2016/02/17

もうお金は持ち歩かなくてもいい? 注目キーワード『フィンテック』とは

2014年ごろからネットの検索語ランキングをものすごい勢いで上昇し、テレビや新聞でも盛んにとりあげられるようになった注目のキーワード――それが「フィンテック(FinTech)」だ。

金融を意味するファイナンス(Finance)と、テクノロジー(Technology)を組み合わせたアメリカで生まれた新しい言葉で、要するに「買いものの支払いや、銀行の送金、家計簿の管理まで、お金にまつわる様々なことをスマホなどのデバイスを利用してより早く、簡単にできるようになる新しいサービス」といっていいだろう。これらは近い未来、私たちの生活をガラリと一変してしまう可能性があるのだ。

金融とITといえば、日本でもお馴染みの「おサイフケータイ」や「ネットバンキング」がすぐに思い浮かぶ。これらもフィンテックの一種だ。アメリカでサービスが始まったiPhoneの「アップル・ペイ」や、Android端末の「アンドロイド・ペイ」は、スマホがクレジットカードとして使えるようになるサービスで、こちらもフィンテック。

ただし、いまアメリカやヨーロッパ、そして日本に押し寄せているフィンテックの大波は、それらのさらなる進化型だ。では、一体どんなサービスがあるのか? 注目しておきたいフィンテックなサービスを具体的に紹介していこう。

送金は電話番号のみでOK!

まずは送金だ。ATMかネットバンキングを使うのが一般的だが、もっとお手軽に、もっと便利になるフィンテックなサービスが日本でも続々登場している。

たとえば、楽天銀行のアプリを使えば、Facebookの友だちなら相手の銀行口座を知らなくても送金ができる(ただし受け取り側の手続きが必要)。「LINE Pay」なら「LINE」の友だちに簡単に送金ができる。

しかも「LINE Pay」にコンビニや銀行からチャージすることで、スマホを電子マネーのように使うこともできる。こういった送金方法は、アメリカなどでもいろいろなサービスが生まれて激しい競争を繰り広げているアツい分野だ。

KDDIと三菱UFJフィナンシャル・グループが設立した「じぶん銀行」では、24時間365日、口座開設から振り込みまで、すべての取り引きをスマホのアプリだけで完了することができる。こちらも相手の電話番号さえ知っていれば、スマホのアドレス帳から振込先を選んで、簡単に送金することができる

また、ログイン時に「お客様番号」などを入力する必要がなく、一方で各種セキュリティ機能が充実しているので、安心&お手軽にスマホの中にある「じぶんだけの銀行」を利用できるというわけだ。

アメリカでも同じような個人向けの銀行がどんどん登場している。日本よりも規制が緩やかなせいか、ATM手数料は原則無料だったり、スマホのアプリと口座が連携して自動的に家計簿やバランスシートを作成してくれたり、「家賃の支払い日が明日だよ」なんて教えてくれたりと、いったいろいろなサービスを売りにして、こちらも熾烈な競争が始まっている。

複数のカードが1枚になるサービスも

アメリカの「Plastic」社の開発した、複数のクレジットカードやキャッシュカードを1枚にまとめることのできる超便利なカード。カードの下半分が電子ペーパーになっていて、スワイプすることで使用するカードが切り替わるのだ

カードのフィンテック化も止まらない。アメリカの「Plastc」というカードは、表面が電子ペーパーになっていて、指でスワイプすると使用したいカードが次々と切り替わり、そのまま使用することができる。財布をダブつかせる各種クレジットカードや銀行のキャッシュカード、会社のIDカードなどが、たった1枚の「Plastc」でこと足りてしまうのだ。

フィンテックの必須アイテムはスマホなのです

こちらは、日本のコイニーが開発した、スマホやタブレットとBluetoothを介して接続して使う、超小型のクレジットカード決済端末だ

ほかにも、クレジットカードや銀行口座のお金の動きを自動的に管理でき、レシートをスマホで撮影するだけで自動的に家計簿に記入してくれるロボット家計簿や、スマホやタブレットにBluetoothで接続するだけの超小型クレジットカード読み取り機を使った決済サービスも登場している。

もっとも、ビジネス的にいちばん注目を集めているのは、投資や融資といった企業を相手にした「ソーシャルレンディング」。人工知能を使ったさまざまなサービスで、たとえばアメリカでは融資を受けたい人と投資をしたい人をマッチングする"お見合い的なWEBサービス"などがスタートしている。

いずれにしても、お金にまつわるサービスは、ここ数年で日本でもガラリと変わりそうだ。もしかしたら将来的には、「現金」が必要ない世界になるかもしれない。そのときに必須なアイテムとは、やっぱり、スマホといえそうだ。 ※じぶん銀行間の振込の場合

文:太田 穣