2016/06/29
災害時に知っておきたい無料の公衆無線LAN、『00000JAPAN』とは?
いざというときの合い言葉
地震や台風など自然災害の多い国、日本。そこに暮らす私たちがいざというときのために覚えておくべき合い言葉の一つ、それが「00000JAPAN」だ。
ゼロが5つ並ぶことから「ファイブゼロジャパン」と読む。実はこれ、2011年の東日本大震災での教訓から、auをはじめとする通信会社など多くの企業・団体と地方自治体が共同で立ち上げた、大規模災害時にだけ使える無料公衆無線LANのことであり、そのSSID、つまり接続先の名前なのだ。
「ん? 公衆無線LAN? 大規模災害時だけ?」と、たてつづけに浮かんだにちがいない疑問符に、まずは順に答えていこう。
公衆無線LANとは?
今やWi−Fiと呼ぶほうが一般的だが、無線LANとは、スマホやパソコンを無線でルーター(アクセスポイント)とつなぎ、インターネットに接続する仕組みのこと。家庭内無線LANにしているお宅も最近は増えているが、この場合はSSIDとパスワードを知っている家族しか利用できない。会社の無線LANも同様、社員しか使えない。
一方で公衆無線LANとは、「公衆」という名の通り、誰でも利用できるWi−Fiのこと。たとえば、auが提供している公衆無線LAN「au Wi−Fi SPOT」は、auの利用者だけが使うことができる基本無料のサービスだ。また、カフェやコンビニなどがお客へのサービスとして無料提供しているものもある。最近では無料公衆無線LANがついている自動販売機までが登場している。
災害時のネットインフラ
では、次に、大規模災害とどう関係があるのかだ。災害時、多くの被災者が携帯電話を使った安否確認や救助要請をすることができない状況に置かれる。同様に、救助隊やボランティアの人たちもまた、携帯電話を使ってのコミュニケーションが取りづらくなる。
そこで目をつけたのが無線LANだ。いまや日本全国に100万カ所以上ある公衆無線LANのアクセスポイントを利用すれば、携帯電話が通じない大規模災害時でもインターネット経由でコミュニケーションができるではないか! しかも、キャリアの垣根を越え、無料で被災地のだれもが使えるようにしたらどうだろう!! そうやって誕生したのが、この「00000JAPAN」なのだ。
普段、通信会社A社の利用者は、他社の公衆無線LANを使用できないが、この「00000JAPAN」では、すべてのアクセスポイントが誰でも無料で使えるようになる。A社の利用者も他社の公衆無線LANにアクセスできるのだ。「00000JAPAN」は、地震や台風、洪水などの大規模災害が発生してから72時間以内に開放される。72時間というのは、災害時で生存者を救出する際の「72時間の壁」を超えることなく、通信手段を確保するためだ。
なぜ「0」が5つも並ぶ名称なのか?
では、どうやって「00000JAPAN」に接続するのか。まず、スマホやパソコンの設定でWi−FiをONにし、次のネットワーク選択の画面で「00000JAPAN」のSSIDを選択するだけだ。このとき、「00000JAPAN」はSSIDのリストの先頭にあるはずだ。なぜなら、そのためにゼロを5つも並べたのだから!!
この「00000JAPAN」は、熊本地震では実際に稼動、各社の公衆無線LANが被災地の方々に無料開放された。既存のアクセスポイントだけでなく、各地の避難所にも臨時のアクセスポイントを設置、避難している方々がスマホで情報収集ができたり、LINEやFacebookを使って友人や親戚と無事を確認しあったりなど、大活躍をしたのだ。
さて2016年夏、KDDIグループは、公衆無線LAN「富士山 Wi-Fi」を、史上初となる富士山の山小屋全49カ所でスタートさせる。日本人だけでなく、外国人間顧客も含めた、すべての富士山登山者が利用できる画期的なサービスだ。そして、もちろん、この「富士山 Wi-Fi」もまた、いざというときには「00000JAPAN」のアクセスポイントとして大事な役割を果たすのだ。
−もっと知りたい!−
文:太田 穣