2016/09/13

チェックしとけば、明日のスターがいち早くわかる! 『音楽系SNS』

海外系は楽曲のレベル高し

音楽系SNSが花盛りだ。文字どおり、音楽好きが集まるSNSだが、その中身は千差万別。老舗の「My Space」がアメリカでサービスを始めたのは、ネットの世界でははるか昔といってもよい2003年。追ってドイツ生まれの「SoundCloud」が一般ユーザー向けにサービスを本格化されたのが2010年ごろ。

どちらも、プロやプロを目指すアマチュアが投稿した楽曲を聴いて、気に入ったら「Like」をクリックしたり、会員同士でワイワイオシャベリするというのが基本スタイル。特に、スターたちもたくさん登録メンバーになっている「My Space」はメジャー感たっぷりで、会員間のメールやブログを介した交流の活発さが際立つ。

メジャー感たっぷりの老舗「MySpace」。言語が英語だけなのが惜しい

一方の「SoundCloud」は、オシャベリよりも聴くほうがメインだ。音楽が大好きで、いつも新しい誰か、新しいなにかを探している人には最高のハンティング・フィールドだ。自分の好みのアーティストを発見し、友達に教えて共有したり、「コレクション」フォルダーに入れてお気に入りアーティストを文字どおりコレクションしたり。もともと、プロのミュージシャンたちの音楽データの共有システムとしてスタートしただけに、投稿されている楽曲はすべてレベル高し。

「SoundCloud」は楽曲のレベルも高くて音楽好きにはたまらないSNS。上は世界的アーティスト、ビョークのDJセットのページ。スーパースターのDJが聴けるのは、「SoundCloud」ならではだ

日本系はほのぼの素人系

この先行する「My Space」や「SoundCloud」をお手本に、日本で音楽系SNSが続々と誕生し始めたのは、ここ数年のことだ。日本系の特徴は、いい意味での素人っぽさ、つまりアマチュアリズムだ。

たとえば、「OKMusic」は、メジャーな楽曲の試聴もできるので、それらを聴きながらコメントを書いて、みんなでリアルタイムに盛り上がる。こういうところは「My Space」などと同じだ。

もちろん、アーティスト登録をすると誰でも楽曲を投稿できるのだが、海外系と違うのは、投稿主がプロを目指しているアーティストというよりも、「息子と2人でデュエットしました」とか「ジブリが好きなのでピアノで演奏してみました」といった、「歌う(演奏する)のが好きだから聞いてほしい」的な、一般人が多いところだ。

そういう「素人のど自慢」的な日本の音楽系SNSのなかで、最近、特に中高生を中心とした若い世代に絶大な人気を誇るのが「nana」だ。ほかの音楽系SNSと違うのは、コラボレーションという機能。

これは、誰かがカラオケを作って投稿したら、そのカラオケに乗せてほかの誰かが歌って投稿できるというもの。投稿の敷居が思いっきり低いのだ。

「nana」はアプリをインストールして利用する。ホーム画面には最新の投稿曲が、「見つける」のページでは、自分がコラボして歌うための「伴奏リスト」が表示される
こちらの画面は、コラボの投稿画面。廣野ノブユキさんの「ジェリー」という曲をYui×サッティー☆さんが歌っている

100万回再生がきっかけでCDデビューも

もう少しわかりやすく説明しよう。たとえば、あなたが作詞作曲した曲があり、それを「nana」に投稿したとする。同時に、伴奏だけのもの、つまりカラオケも投稿する。それを聴いた見も知らぬ誰かさんがあなたの曲を気に入り、あなたの投稿したカラオケに乗せてあなたの曲を歌い、またそれを投稿する。

スゴイのは、この歌の録音が「nana」のアプリをインストールしたスマホだけでできてしまうこと。しかも、このアプリでエコーなんかもかけられちゃう。特別な機材は不要なのだ。

いろんな人が自作曲を歌ってくれるのは素敵なことだし、それがもとでプロデビューができたりなんてことがあるかもしれない。実際、「nana」で100万回以上再生されたのがきっかけで、プロデビューした人がいる。

廣野ノブユキさんというアーティストで、金融機関で働きながら週末はストリートミュージシャンとして活動していた方。「nana」に自作の楽曲を投稿したところ、再生&コラボレーションが殺到で大人気となったという次第。まるで「素人のど自慢」でグランプリを取って歌手デビューするというシンデレラストーリーのインターネット版だ。音楽系SNS出身の大スターが現れる日もそう遠くはなさそうだ。

「nana」での人気からメジャーデビューを果たした廣野ノブユキさんの公式サイト

文:太田 穣