2016/07/26

SiriとGoogle Nowの強敵現る! 『Viv』とは

開発者はSiriの生みの親だった

2016年5月、画期的なパーソナルアシスタントサービスが発表された。その名は「Viv(ヴィヴ)」。ラテン語でLiveの意味だそうで、既存のApple「Siri」や「Google Now」の強力なライバルになりそうだとの噂がしきりだ。いったいなにが違うのか? その前に、Vivが生まれた背景をひもといてみよう。

Vivの開発者のひとりであるダグ・キトラウスさんは、実はAppleのiOSに搭載されているSiriの生みの親であり、Siri社のCEOだった人。Siriは2010年にサードパーティアプリとして公開されたのち、Siri社自体がAppleに買収される。そして、このアプリとしてのSiriは、翌2011年登場のiPhone 4Sから搭載され、いまやiPhoneユーザにとってはなくてはならないおなじみの機能となっている。

一方、生みの親であるキトラウスさんは、やがてAppleを離れると、2014年から、いわばもうひとつのSiriとでもいうべきVivの開発を本格化させた。そして2年の歳月を費やし、ついに満を持しての発表となったというわけだ。

検索だけでなく、決済まで対応する賢さ

今あるパーソナルアシスタントサービスとVivが大きく異なる点は、「Viv自身がリアルタイムでプログラムをつくっていくことだ」とキトラウス氏は言う。なんのこっちゃ!? どうも、学習機能を持つ人工知能(AI)の最新技術を用いたアプリだということらしい。

キトラウスさんがおこなったデモンストレーションでは、「明後日の夕方5時、ゴールデンゲートブリッジは華氏70度よりも暖かい?」と質問すると、Vivは「いいえ、70度より暖かくはありません」と答えるだけでなく、親切に天気予報も表示してくれた。

そんなふうに、Vivは自然言語のケタ外れな解析能力を持っている。文章の要素を抜き出し、内容を理解し、その先に求められるであろう行動を予測するのだ。ピザを注文したいと話せば、「トッピングはなににしますか?」というところまでVivは面倒見てくれるというわけだ。

実際、デモンストレーションでは、キトラウスさんとVivのあいだでこんなやりとりがなされた。

キトラウスさん「ママに誕生日プレゼントの花を送って欲しいんだけど」
Viv「どれになさいますか?」(買い物アプリと連動して、花束の見本をいくつかスマホのディスプレイに表示)
キトラウスさん「チューリップがいいかな」
Viv「チューリップはこちらです」(チューリップの花束をいくつか表示)
キトラウスさん「きれいな花束がいいな」
Viv「購入しますか?」(ひとつの花束を推薦)
キトラウスさん「うん、それがいいね」
Viv「手続き完了。花束は配達中です」(画面に決済情報が表示される)

――という具合に、Vivと会話するだけで花束を選んで配達するまでが、まるで花屋のお姉さんと面と向かって話しているような感じでできてしまうのだ。

これが2016年5月におこなわれたデモンストレーションの様子。花束を買うシーンは、9:34あたりから始まる

Vivはオープンであることがコンセプトだから、ほかのアプリとの連動が可能だ。だから、この花束の買い物のように、質問に答えるだけでなく、その先までフォローしてくれる。デモンストレーションではホテルの予約やUberの配車もVivがやってくれ、会場の喝采を浴びていた。これぞ、まさしくパーソナルアシスタントサービスだ。

全世界が注目! ザッカーバーグ氏も出資済み

Vivは、すでに45社以上の企業とパートナーシップを結んでおり、巨大なエコシステムとしての成長が見込まれている。そんなポテンシャルを見込んでか、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏がすでに出資をしているし、Googleが買収をオファーしたなんて噂も飛ぶほど、世界から注目を集めている。リリースは2016年内を予定しており、その実力を試せる日は近い。

ちなみに、Vivの声色はデモンストレーションでは明らかにされていない。男声なのか、女声なのか、たけだけしいのか、艶めかしいのか......。世界中の合成音声好きが妄想を膨らましているに違いないだろう。

上はキトラウスさんが、「Vivのアイコンは、Wi−FiやBluetoothと同じくらい、おなじみのものになるに違いない」と言って、デモンストレーションなどで用いる図だ

文:吉田 努