2016/05/25

大切な郵便物がPCで一括管理できるようになる『電子私書箱』とは

私書箱なのに「電子」ってどういうこと?

私書箱とは、自分宛ての郵便物を郵便局が保管してくれる専用ボックスのことだ。郵便局で登録すれば、専用キーを使って24時間、いつでも自分の私書箱から郵便物を取り出せる。利用者の多くは放送局や通販会社といったリアルな郵便物が大量に届く企業だが、もちろん、個人でも使用可能だ。郵便局だけでなく、似たようなサービスを行っている民間企業もある。

現実の私書箱はこんな感じ。郵便局の私書箱は一定の条件を満たしていれば誰でも無料で利用できる

では、この私書箱に「電子」がついた「電子私書箱」とはいったいなに? 簡単に言えば、企業や官公庁から送られてくる重要な電子データを手軽に、かつ安全に保管してくれるWebサービスのことだ。2016年1月から、日本郵便が試験的に開始した「MyPost」がその電子私書箱の第1号だ。この「MyPost」は現在、電力会社、家電量販店、証券会社などの協力のもと、福島県会津若松市で試行サービスが行われている。

日本郵便では「MyPost」のことを、"大切なメッセージをインターネット上でやり取りするために日本郵便が提供する「インターネット上の郵便受け」です"と説明している。つまり、今まで自宅の郵便受けに届いていた、官公庁から届く大切な通知や企業が株主に送る書類といった大切なリアル郵便物を「MyPost」で受け取るようにすれば、パソコンでいつでも閲覧できるので、管理する煩わしさから解放されるというわけだ。しかも、無料。一方、企業や官公庁にとっては膨大な書類の印刷代や郵送料を大幅に削減できる。

上の図は、日本郵便が提供する「MyPost」のサービスの流れ。「MyPost」ではデジタル書類のことをレターと呼ぶ。会員登録の後、企業や官公庁へ、これから書類は「MyPost」宛てに送ってくれるように申し込む。レターを読むには自分の「MyPost」にアクセスすればいい

電子私書箱と切っても切れないのがマイナンバー

実は、「MyPost」は、政府が準備を進めている「マイナポータル」の一環として設計されている。「マイナポータル」とは、マイナンバーを使ってアクセスする一種の電子政府サービスのことだ。

2017年稼働が予定されているこのサービスでは、たとえば引っ越しをする際の住所変更や税金の手続きといった、これまでは役所に足を運んで行う必要があった各種手続きを、オンラインでできるようになる。納税もキャッシュレスで可能だ。

なぜ、新たにこうしたサービスを始めようとしているのだろうか。まず、官公庁ごとに管理していた個人情報がマイナンバーで紐付けできれば、役場でも銀行でも本人認証がすぐに完了できるからだ。結果的に窓口の業務効率は上がるし、なにより私たち市民が各種のサービスをワンストップで簡単に利用できるようになるというわけだ。

一方、情報漏えいが心配! という声は今もって根強い。マイナンバーを取り扱う政府や官公庁、そして企業の皆さんにおいては、くれぐれも慎重にマイナンバーを取り扱って、私たち市民が「超便利!」と小躍りできるような、素晴らしいサービスを実現していただければ幸いだ。

文:吉田 努