2016/01/08
ソフトもハードもこれをしなくちゃ始まらない 『アクティベーション』について
それは「開封の儀」に続いて行うこと
PCやスマートフォン、ソフトウエアがリリースされると、SNS界隈で賑わうのが「開封の儀」。同じものを買った人は「同志よ!」と連帯感を抱き、購入検討中の人や購入予定の人は箱を開けるときの高揚感をシェアして購買モチベーションを高める。箱を開けるときのドキドキ、嫌いじゃないでしょう?
しかし、やっと手に入れたそのガジェットも、ちゃんとした手順を踏まえなければ自分のものとして使うことはできない。メーカーに「私、ちゃんとお金出して買いましたから!」と伝えて、「ああ、そうですか。それはどうもありがとうございます」と返答をもらい、利用できる状態にする手続きが必要になる。これがアクティベーションだ。
正規ライセンスを持っていることをメーカーに証明する「ライセンス認証(License authentication)」の意味合いで使われるアクティベーションという言葉。我々にはProduct activationのニュアンスが強い。しかし、どうしてひと手間をかけることになってしまったのか? 省けるものなら省いてほしいのに......。
響きはカッコイイけど面倒このうえない存在
アクティベーションという言葉を一般的に耳にするようになったのは、Windows95が登場した1995年前後といわれている。PCとインターネット普及に伴って、多くの人が使い慣れないこの言葉に戸惑いつつも、ITっぽさ全開のこのカタカナ言葉をここぞとばかりに口にしたものです。(......確かにアクティベーションって、ちょっとカッコいい)
Windows95がプレインストールされたPCでも、各種ソフトをインストールした際には、起動時にディスクケースに印字されたシリアル番号の入力を求められた。ソフトをコピーするのは多少知識があれば誰でもできるため、インストールだけで起動されてしまってはメーカー側は大損害。「シリアル番号入力」というハードルを用意して、コピー氾濫を防ごうとした。ほかにも、ソフトとシリアル番号だけでなく、ドングルと呼ばれる機器をPCとマウスの間につなぐことで、認証をさらに厳しくするソフトもあった。
インターネット常時接続時代に入ってからは、PCがオンライン状態でなければアクティベーションできない場合がほとんどになった。メーカー側のサーバとデータをやり取りし、より精密に認証作業を行うわけだ。MicrosoftのOffice365やAdobe Creative Cloudなどは、ひとつのシリアル番号でインストールできるPC台数を制限しているため、制限台数を超えるPCへのインストールを検知した時点で、ソフトウエアを機能制限したり、シャットダウンしてしまう。
個人情報を守るためのアクティベーション
と、ここまではソフトウエアやアプリケーションの視点でまとめてきたが、ここからはハードウエア。主にPCやタブレット端末、スマートフォンに話題を切り替えよう。
iPhone/Androidのスマートフォンには、端末を紛失した際にデータへのアクセスを制限する機能がある。iPhoneならiCloudにある「iPhoneを探す」画面で「紛失モード」を起動。データ消去など必要な操作が遠隔で可能になる。Androidなら「Androidデバイスマネージャー」。設定画面にある「セキュリティ」で「リモートでこの端末を探す」「リモートでのロックとデータ消去を許可する」をONにしておくと、Webサイト経由で端末を操作できるようになる。
こうした機能を総称して「アクティベーションロック」といって、持ち主を認証できない限りハードウエアへのアクセスを制限する。紛失したスマートフォンを悪用されて国際電話に発信されたり、おサイフケータイを限度額まで使われたり、といったことはロックを掛けていれば回避できる。また、盗難された端末にアクティベーションロックが掛かっていれば、端末情報を消去できないので売却することもできない。
世の中に不届き者がいるがために、機能強化を図ることになったアクティベーション。もしも、世の中に不正を働く人がいなくなれば、面倒なこの機能がなくなる!? のかもしれないんだけど......。
文:吉田 努