえば、スマホの紛失や盗難にあったときに、多くの機種では遠隔からデータを消去できるが、その場合、企業の情報と一緒にプライベートなデータも失われてしまう。あるいは、プライベートなメールと仕事のメールが混在することで、コミュニケーションに事故が起きることもあるだろう。ビジネスとプライベートをきちんと分離できることがセキュリティや仕事の効率において大事なのだ。
そのために、BYOD向けのサービスやアプリには、プライベートとビジネスをスマホやパソコン、タブレット内できちんと分離し、両者が混じり合わないようにする仕組みのものが多い。会社とのやり取りは必ず自動的に暗号化され、緊急時のデータの遠隔消去もビジネスのデータだけに行われ、プライベートのデータは消えない。また、仕事用のアプリも専用のものがインストールされ、仕事のメールとプライベートのメールはきちんと区別されるのだ。
BYODからCOPE、CYODへ!?
とはいえ、やはりセキュリティの問題は完全にはなくならない。アメリカのITセキュリティ企業のテナブル社が世界のセキュリティ専門家800人に対して行った2016年の調査によれば、BYODを導入している企業などの組織の21%でモバイル端末のセキュリティが破られたという。
セキュリティをより高めようということから、最近ではBYODではなく、「COPE(シーオーピーイー)」や「CYOD(シーワイオーデー)」にすべきだという専門家もいる。「COPE」は「Corporate Owned, Personally Enabled(会社の持ち物だけど個人も使用可能)」の頭文字をつなげたもの。セキュリティのために会社が準備した端末を従業員に支給して使ってもらい、私用も認めるというもの。
「CYOD」は「Choose Your Own Device(自分の端末を自分で選ぶ)」で、つまり、会社が選んだ管理しやすい何種類かの端末から従業員が好きなものを選ぶという方式。もちろん、私用でも使える。
とまあ、BYODのいろんな亜種が登場し、私たちの仕事スタイルも変わっていくのは間違いないが、呼び方が果てしなくDAI語化していくのはなんとかしてほしいものだ。うぃっしゅ!!
文:太田穣