2016/09/16

iPhone 7でふたたび注目を浴びる『FeliCa(フェリカ)』とは?

iPhone 7の登場で、いよいよiPhoneも「おサイフケータイ®」のように使える日がやって来た。そこで話題になっているのが「FeliCa(フェリカ)」だ。聞いたことはあるけど、うまく説明できない方も多いのではないだろうか。「FeliCa」とはなにかをわかりやすくまとめてみよう。

あなたはすでにFeliCaを使っている

すでにあなたはそのFeliCaのテクノロジーの恩恵にあずかっているかもしれない。

あなたはSuicaをお使いだろうか? あるいはnanacoやWAON、楽天Edyなどはどうだろう? 多くの人はこれら交通系ICカードや、電子マネーを利用しているはずだ。

実は、これらはすべてFeliCaを搭載している。FaliCaとは、「ICカードと瞬時に情報をやりとりする無線通信システム」のことなのだ。そのFeliCaのテクノロジーが今回、iPhone 7に組み込まれたという。

FeliCa対応の電子マネーとは?

では、FeliCaの通信技術システムが搭載されている電子マネーには、どんな種類があるのだろうか?

【FeliCa対応の主な電子マネー】※2016年9月現在
  • ・Suica、PASMO、ICOCAなどの交通系ICカード
  • ・楽天Edy、nanaco、WAONなどのプリペイド型電子マネー
  • ・QUICPay(クイックペイ)、iDなどの後払い方式の電子マネー

そのほかにも、空港での搭乗手続きや自動販売機、さらには会員証やポイントカードまで、さまざまな場所でFeliCa対応のICカードを利用することができる。

iPhone 7では、Suica以外の交通系ICカードやプリペイド型の電子マネーなど、まだ対応していないものもあるが、今後、どんどんアップデートしてくれることを期待しよう。

電車に乗るのも、コンビニでおにぎりを買うのも、スーパーで野菜とチーズを買うのも、愛車にガソリンを入れるのも、ドラッグストアでかぜ薬を買うのも、FeliCa対応端末ひとつあればとても便利。いずれ外出するときに財布やクレジットカードは不要になる時がくるだろう。

(写真提供・ソニー株式会社)

FeliCaって一体、どんな仕組み?

では、FeliCaとは一体、どんな仕組みになっているのだろうか?

たとえばSuicaなどの交通系ICカードの中にはアンテナと超小型のICチップが入っている。一方、リーダー/ライターと呼ばれる、ICカードを読み取る側の自動改札機にはコントロールボードという電子回路基板とアンテナが入っている。そして、「かざすICカード」と、「かざされるリーダー/ライター」との間で、無線通信が行われるのだ。

ICカードとリーダー/ライターの仕組み。(図版提供・ソニー株式会社)

ICカードには電源が入っていない。電気がないのにどうやって通信するのかというと、電源につながっているリーダー/ライターからたえず出ている電磁波に秘密がある。リーダー/ライターにICカードがかざされると、つまり至近距離をICカードが通過すると、放射されている電磁波がICカード内に電気を発生させる。そしてICカードは一瞬だけ、生命力を取り戻し、通信をするのだ。

わずか0.1秒のピッで通信完了

FeliCaのすごいところは、ICカード内のデータ(あなたの名前や使用履歴など)を読み取り、そしてICカードに再び書き込むのに必要な時間がわずか0.1秒だということ。瞬時にピッとデータ交換がおこなわれ、しかも情報が盗まれたり間違われたりしないように、いちいち暗号化もされるという超高速の仕事っぷり。そして、読み取られたあなたの情報はリーダー/ライターが接続しているネットワークを通じて、遠くにあるデータベースとやりとりされる。

FeliCaでは、約0.1秒という超高速で、上の図の①〜③までが行われる。(図版提供・ソニー株式会社)

これで、FeliCaの仕組みはなんとなくわかっていただけただろうか。おサイフケータイ®は、このFeliCaのICカードの中に入っているICチップを、携帯端末の中に組み込んだものだ。だから、Suicaのように、自動改札機の上に携帯端末をかざすだけで電車に乗れるのである。

FeliCaの意味は「至福をもたらすカード」

FeliCaの誕生は古く、最初に採用されたのが香港の交通系ICカードの八達通(オクトパスとも呼ぶ)で、1997年のことだ。Suicaの登場はその4年後の2001年。その後は日本とアジアを中心に、FeliCa方式のICカードは爆発的な勢いで普及していった。ちなみにFeliCaの名前の由来だが、「至福や歓喜」を意味する「Felicity=フェリシティ」と「Card=カード」を合わせたものだという。「至福をもたらすカード」というわけだ。

世界初のFeliCa式ICカードである香港の「八達通(オクトパス)」。申年の2016年向け限定カードだ

FeliCaのように、10cmほどの短い距離間で無線通信しあうテクノロジーをNFC(近距離無線通信技術)と呼ぶのだが、ヨーロッパやアメリカではFeliCaとは別のMifare(マイフェア)という方式が主流だ。これまでのiPhoneのApplePay機能もこのMifareのみの対応だった。だが、このFeliCaのテクノロジーが、iPhone 7の内部に組み込まれたいま、FeliCa方式が普及している日本でもApplePayがとても便利に使えるようになった。まさに「フェリシティ(至福)」の到来だ。

文:太田 穣